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君と僕の心世界  作者: エンゼルケーキ
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終わりの日

最初に謝罪しておきます。やっつけ仕事で本当にごめんなさい。終わらせる為だけに適当に書き出したのがばればれです。読んで貰うのも恥ずかしいレベルと言っても過言では無いのでご了承ください!

 腹部に鋭い痛みと共に熱が集中している様だ。身体が重い、意識も途切れそうになる。

 すぐ側では光が明滅として衝撃と音が伝わってくる。皆が戦っているのだろうか……。


「しっかりするんだ、シフォンくん! 糞っ、どうして怪我が塞がらないんだ!」

「ああ、天使さま。どうか目を開けてくださいませ!」


 シェバトとフィーナさん……? そうか、僕の事を一生懸命に治療してくれてるんだ。ありがとう……。

 でも、僕が一番わかる。この貫かれた胴体はただの怪我じゃない。

 アダムが心を閉ざしている憎悪の一撃、心の力を受け付けない傷痕。


「あり…がとう、僕は……大丈夫だよ。身体が…軽く…なったよ」


 シフォンは血だらけの身体を起こして立ち上がった。


「何を馬鹿な事を言っているんだ、何も変わっちゃいない! 横になるんだ、治療続けるから!」

「そうです、そんな身体で動いたりしたら本当に死んでしまいます!」


 シェバトさんとフィーナさんが僕を止めようとしてくれてる。けど僕にはやる事があるんだ。

 アダムを止めなければ……。


「アダム!」


 シフォンは叫ぶ。全員がその叫びに静止する。

 叫びの声が震動として身体全体に伝わり胴体の節々を傷めつける。


「あれ、まだ死んで無かったんですか? 驚いたな、でも時間の問題だよね?」

「まだ……。やる事があるからね、死ねないんだ。さあ、こっちにおいでアダム。僕が抱きとめてあげるから」

「やめて、シフォン! 動いたら本当に死んじゃうよ!」

 

 その様子を見てエンゼルがすぐ傍に駆け寄ってくるが、その制止を振り切る。

 ――ごめん、エンゼル。もう僕は……。

 シフォンは身体をふら付かせながら、ゆっくりとアダムのいる方へと歩みを進めていく。

 

「これは傑作だ、まだそんな事を言えるなんて。まだ一緒に暮らそうなんて馬鹿な事を言うつもりかい?」

「ああ、もちろんだよ」


 迷いの無い純然たる真っ直ぐな瞳でアダムを見詰める。歩みを止めず、真っ直ぐとアダムの下へ。


「な、何を言ってるんだ、そんな事はもうできないんだ。無理だ、無理だああああ!」


 シフォンの意思の力強さに気圧され、困惑し狼狽えるアダム。

 アダムは再び手に槍を添えてシフォンを目掛けて貫こうとしたが、それを避けてシフォンは後一歩の距離まで接近した。

 そして――


「あ……」


 シフォンはアダムを抱き留めた、愛する我が子を抱く様に。

 そしてアダムに心から想像を流し込んだ。皆で暮らし過ごす日々のイメージを。


「暖かい……」


 不意にアダムの頬に涙の雫が零れ落ちる。気付いた、いや気づかされたのだろう、家族という温かみのある物を。

 閉ざしていた心を解き放ち、憎しみから開放され安らかな顔で涙を零す彼は今はただの子供であった。


「うん、暮らそう。パパとママとイヴと皆で……」

「それは駄目だよアダム。本来の目的を忘れた君なんて嫌いだなー」


 静寂の中で重々しくも無邪気な声が響き渡る。ずっと口を閉ざしていた少女の声。イヴだ。

 刹那、宙に光の剣が燦然と輝きながら数々と顕現される。

 そして――


「イヴやめるんだ、パパは僕達の事を本当に!――っ!」

「っ!」


 ――剣はシフォンとアダムを目掛けて飛翔しいくつも突き刺さった。

 二人は声なら無い声を上げて、その場で倒れ込む。


「嫌いでも好きだよアダム、ちゃんと君の心は私の物として吸収してあげるから安心してね! パパもね!」


 誰もがハッピーエンドを目の前に終わりを予期したと思ったが、それは無情にも崩されていく。

 一人の少女に因って……。


「はあ、少しは楽しめたと思ったけど。こんな結末は認めてないよ、私が天使にならないと! あはは」


 無邪気に笑う車椅子の少女、目的の為ならば何も感じず実行するのだろう。それを今見て取れたのだから。


「シ、シフォン……? 傷だらけじゃない、駄目だよ、早く治療しないと死んじゃうよ?」


 車椅子の少女。イヴを無視してエンゼルは抑えきれず震える身体に力を入れて声を掛けながら、どうにかシフォンの下へと歩み寄る。

 返事は無い。すぐ隣まで来たエンゼルはシフォンを抱き起こした。彼の顔はすでに生気を失い表情も何もない、命という物が存在していなかった。


「……」

「さてと、もう終わりにしようか私は別に復讐も戦いもどうでもいいの。君達が私の生贄となってくれればそれでね!」


 イヴは指をくるくると回しながら目を瞑った。するとエンゼルを除いた神徒全員が再び黒い十字架に囚われ始めた。


「があああ! またか、何度も同じ手を……」

「にゃあああ、ニャルはエンゼルを助けないと行けないのに! 私が傍にいいいい!」

「僕たちはどうして力が無いんだ。シフォンくん、僕が必ず怪我を治して見せる返事をしてくれ!」


 全員が抗い見せるが、それも適わなかった。


「っとと、そうだった。ママは特別だったよね? 私が直接、取り込んであげるから大人しくしてね!」

「――やる――やる――してやる――してやる」

「ん、どうしたのママ?」


――殺してやる――


 突如として聴こえて来た彼女の声は、まるで頭の中に流れ込むように怒気を含む憎悪に満ちた言葉の音のようだ。

 彼が絶え果てた瞬間にまるで何か別の者になったかのように彼女が言葉を紡ぎ述べ続けた。


「殺してやる殺してやる殺してやる殺し尽くしてやる。この世界も人間も全て殺して壊してあげる」


 何度も自分に言い聞かせるように、言い訳をするかのように、何かを誰かに聞かせるように、彼女は言葉を続けた。


「私のシフォンをこんな目に逢わせた世界なんていらない。私の君を傷つける存在なんて不要だ。」


 彼女の心の愛情は彼の死というものを引き金に哀情へと変わり、全てを憎悪と悲哀の心へと変わって行った。

 それと同時に天使と思わせた純白の翼は片方だけが全て黒く染まり彼の羽を象徴するかの様に変化し、瞳も同様に金色の両眼だったのが片方だけ彼と同じ碧い瞳へと変化した。


「シフォンと同じ黒い翼だ、綺麗。まるでシフォンの心が半分だけ私の中に入ってるみたい。」

「まさか、パパの心を食べたの!――っきゃあああああああああ」


 怒れる状態での翼による羽ばたきは周囲のモノを吹き飛ばす程の突風を巻き起こした。

 二つの天使の心を得たエンゼルは人間である肉体の器を昇華させ天使として覚醒した。


「私が天使になるの! ママがなっても意味が無いのおおお!」


 イヴはがむしゃらに数々の光の剣を顕現しては、エンゼルに向けて投げつけた。

 しかし、それらは全て不可視の壁によって弾かれ打ち消された。


「みーんな、殺しちゃうし壊しちゃうから焦らないでお嬢さん。」


 するとその場の全員が納まるような正方形の光の壁が周囲に現れた。

 

「何これ、何する気なのマ――っぁ!」


 イヴが事を言い終える前にそのまま内部にいた人間・・を全て潰し肉塊に変えて臓物を撒き散らさせた。

 神徒達全員を含めて……。


「ふぅ、とりあえず静かになったね、シフォン! ちょっと待っててね、もう少しゆっくりしたら全部片付けるから」


 彼女の心はすでにシフォン、彼という者しか存在していなかったのだろう。後は破壊と殺戮のみが心に残った。

 それからのことだ彼女は7日間という短くも長い時を行動した――

 一日目は彼を愛しみ。

 二日目は彼の死を嘆き悲しみ。

 三日目は世界と人を憎しみ。

 四日目は人を殺し。

 五日目は物を壊し。

 六日目は世界を殺し壊し尽くした。


 そして七日目には――

 嘗て天使が住んでいたとされる浮島。

 その神殿の階段で一人の天使はもう一人の天使の亡骸を抱き抱え、優しい笑顔を浮かべていた。


「ねぇ、シフォン。全部終わったよ、後は君との時間をゆっくり過ごすだけだ。ああ、何て幸せなんだろう私は。」


 雲海に沈む夕日を神殿の階段から眺めて天使は微笑む。

 美しかった白銀と漆黒の翼は今や血に染まり、夕陽によって朱く光に照らされ禍々しく輝いていた。

 彼女の頬には返り血が伝っていてまるで血の涙を流しているようにも見えた。


「らん、ららーん、らんらん」


 彼女は歌を口ずさむ遠い過去の時に、彼と歌った歌を。

 もう彼女は何も考えていないだろう。


――本当にこれで良かったの?――

「シフォン……シフォンなの? うん、私は今、とっても幸せだよ!」

――本当に?――

「どうしたの急に、君だって幸せでしょ? うん、間違いない!」


 彼女は独り言を言う、誰と話している訳でもなく。壊れてしまったのだろうか。


――僕が望んでいた君と過ごす日々を想像して見て?――

「シフォンが私と望む日々……?」


 彼はいつだって私を護って助けてくれたように、皆を護って助けていた気がする。

 そうだ、彼はいつだって優しかった。ありふれた日常を皆と私と過ごす日々を大切にしていた。


「あれ、私は何をしているんだろう……」


 彼女の頬に本物の涙が伝う、自分の仕出かした愚かな行為を悔やみ始めた。


「わた、わたし、私は、私はあああああああああああ」


 エンゼルは頭を抱え現実から逃れようとシフォンの亡骸を抱き寄せる。


――まだ、大丈夫だよ。君と僕の心なら何だってできるじゃないか。――

「うん……うん、私のした事だもんね……。ちゃんとする私、世界を元通りにするよ」

――さあ、僕の手を取って。創めよう世界の再生を、君と僕の心世界を――

「うん!」


 エンゼルはシフォンの手を取り、心から願った世界の修復を、再生を。

 世界が光に包まれる。真っ白い想像の光に、そして内側から真っ黒い創造の光が溢れ出る。


 そして七日目には世界を再生して創造した。



 学園寮の食堂。

 二人の男女が会話をしていた。


「なあ、ジェラ。」

「……何、フェン。」

「今回の聖戦では誰が願いを創造かなえたんだろうな?」

「……また、その話? ……誰かわからないのは毎度の事でしょ。」

「そうなんだけど、何か引っかかるんだよな。俺達の他にいつも一緒にいた奴いなかったっけ?」

「……ボケるのにはまだ早いわよ。」

「だれがボケだ!」



 学園の一室。

 神徒が全員が集会をしている。


「今回は学園の風紀に関わる議題で――こら、ニャルくん大人しく聞くんだ」

「嫌にゃあ、ニャルの自由を束縛できる奴はいないにゃあ」

「俺もパスだ、身体を動かしてた性に合ってる」

「さすがだ、マガル! 俺も付いてくぞ」

「こら、カイルくん。これは神徒の義務でもあり――」

「無駄だよ、シェリル。自由気ままな連中だもの。世界の話でもしてた方が有意義だと思わないかエル」

「あはは、君も十分、自由気ままだよヨッド」

「フィーナくん、心の力は集中力次第で回復を高める効果あると思うんだ。」

「そうですね、天使さまを信じる心が皆を助けると思います。」



 世界の北の森にある教会にて。


「マザー、この子達が行く宛ても無いそうで……」

「あらあら、それは大変ねシスター。双子かしら? うちの教会では部屋が空いてるから一緒に住みましょう! お名前は?」

「僕、アダム、こっちの妹がイヴ」

「よろしくです。」



「これで、もう大丈夫だよ、シフォン……。」


 遥か上空の天使が住んでいたとされる島で一人の天使が佇んでいた。

 この世界は想像し創造された、二人の天使によって。


「もう、この世界は大丈夫だから私は行くね。君がいる違う新しい世界、新世界に」


 こうして天使はその世界から姿を消した。




最初の連載作品としては想像が膨らみ書き出せるかと思いきや、長い連載期間の中で色々な状態以上が起こり大変でした。

もともと小説自体読んだことも書いた事も無いので、練習と割り切って書いたつもりではいたのですが、これはこれで頑張ってました。

心世界のタイトルを足掛かりに新世界→真世界→神世界って感じで繋げて書こうと思ったけど無理でした。

まだまだレベルが低い自分には超ハードルでしたねー。

でも、少しはレベルが上がったと自負できましたので新しい連載の方を頑張りたいと思います。

多少は読みやすくなってるのかな?

それではありがとうございました。

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