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4 ピクニック

本日2話投稿となります。

前話がございますのでご注意ください。

 無事リリームちゃんが私の侍女に抜擢されました。わーい。


「奥様、今日のお召し物にはこちらの髪飾りがお似合いですわ。

 髪型も全部あげてしまわないでハーフアップに致しましょう」


「いやーほんっと助かるわ、リーム。こっちの服装の作法って身に付かなくって、毎回大わらわだったからさ。」


「いえ、私こそ。奥様に出会えなければ、不満を持ちながらも現状を変えることもなく、無為に歳だけ取っていたと思います。心から感謝しておりますわ」


「もう、二人っきりの時にはそんな堅っ苦しいのは無しって言ったじゃない?」


「ふふ、そうですね、カオル様」

 リーム、カオル様と呼び合い、私たちはすっかり心友しんゆうとなったのでした。

 いやー、安心しきった明るい笑顔がめっちゃ良いわ!

 妹のビオラちゃん共々領主館に馴染み始めているし、二人とも素直で良い子だ。

 うちは、働かざる者食うべからずがモットーだけど、働いた分はちゃんと返ってくるからね。働く喜び!労働の基本ですよね。めでたしめでたし。



 そんな雰囲気に影を差す熊が約一名。いや、言わずと知れたうちの旦那様です。

 なあんで遠くの柱に寄りかかりながら、こっち睨んでるんですかねぇ。近眼ですか?

 最近よくこちらを睨んでるんだよね…。


 おお!旦那様に気を取られてたら、いつの間にか銀髪美少女がやって来ます。

「カオルお姉様。今日も素敵ですわ。御髪の色と深緑のドレスがとっても合っています」

 もう一人の心友、アレクサンドトゥーム・グリュピュースちゃん通称アレク。名前の通りロレン課長の妹さんです。ここの家の名づけ基準がすごく気になる。舌を噛むか、一度では覚えられないとか、そんなのだったらどうしよう…。


「いらっしゃい!アレク。天気も良いしピクニック、楽しみだね!」

 はい!今日はランチを外に持ち出して、女三人でピクニックですよ。

 両手に花だぜ、やっほう!館からは出られないから庭だけどねー。


「あの、本当に伯爵様を誘わなくて宜しいのですか?」

 アレクが来た所で、リームが尋ねてくる。


「いーの、いーの。いっつも職場(執務室)で顔合わせて仕事してるんだから、たまの休みくらい違う人と過ごしたいはずだって。

 私だって旦那様とロレンさん以外の顔が見たい!!具体的にはリームとアレクとイチャイチャしてエネルギー補充したい!!」

 まあ、二人の花に囲まれてハーレム状態ですから、加わりたい気持ちは分かるよ?

 でもこの花園はわたしの!旦那様にはあげませんっ!!


「私も、お兄様のしかめっ面ばかりではなく、カオルお姉様の笑顔で癒されたいですわ」

 アレクが腕を組んでくる。

 私はもう片方の腕をリームに絡めて、外へと向かう。




 直接日差しの当たらない木陰にピクニックシート代わりの特大ブランケットを敷いて、三人でお茶とランチを楽しむ。

 若葉と、少し離れた場所にある花畑の良い香りが風に乗って微かに通り抜けていく。


 女が三人集まったら、やっぱりするのは恋バナですよね!


「アレク様は既にご婚約のお話が出ていらっしゃるのではありません?」


 リームがアレクに話を振る。アレクは花も恥じらう17歳!こっちでは女子高生の年齢で結婚が普通なんだもんな~。早いね…17歳の頃私は女友達と遊んでばっかりだったよ。あ、今とあんまり変わらないな。


「いえ、私は。兄も特に決まった方との縁談を勧めてはまいりませんし、好きにして構わないと言ってくれております。

 そう言うリームさんはどうなんですの?セブンスさんと仲が宜しいようですけど」


 自分の事は話さずに相手の情報だけ引き出す。さすが完璧令嬢!アレクの手腕を見習わねば。返されてリームはしどろもどろだね。


「わ、私なんて!セブンスさんから見たら自分の娘のような年齢ですもの…。

 それに、私は仕事に生きる女となると決めたのです!セブンスさんには体術と剣術を教わっているので、他の方よりは話す機会が多いですけど、私に好意を寄せられたりしたら、きっとセブンスさんは迷惑ですわ」


 …どこから突っ込むべきか迷うな。


「ねえ、体術と剣術って、侍女にいる?」

「あ、そっちに突っ込みいれますか」

 私の突込みに、アレクが反応する。


「侍女として、緊急時にはカオル様をお守りするのも私の役目です。

 大丈夫です、私は筋が良いそうで、この間も王都から来た新人の兵に勝ちました!さすがに隊長クラスにはまだ歯が立ちませんが…」


 何やってんの!?リームちゃんてば!新人て言ったって、正規の兵だよ。訓練兵じゃないんだよ?その細腕は髪を綺麗に結い上げるだけじゃなかったのね…。


「それに、兵の方々に伺いました。アレク様の得意な武器はモーニングスターだそうですね!たまに訓練にいらっしゃると負け無しだとか。ぜひ一度手合わせを願いたいものです」


 リームちゃんの意趣返しキター。


「…まあ。…おほほほほ…」

 アレクちゃん!?笑って誤魔化さないで!知らなかったよお姉さんはっ。


「二人とも、どこ目指しちゃってんの?完璧令嬢は戦闘力も必須項目なんですか」

 私は令嬢にはなれないよ…。いや、年齢的にも無理ですが。


「伯爵夫人に危険は付き物です。用心するに越したことはありません」


 …この職業そんなにデンジャラスだったっけ?


「じゃあ、私も鍛えた方がいいのかな」

「いえいえ、それでは私達の楽しみが…ごほごほ、カオルお姉様にはお姉様の役目がございますもの。そちらに心血を注いでください」

「そうですそうです。カオル様のお役に立ってこその侍女でございます!」


「「そして伯爵様と本物のご夫婦に!!」」

 息ぴったりだね、二人とも。


「それは無理なんだってば~。そういう契約なんだから、ありえません。だから旦那様には早くいい人見つけて欲しいんだってば」

「お二人はあんなに仲睦まじいのに…」

 リームはちょっとショックを受けてる。

「いや、双方納得済み。仲はいいけどね、愛情じゃなくて友情かな」


 はああ。と大きなため息はアレクだ。

「伯爵様ってば…相変わらずのヘタレぶり。これはお兄様に要相談ですわ」


 言ってる意味はよくわからんが、着実に私の使うダメな日本語が普及してますね。



 ・・・・・・・・・・・・・・・



 午後のお勉強が終わったビオラも合流して、四人でまったり過ごしていると、館の方から人影が。

 旦那様と、ロレンさんと、セブンスさんだ。

 今日はお休み日の筈なのに、三人とも仲がいいね~。



「まだ此処にいたのか、ピクニックなんて何が楽しいんだ?」

 相変わらずデリカシーがないですね、旦那様。そんな事ではご令嬢方のハートは掴めませんぜ?


「一緒に過ごして話せるだけで楽しいんですよ。話題は尽きないですからね、何時間でもいけますよ」

 隣でアレクがクスクス笑っている。

 リームとビオラは畏まってしまった。ああ、ほらほら、熊さんが顔出すから~!!


「アレク、もう時間ですよ。今日は夕方前に帰ると母上と約束したのではなかったですか」

 ロレン課長の言葉に、アレクが慌てだす。

「まあ!もうそんな時間ですか?楽しいひと時は本当にあっという間ですわね…」

 アレクは名残惜しそうにしている。私も寂しいよ~。


「リーム嬢、ビオラ嬢、生活用品を買い足したいと言っていただろう。これから丁度馬車を出すから、ついでに町まで一緒に行くかい?」

 今度はセブンスさんが口を開く。あ、セブンスさんも出掛けるんだね。


「本当ですか、セブンスさん。ありがとうございます」

 リームがぺこりと頭を下げてる。真似して頭を下げるビオラ可愛い!!

 あれ、お花が皆行っちゃうよ!?私も用無いけど付いていっちゃダメ?


「あのわた…」

「無理だぞ。大人しくしていろ」


 ぐぐっ!先回りってスッゴイむかつく。

 いや、私が行くと護衛もいかなきゃだし、セブンスさんの負担が増えるからね。

 分かっているんだけどね…寂しい。



 寂しく五人を見送って、さあ片付けようかな…と思ったら、旦那様がブランケットに寝転んでしまいました。

「…あの、邪魔で片付けられないんですけど?」

「ん。まだ夕方まで時間がある。少し休むくらいはいいだろ…」


「いや、まあ、いいんですけどね。寝るのなら一人にしましょうか」

 そう言って、立ち上がろうとした手首を取られた。おっとと。寝てるのに器用だな。


「あっぶないな~。顔面からダイブして、私の鼻が更に低くなる所でしたよ?」

「くくっ。大丈夫だ、俺がいるだろう。俺の上に落ちるだけだ」

「いや、旦那様全身筋肉でかったいじゃないですか。鼻の陥没具合地面と変わりませんて」

 いつもの通りに軽口の応酬なのに、手首を外してくれません。

 なんだなんだ、駄々っ子か?


「…カオル、お前はいつも何も言わないな…」

「…は?文句言いまくってると思うんですけど?」


 旦那様が瞑っていた目を開ける。金茶色の瞳が思いのほか真剣にこちらを見ていた。

「そうじゃない、これ(・・)の事を言っているんだ。…怖くはないのか」

 そこには掲げられた私の腕。旦那様はしっかりと手首を素手で掴んでいる。


「あ~…。だって、用もないのに視ないでしょ?視るのだって疲れるって言ってたじゃないですか。

 それにもし視られても、そんなに困ることないと思いますしね。何せ、お前はほんとに成人かってくらい、品行方正な毎日を送っちゃってますから。

 むしろ見られて困るのは頭の中で日々繰り広げられてる妄想の方で…て聞いてます?」


 ここまで語らせておいて、上の空ってどうなのよ。

 目の前でもう片方の手を振ってみる。


「あ、いや。聞いていた。…本当に怖くないのか?」

「怖くないですって。何でですか、そういう事誰かに言われました?」

 そんな無防備な目で見られると、この人が泣く子も黙るブラック伯爵だって事を忘れそうになる。熊が無防備な目で見てくるなんて可愛く見えて………こないな!


「だって旦那様は、視た情報を悪用したりするわけがないんですから」


 逆に見た事を自分の中で抱えてなきゃいけないから、ストレス溜まりますよねー。

 いつの間にか起き上がっていた旦那様に、頭をワシワシされた。首がもげそう。

 あなたの腕力は普通ではありません、加減をしてください。



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