3
「ところであなた達は?わたしはアイリス・ヘイルウッド」
アイリスはパンを千切って一口運んだ後、思い出したかのように言った。
「僕はルーク・フォーブス」
「フィリップ・メイヤールだよ」
慌てて自己紹介する二人に、アイリスは気の抜けた返事をした。
そして食事の続きを摂り始める。
特に何を話せばいいのか分からずに訪れた沈黙を破ったのはフィルだった。
「ねぇ、今日の属性試験って何をやるんだろう」
その言葉ですっかり忘れていた試験のことを思い出し、ルークは一気に気が沈んだ。
「さあ?わたし、パパもママもヒトだから…聞いたことがないわ」
アイリスの言葉にルークは驚いた。
魔法使いというものは、昔から続く家系が多い。
魔法使いではないヒトの子が魔法使いとなることは実に稀だと言われている。
そして魔法使いとヒトの交流もないと言っても過言ではないくらいに少ない。
ほとんどが代々続く魔法一族の子ばかりなのである。
「僕の父さんもヒトだよ」
フィルがルークの隣で言った。
ルークは驚きで手が止まる。
片親がヒト、つまりハーフであるということは隠したがる魔法使いが多いのだ。
彼らはヒト同士の子よりも少ないことから、時に風当たりが強いのだ。
だからと言ってルークには今更フィルを避けようだなんていう気にはならなかったが。
「君は、それでそんなに本を読むの?」
ルークはアイリスに尋ねた。
両親の話を周りに聞かれるのは二人にとってあまり良くないかもしれないと思ったのだ。
しかしアイリスは首を横に振る。
「これはわたしの趣味よ」
ルークとフィルは顔を見合わせた。
驚きの余りにフォークを落としてしまいそうになる。
「趣味が…それ?」
「ええ、そうよ」
アイリスの嬉しそうな返事に、ルークは変わった子だと心の中で思った。
もしかするとそれはフィルもかもしれないが。
「変人だ」
大広間を出た三人が試験を受けるための教室へ移動しようとしていた時だった。
濃紺色のローブを纏った同級生達がヒソヒソとこちらを見て言っているのが聞こえた。
まただ、とルークは眉をひそめる。
するとアイリスが二人に言った。
「気にしないで。わたしのことよ」
アイリスは特に気にした様子でもない。
ルークは首を傾げた。
「わたしはヒトの子だし、読書が好き。呪文を考えるのも薬を作るのも好き。だから変人なんですって」
一瞬だけアイリスの顔色が曇ったようにも感じたが、相変わらずの笑顔でそう言ってのけた。
「確かにこの本はちょっとね…」
ポツリとフィルが呟いたが、アイリスは飄々としている。
ルークはそんな風に強い心を持てるアイリスが羨ましく感じた。