○○の敵を場外へ飛ばせ
「今更なにを言っているんだ、湊」
部長が変な者を見るような目で湊をみた。
「つい、先日、お前をヒロインに抜擢してやったろう」
「だから、了承してませんが」
前日、ショックのあまり腰を砕けた湊は泣きながら潮の家(←学校から一番近いので)に走り込み潮の部屋に逃げ込んだ。
しかし、学校に行かないというわけにもいかず湊本体を操作しながら学校にたどり着いたのだった。
今は昼休みなので部長と話しているのはスマホの上に座りこんでいる食玩の鵺だ。本体はだらりとパイプ椅子に倒れこんでいる。
「ここは何部だ」
「漫研の特撮班…」
「オレは誰だ」
「本町部長」
「ゆえにオレの言うことは絶対なのだ」
「そんな部則ありましたっけ」
「笑止!オレが規則だ~!」
「さいですか…」
「ヒロインとして抜擢したお前が更に美少女を連れてきた!
これぞ天恵!
天はオレに美少女ユニットを作れといっているのだ~!」
天を仰ぐ部長。
-ズガーンッッ!!!
雷の落ちる音がする。
「いや、花咲…音響効果いらないから…」
「…は?!そんなことより」
元町部長が我に帰ったかのようにみのかめに目を向けた。
「この美しい方はどなたなんだね?」
「知らないのに勝手に役者にしようとしてたんですか」
「何か問題でも」
不思議なことを言われたかのように本町部長が首をかしげた。
「私は蓑亀藻子ともうします」
美しいと言われてまんざらでもないのか蓑亀が元町部長を見上げた。
「あなた様こそ凛々しいお顔立ち」
「え?」
蓑亀の頬が赤く染まった。
「ねーねー、部長、ヒロインがいるってことは敵がいないといけないんぢゃない?」
「いいところに気がついた。」
元町部長がぽんと手をたたきながら潮をみた。
「んぢゃ、見晴、悪の幹部な」
「やったー!」
「喜ぶところなのか?そこ」
「ぢゃあ、俺、怪人」
「んぢゃ俺はやられる一般人」
はいはいと手があがる。
「お。お前達…そんなにも…
お、俺はいまお前達の暑い魂の息吹きに感涙している!!!!」
-ザッパーンッッ!!
「いやだから花咲、効果音はいいから…」
つかれた、鵺はいいながらため息をつき伏せのポーズをとった。
「蓑亀さん、こんなこと言われてますがいいんですか?」
鵺は首をかしげて蓑亀の方を向きながら言った。
「素晴らしい試みですわ、本町様」
蓑亀は両手を顔の前で組むとひたりと本町の方を向いた。
「湊様には私とゆにっととやらをくんでいただきますわ」
「はぁ?」
「私達はここでヒロインになるのですわ」
大きな黒い目をきらきらさせて蓑亀が天を仰ぎ、効果音のまばらな拍手の中のを見て湊は自分の中の心の背骨が崩れ落ちるのを感じていた。




