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Nothing.  作者: 松田 映美花
アカ・マナフ
13/14

5

 そういえば、とアイリスが口を開いた。


「わたし、あなたたちにこんな話をするためにここへ呼んだんじゃなかったのよ」


 アイリスは前にも持ち歩いていた袋をゴソゴソと探った。

 そして中から小さな石の欠片を取り出す。


「これは?」


「よく見て。とても古いものなんだけれど…ほら、何か書いてあるのよ」


 アイリスは平らな石の表面を指で撫でる。

 するとそれに反応するかのように、ほんのりと光る文字が浮かび上がった。


「『闇は全てを包み込み、やがて世界を灰塵と化す』?」


 フィル共々石を覗き込むように見ていたルークが綴られた文字を読む。

 それは幼い頃に読んだ童話にある言葉によく似ているような気がする。


「ルーク、これが読めるの?」


 何かの手掛かりになるのではと、どうにか内容を思い出そうとしているルークにアイリスは驚いたような表情をしている。

 そしてその隣にいるフィルも同じような顔をしてルークを見ていた。


「読めるって…そう書いてあると思うんだけど?」


 どういうことだとフィルとアイリスは顔を見合わせる。


「わたしにも、多分フィルにも、その文字が何を示してるのかは読めないわ」


 アイリスは首を横に振って言った。

 フィルもそれに同意したかのように頷く。


「――もしかしたら、何か高等な属性魔法がかかってるのかもしれないわ」


 コンコンと指先で石を叩きながらアイリスは言う。

 相変わらず石は文字を浮かべたままで、キラキラと輝いている。


「属性魔法?」


「そう。12の属性を大別した時、わたしとフィルは光の属性になるわ。魔法の属性が闇だとすると、相反する属性のわたしたちには読むことが出来なくなる。だけど、ルークの属性は無だからその闇の属性すら無効化するんじゃないかしら」


 ほんの少しの時間でそこまで考えてしまうとは、さすがアイリスだと二人は思った。

 しかしルークはたとえ自分の属性が無であるとしても、自身の才能からいえば自信はない。

 自分自身にそんな力があるとは到底思えなかった。


「それはともかく、この一節が何を示しているのかが問題ね」


 アイリスはまるでルークの心を読んだのように話題を変えた。

 するとそれまで黙って聞いていたフィルが口を開く。


「小さい頃にじいちゃんがよく話してくれた昔話にそんな話があった気がする」


「昔話?どんな話だったの?」


「うーん。あんまりよくは覚えてないんだけどさ」


 困ったような顔をするフィルにアイリスはいいから話してみてと返す。

 しばらく思い返すかのように黙った後、フィルは再び話を始めた。







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