探偵もどき
初投稿です。
つたない部分もありますがよろしくお願いします。
中学生の時、下葛恭介は思った。
どうしてあいつはこうも簡単に人を見下すのだろう。
なんの権利がある?
力が強くて、信頼があって、発言力があれば偉いのか?
あいつはワガママがまかり通る強者様なのか?
いいや、違う。
あいつは本物の強者ではない。
真の強者は弱者を見下したりなどしない。相手にすらしないものだ。
だから、人を見下すあいつは真の強者などではない。
弱い部分があるのだ。
弱いから、それが露呈するのが怖いから人を見下すのだ。
なら、それを暴きだしてやろうじゃないか。
真の強者でなければ俺が負けるはずがない。
数ヶ月後、下葛をいじめていた男は彼女にふられ、見えない何かに脅えるように情緒不安定になった。そして、下葛に報復しようとしたが返り討ちにされた。
下葛は満ち足りていた。
不幸に堕ちたあいつの顔は傑作だ。
傲慢なやつの不幸の蜜とはこんなにも美味しいものなのか。
空腹は最高の調味料という言葉があるが、この不幸の蜜を味わうためだったら、どんな苦労も苦痛も小さなものだ、と下葛は思った。
そして、下葛は人の不幸に関わる探偵になることを決意し、多くのおごりたかぶった人間を貶めていった。
こんな話がある。
『もし、下葛を倒したいのなら、仲間、恋人、家族、地位、名誉、財産もろもろ全てを捨てて戦え。捨てる覚悟では負ける、覚悟なんてほざいているやつは捨てられないのと同じだ。俺はあいつを半殺しにしたが、代わりに大切なものを多く失った。あいつは病院のベッドの上で包帯まみれで笑っているが、俺はいつになれば笑えるのだ。この喧嘩は俺の負けだ』
青信号を横断していた高校生の下葛に因縁を吹っ掛けた暴走族のリーダーはそう言い残し、恋人をつれて街を去っていったと言われる。