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Nothing.  作者: 松田 映美花
ウェストバリー魔法学校
5/14

4

「では、名前を呼ばれた者から順に隣の部屋で試験を受けてもらいます。終わったらすぐにこの教室へ戻ってくるように」


 しわがれた声で先生が言った。

 真っ白な髪と伸びたヒゲに、腰が曲がったような老人だった。

 丸まった羊皮紙を広げ、上から順に名前を読み上げていく。


「アイリス・ヘイルウッド」


 まず最初に呼ばれたのはアイリスだった。

 はいと返事をしたアイリスは席を立ち、示された方へと向かう。

 誰もが緊張しているのだろうか、教室内はやけにしんとしている。

 それもアイリスが戻ってきたことで破られたのだが。


「どうだった?」


 次の者が呼ばれ、教室内ら一気にざわめき立つ。

 ルークはアイリスに尋ねた。

 アイリスはニッコリと笑って答える。


「光と時と幻よ」


 その返事を聞いたと同時に、ルークの名が呼ばれた。

 それに気付いたアイリスが頑張って、と小さく言った。





 部屋は薄暗かった。

 白いクロスが掛けられたテーブルの上には一枚の羊皮紙と羽ペンが置いてある。


『名前を』


 誰かの声がそう言った。

 まるで頭に直接響いてくるような声だった。

 ルークはペンを取り、丁寧に自分の名前を綴った。

 心臓の音がうるさい。

 しかし紙に記名したものの、特に何も起こらない。

 早く――。

 ルークは必死に願った。


『無』


 紙が宙に浮いたかと思うと、ゆっくりと光が文字を綴る。

 ルークは目を見開いた。

 思わず近付いてよく羊皮紙を確認するが、光は変わらずに『無』を示している。

 何かの間違いじゃないのか。

 ルークは放心したかのように羊皮紙を見つめていたが、コンコンと扉を叩く音で我に返る。

 とにかく後で先生に相談しよう。

 そう決めたルークは部屋を出た。


「どうだった?」


 まるで先程の自分のように尋ねてくるアイリス。

 そして入れ違いに部屋に入っていくフィル。

 ルークは曖昧に笑うしか出来なかった。


 属性が闇でなかったことは良かった。

 しかし無となればこれはこれで問題なのである。

 何しろ無属性の魔法使いなど、今まで誰一人としていないからだ。

 しかも一人に複数あるはずが、たったの一つだけなのだ。


 アイリスはルークの表情から何かを察したのか、それ以上は何も触れずにいた。


「僕、地と木だった!」


 帰ってくるなりフィルが言った。

 アイリスは良かったわねと微笑んでいる。

 周りでも他の生徒達が口々に自分の属性について語り合っていた。

 しかしその誰もが『無』だと口にすることはなく、ルークには自分の属性なんて到底言えないと思った。







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