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Nothing.  作者: 松田 映美花
ウェストバリー魔法学校
2/14

1

「ねえ、君は降りないの?」


 誰かがそう言ったのが聞こえた。

 少し間が空いてからその言葉の意味を理解したルークは慌てて目を開き、辺りを見渡した。


 目の前には少年が一人。

 漆黒の髪に同じ色をした瞳をした彼は、ルークをじっと見ている。

 少年はルークと同様の濃紺色をしたローブを纏っている。

 ――同じ一年生なのだろう。


 そこまで考えたルークは立ち上がった。

 列車を降りると、少年はこっちだよと言って手招きをした。

 どうやらルークとは違い、学校までの方向を知っているようだ。


「ありがとう、ええと…」


「フィルだよ。フィリップ・メイヤール」


 よろしく、とフィルは手を出した。


「うん、僕はルーク・フォーブスだよ。よろしく」





 フィルに案内され、ようやく学校の入り口へと辿り着く。

 思っていたよりも駅から距離があり、もうクタクタだった。

 フィルはといえば、ルークよりも細身でひょろっとしているのに涼しい顔をしている。


「ほんとなら駅からここまで迎えがあったみたいなんだけど、ボンヤリしててさ」


 大きな古い扉を目の前にして、フィルは言った。

 しかし眠っていて到着したのにすら気付かなかったルークからすれば、フィルのお陰でここまで来れたのだ。


 重そうな扉を開こうと二人は一緒に手を伸ばす。


「――あなたたち、三十七分と三十五秒の遅刻ですよ」


 二人の手が触れた瞬間、扉が開いて誰かが歩いてくる。

 コツコツという靴音が近付き、目の前で止まった。


「すみません」


「とにかく大広間へ向かいなさい。他の生徒もそこに集まっています」


 厳しい口調で、しかし美しく微笑みながらその人は言った。

 慌てて頭を下げた二人はその示された方向へと駆ける。




「――無事に辿り着けたようで何よりですわ」


 大広間に辿り着いた二人はその声にビクリと体が跳ねた。

 座りなさいと静かに言われ、周りの生徒が見ている中、側の空いている席に座った。

 ルーク達と同じ一年生はどうやら前の方に座っているらしい。

 近くにはえんじや深緑などの上級生と思われる色のローブを纏った人ばかりである。


「…さて、先程の続きなのですけれど」


 生徒達が少しざわつき始めた頃、女性の声がそう言った。

 ルークとフィルから遠くて顔は見えないが、どうやら間違いではないらしい。

 お互いそう思ったのか、ルークとフィルは顔を見合わせた。

 あの声は先程、入り口で出会った美しい女性のもので間違いない。


「皆さんがこのウェストバリーで多くの物事を学び、素晴らしい魔法使いとなれるようにと今年もわたくしヘレナ・メリリース・オルグレンは祈っていますわ」


 女性がそう言い終えると、辺りからは大きな拍手があがる。

 オルグレンといえばこの学校の校長の名前だ。

 校長というくらいなのだから、きっともっと年であると思っていたのだ。

 ルークとフィルは再び顔を見合わせた。







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