護衛艦「ひえい」撃沈
護衛艦「ひえい」
「アンノウンとの距離、約2500!」
「アスロックは撃てるか?」
「目標補足出来てます!」
「よし、アスロック発射!始め!!」
「前部VLS!アスロック発射!!」
艦が少し揺れる。微かながら発射の音も聞こえる。
「アンノウン、本艦から距離をとっています。アスロックに気づいた模様。」
「アスロックから?それとも「ひえい」から・・・?」
「わかりません。しかし約20ノットで距離を取っています。現在、本艦との距離2700。」
何か変な感じがする・・・変というより胸騒ぎが・・・
「念の為、対空見張りを厳としてください。嫌な予感がします・・・」
私はそう指示する。なんだろう・・・さっきヤツを見たときミサイル発射管のようなものが見えたきがする・・・
「了解。・・・・!?副長!水上レーダーに未確認船多数!数は約40!」
「え!?」
「速度約17ノットで本艦に接近しています!」
速射砲は撃てない・・・ミサイルは貫通してまるで意味がない・・・
「・・・アンノウンを優先してください。」
「・・・了解です。・・・ん?見張り員から報告、未確認船はイギリス艦艇と確認。アンノウンに向かっていく形のようです。」
・・・味方?どういうこと?
「監視を継続してください。」
「了解。」
40隻いてもヤツに勝てるかどうか・・・
「アスロック着水!目標追尾中!」
「着弾は?」
「約・・・1分!」
「何事もなく着弾してくれるといいけど・・・」
アスロックは順調に目標に迫っていく。ヤツが気づいてないことを祈りたい・・・
「魚雷音聴知!方位180度!雷速40ノット!」
「180!?それは・・・イギリス艦隊側に向かうヤツじゃ・・・」
「間違いありません!魚雷、イギリス艦隊方面に向かっています!」
迎撃は間に合わない・・・救助ならできるかも・・・
「SH-60緊急発進用意!イギリス艦隊が撃沈された場合すぐに救助に向かってください!」
「了解!」
エイリアン(?)と戦うのはアメリカのお仕事なんだけどな~・・・自衛隊は怪獣で許してください。
「・・・!アンノウンから小型目標分離!高速で本艦に接近!対艦ミサイルが発射された模様!」
「対艦ミサイル!?やっぱり・・・あれは発射管だったのね・・・」
もうめちゃくちゃね・・・300年前のヤツのはずなのにミサイルまで・・・
「アスロック着弾まであと2秒・・・弾着、今!!」
艦橋のカメラから大きな水柱が立つのが見えた。その水柱には赤い血のような物も混ざっていた。
「ESSM探知!目標ハープーン!」
なんでハープーン持ってんのよ!!おかしいでしょ!!こんなの絶対おかs(ry
「対空戦闘!シースパロー攻撃始め!」
「シースパロー発射用意よし!」
「後部VLS、シースパロー発射!SALVO!!」
お願いだから撃ち落して・・・!
「アンノウン浮上!」
「え?」
頭から血を流した海潜戦姫が姿を現す。あ・・・頭に当たったのね・・・そりゃ痛い。
「モウ、許サナイ!!沈メテヤル!!」
日本語で言ってくる。
「シースパロー、インターセプト5秒前!スタンバイ・・・マークインターセプト!!」
「命中!?」
「目標を外しました!」
「CIWS、AAWオート!!」
ブオオオオオ!!!と凄い音がする。撃墜して・・・!!
「目標・・・撃墜!!」
ドオオオオン!!という音と共に船が揺さぶられる。
「被害状況は!?」
「!対空レーダーが故障!」
「え!?」
対空レーダー用のスクリーンが消える。
「アンノウンが高速接近!距離2000!!」
「アンノウンさらにミサイル発射!」
「くっ・・・!チャフ攻撃始め!」
間に合って!!
「間に合いません!!!」
最悪!!
「総員衝撃に備え!!」
私は全艦放送で叫ぶ。いやだ・・・死にたくない!
「着弾まで・・・2秒・・・着弾!!」
ものすごい音と衝撃が来る。私は転んで頭をぶつけてしまった。
「いたた・・・被害は!?」
「後部甲板に被弾!機関損傷!航行不能です!」
「SH-60は!?」
「さっき離陸して退避中です!」
「負傷者は!?」
「格納庫の中にいたヤツが・・・しかし幸い軽傷ですんでます!」
被弾するなんて・・・もう・・・総員退艦しかない・・・
「いてて・・・おい・・・大丈夫か?」
「艦長・・・」
「俺の指示で無茶させちまってすまねぇ・・・」
「大丈夫です、それに時間は稼げました。」
「どういうことだ?」
「・・・大和とはるなが到着しました。」
「なに!?」
生きているカメラを見る。もうすぐそばまで大和が来ている。
「通信つなげ!」
「さきほどの攻撃で通信機全損です!」
「脆すぎるだろオイ!」
「とりあえず発光信号で救助要請を!」
私はそう指示する。てか陽菜キレてないかな・・・あの子絶対怒ってると思・・・
「艦長、はるなが砲撃を開始・・・あの・・・ミサイル、魚雷、速射砲とぶっぱなしてます・・・」
「あ~・・・陽菜ちゃんキレたかな・・・アイツ羽黒ちゃんに何かあるとめっちゃキレからな・・・シスコン怖いな・・・」
「艦長?それ姉の前でいいます?」
「まぁ、いいじゃねぇか・・・おい、全艦放送につなげ」
「了解。」
「艦長より、全乗組員へ、総員退艦。繰り返す総員退艦。船から離れろ」
そう言ってマイクを置く。
「よし俺は艦橋でやることあるからお前ら先に降りろ。」
「・・・やることって何ですか・・・?」
「ん?なんでもいいじゃねぇか。」
「言ってください!」
「怖いなオイ・・・俺の秘蔵コレクション海に沈めるわけにはいかねぇんだよ・・・羽黒ちゃんの隠撮写真とか・・・」
「・・・艦長?一緒に沈みます?」
「ごめんなさい嘘です。」
なんでだろう・・・ほかのCIC員が一瞬ガタッ!ってなったがなぜか今は(´・ω・`)ってなってる。なんで?
「とにかくさっさと降りろ。いいな?」
「・・・早く来てくださいね・・・」
「おう。」
私たちはCICから出て行く。
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護衛艦「はるな」
私は被弾して燃え上がる「ひえい」を眺めていた。
「あ、あの・・・艦長・・・?」
「なんですかぁ?」
自分でもびっくりするぐらい生気のこもってない声がでた。
「ええと・・・「ひえい」より救助要請です。」
「そうですかぁ~。じゃぁ、あの邪魔物沈めてから救助ですねぇ~。」
「りょ、了解!」
「私、CICに行きますから副長さんここお願いしますねぇ~。」
「は、はい!了解!!」
うふふふふふふふふふふふ・・・・お姉ちゃんに傷つけるなんて・・・もう許さないよぉ~?うふふふふふふふふ
CIC
「あ、艦長!攻撃準備できてます!」
「じゃぁ・・・あのおバカさんに照準合わせてください~。」
「か、艦長?なんかいつもとちがいません・・・?」
「ちがくないですよぉ~?」
「そ、そうですか・・・(怖い。この人笑ってるけど目が笑ってない&声に生気こもってない)」
「全兵器・・・撃ちー方始め~」
「う、撃ちー方始め!!」
あはははははは!!!粉々になればいいんだ!!お姉ちゃんを傷つけるヤツは全員死ねばいいんだぁ!!あははははは!!!
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護衛艦「ひえい」
「艦長、私たち以外全員ボーに乗りました。早く逃げましょう!」
私は艦長に向かって言う。もう格納庫付近は完全に水没している。
「・・・それは無理だな。」
「なんでですか!!まだボートもあります!みんな艦長を待ってるんですよ!?」
「俺はよぉ・・・この船には愛着があるんだ。この船が娘みたいでな。死にゆく娘を置いて逃げる気なんてねえよ。」
「でも・・・艦長・・・!」
私は涙目で言う。
「泣くなよオイ。船と運命を共にするのは艦長としての仕事でもあるだろ?」
「でも・・・でも・・・!死んで欲しくありません!」
「あのな・・・俺のじいちゃんは昔戦艦の艦長でな。船と運命を共にしたんだよ。最初はバカとしか思えなかった。こんな鉄の塊といっしょに死ぬなんてなってよ。」
艦長は続ける。
「でもな、艦長になってみてわかるんだ。船は家族・・・いやもう体の一部だってな。」
「でも・・・待ってる人がいます!艦長も早く来てくださ・・・ひっ!」
ドン!と大きな衝撃が走る。多分後部甲板で何かが爆発したんだろう。
「ほら。もうひえいも持たない。早く逃げろ。」
「嫌です!艦長も・・・艦長も来てください!」
私は泣きながら艦長の腕を引っ張る。
「おいおい・・・さっきの話聞いてなかったのかよ・・・俺は逃げない。コイツといっしょにいたいんだ。」
艦長は羅針盤を撫でる。
「でもぉ・・・死んで・・・欲しくないんです・・・」
もう泣きすぎてうまくしゃべれない。
「ほら・・・顔上げろ。お前、泣いた顔も可愛いな。」
「冗談・・・いってる・・・場合じゃ・・・」
こんなセクハラしかしないエロオヤジでもいないと嫌だ。仲間には死んで欲しくない。
艦首がゆっくりと上がり出す。
「もう危険だ。さっさといけ。」
「嫌です!」
「行けつってんだろうが!!」
艦長が怒鳴る。
「嫌です・・・!一緒に・・・!一緒に帰りま・・・しょうよ・・・!」
もう喉も乾いて仕方がない。うまく声が出ない。
「・・・羽黒ちゃん・・・許してくれ・・・!」
「え・・・?艦長?」
艦長は私を担ぎ上げる。
「い、いや・・・!おろしてください!!」
「・・・お前だけは生きろ。いいな、羽黒。」
艦長は私を海に放り込む。救命胴衣をつけてはいたが水に落ちた衝撃が痛い。
「副長・・・大丈夫ですか?」
「だい・・・じょうぶ・・・大丈夫です・・・」
近くにいたボートに助けられる。
「艦長は・・・?」
「艦長は・・・逃げないって・・・」
私はまた涙を流しながら沈みゆく「ひえい」を見て言う。私を下ろしたあとからいきなり沈む速度が早くなった気がする。もう生存者がいても助ける暇もないくらいの速度で沈んでいく。
「艦長・・・・」
私は泣き崩れる。ほかの乗組員たちも敬礼したり泣いていたりしていた。しかし大和が海潜戦姫に砲撃をした音で涙が引いてしまう。海戦戦姫は砲撃で上半身を消し飛ばされ海に沈んでいった。イギリス艦隊も壊滅。浮いている船はいなかった。
「艦長・・・艦長・・・!」
私は投げだされるときに掴んだ艦長の帽子を抱きながらまた泣いていた。
「・・・はるなから発光信号・・・救助準備完了とのことです・・・」
「・・・・了解・・・しました・・・」
私は生気のない声で言う。そして、はるなに向かってボートを動かそうとしたそのとき、水面に気泡が出てきた。
「・・・・?」
海潜戦姫だろうか・・・もう・・・どうでもいい・・・。私は諦めかけていた。しかしそれは海潜戦姫などではなかった。
「ああああ!!!死ぬかと思ったあああああ!!!」
聞きなれた声。見慣れた顔。艦長その人だった。
「え・・・?」
「ああ、そのボートやっぱ俺も乗るぞ。」
「え?え・・・?艦長・・・?なんで・・・なんで・・・生きてる・・・?」
「おいおい・・・人を殺すな。生きてるぞ俺は。」
「艦長!!」
私は思わず飛びついてしまった。
「良かった・・・良かった・・・」
泣きながら言う。
「ほれ、泣くなって。放り込んだときに怪我してないか?」
私は艦長に抱きついたまま首を横に振る。
「そか。いや~・・・最後の最後に艦に嫌われちまったなぁ・・・」
「・・・?」
「おいやめろ。そんな泣き顔&上目使いやめろ。」
「・・・・ひどいです・・・」
「んないじけんな。可愛すぎてな・・・」
「・・・・・このっ・・・」
「ごふ・・・」
艦長の鳩尾を軽く殴る。
「いてて・・・とにかくよ・・・沈む時に艦橋から投げ出されてよ・・・深度10mくらかな。」
「でも・・・生きてて良かったです・・・」
「ああ・・・てかよ・・・そろそろ離れてくれないかな?」
「へっ?あっ・・・」
私は顔を真っ赤にして飛び退く。飛び退きすぎて海に落ちたが。
「おいおい・・・大丈夫かよ・・・」
「げほっごほっ!だ、大丈夫です・・・」
うう・・・風邪ひきそう・・・
「ま、全員無事なんだろ?」
「はい、軽傷者数名いますが全員無事です。」
「そか、なら良かった。」
艦長が無事でホントに良かった・・・。
はるなが汽笛を鳴らしながら迫ってくる。
なぜだろう・・・艦長と副長の恋愛ルートみたいなのが築かれた希ガス。