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Nothing.  作者: 松田 映美花
アカ・マナフ
12/14

4

「あら、二人とも。やっぱりここに居たのね」


 さくさくと草を踏む音が聞こえたと思えば、聞き覚えのある声がする。

 首からかけた金の鎖に繋がれた、懐中時計のような物を手にしたアイリスだった。


「やあ、アイリス。それは何?」


 フィルが尋ねると、アイリスはその懐中時計のような物を開いて二人に見せる。

 中には短い針が一つと長い針が二つ。

 短針はぐるぐると回っているが、長針は両方とも止まったままだった。


「ん?簡単に言うとあなたたちを見つけてくれる道具ってとこかしら。持ち主の望むものや人、進むべき道を示してくれるのよ」


 やがて動いていた短針は二つの長針の間で止まる。

 そしてアイリスはにこりと微笑んだ。


「今はまだ試作段階なんだけれど、うまくいったみたい」


 そういうと金色の蓋を閉じ、アイリスは真剣な面持ちで二人に言った。


「二人とも、今からわたしのアトリエまで行くわよ。――ここには『聞き耳』が落ちてるみたい」


「『聞き耳』って?」


「それも後で話すわ。とにかく…行くわよ」







 アイリスのアトリエは前とは違う匂いがした。

 まるで菓子でも焼いたような甘い香りだった。


「――それで、まずは『聞き耳』って何?」


 初めて入るアトリエの中をキョロキョロしながらフィルは尋ねた。

 アイリスはカップに茶を注ぎながらそれに答える。


「一種のイタズラよ。属性試験の日、ルークだけ自分の属性を誰にも言わなかったでしょう?それに、わたしたちって目を付けられてるみたいなのよ」


「…なるほどね」


 アイリスの言葉にフィルは頷く。

 しかしルークは納得がいかなかった。


「目を付けられてる、ってどういうこと?だからって、どうして盗み聞きなんて…」


「変人にハーフ、出来の悪い名家の子…そんな三人が仲良くしてるんだもの。それに世の中あなたみたいな善人ばかりじゃないのよ。他人のことを嗅ぎ回って、難癖付けるのが生きがいみたいな連中だっているの」


 アイリスはルークと対面の椅子に座り、相変わらずな調子で続ける。


「言い方は悪いかもしれないけど、アイリスの言ってるのは正しいかもね」


 カップの中身が熱いのか、フーフーと息を吹きかけながらフィルがアイリスの言葉に同意する。

 そしてしばらくの沈黙が三人に訪れた。









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