ルークとアルバート
ルーク・フォーブスは溜息を吐いた。
どうして自分はこんなに才能がないのだろうか。
フォーブス家は昔から代々続く魔法一族である。
その長男として生を受けたルークだったが、その魔法の才能が驚く程無かった。
両親はそんな自分を見ては呆れたように言う。
『どうしてアルバートにでも出来ることがお前には出来ないんだ』
そう言われる度に心が傷んだ。
アルバートというのはルークより三つ年下の弟である。
ルークはその弟ですら使うことが出来る簡単な魔術がまともに使えない。
両親はそんな駄目な息子を恥じているのだ。
「ルーク、もうすぐ夕飯だよ」
再び深い溜息を吐き、項垂れたルークを呼ぶ声がする。
弟のアルバートだ。
「ああ」
酷く落ち込んだ様子のルークにアルバートは苦笑する。
自分の存在が兄を悩ませていることを分かっていた。
風が吹く丘に座り込んだまま、一向に立ち上がる気配のないルークの隣へアルバートも座った。
ザワザワと風で草木が揺れる音がした。
「…もうすぐウェストバリーに行くんだろ?だったら大丈夫さ」
アルバートは静かに言った。
ルークからの返事はない。
それを特に気にした風ではなく、アルバートは続ける。
「ウェストバリーに行けば、ルークだって…」
「魔術が上達する?」
「うん」
「…父さんも母さんも、僕には才能がないって言ってるよ」
諦めたような口振りのルークにアルバートはまた苦笑する。
ウェストバリーはこの国唯一の魔法学校だ。
魔法使いは皆、魔法学校で魔術やその他に魔法使いに必要なことを学ぶ。
もちろんそれはルークの両親も同じだった。
学校へ行くからといって、ルークは自分が魔術を使いこなせるようになれるとは思わなかった。
今までだってどんなに集中しても力を振り絞っても、上手くいった試しがないのだ。
自分には才能がない。
もしかするとウェストバリーに入学することすら出来ないかもしれない。
学生の魔法使いの子を持つ家庭では、この時期になるといろいろ大変なのだ。
まずは入学の案内の手紙が家へ届く。
そして案内の通りに学用品を揃えなければならない。
特に新入生となればその時期は待ち遠しく感じるものなのだ。
しかしルークは違った。
この頃、両親がピリピリしているのが分かる。
その原因が何かルークは知っていた。
家にはまだ入学の案内が届いていない。
両親の友人達の家庭ではもうとっくに届けられているというのに。
「…ごめん。そろそろ帰ろうか」
アルバートに言っても仕方がないとルークは重い腰を上げた。
辺りはすっかり暗くなっている。
このままでは自分ばかりか、弟までが叱られてしまう。
やはり気が進まなかったが、帰らない訳にもいかない。
ぼんやりとした灯りを放つ自宅までの道をルークとアルバートは黙り込んだまま歩いた。