5
「そんな事より聞き込みしましょう!」
ブツブツいう私の背中を佐藤が叩く。
かなり痛いというに!
力が強いと言っている。
…が佐藤は聞く耳持たない。
「この辺りに魔王か関係者はいませんかー?」
叫ぶ佐藤に村人からの反応は無い。
当たり前だ。
それの何処が聞き込みだと!
大体そんな呼びかけに出てくるアホが居るわけ無いだろう。
呆れながらも佐藤に注意しようと口を開きかけた所で一人の少年が名乗り出てきた。
「そっちから呼び出すとは中々勇気があるね!僕は魔王様直属の部下ギャロッサ!」
純朴そうな少年がエッヘンと胸を張るように私達に叫ぶ。
直属の部下…なぁ。
「聞いて驚くな!僕は生人参を食べれば食べる程パワーアップするんだ!」
見ろと言わんばかりに顔程の長さがある人参を突き出す。
ふむ。
確かに生人参だ。
ギャロッサは左手で鼻を摘むと生人参をガリガリとかじっていく。
「うぇ…まずぅ」
泣きそうになりながら必死に食べる様子に思わず可哀相に思う。
生人参でないと駄目なのか。
目に涙を一杯浮かべながら一本食べきると確かにギャロッサの体が一回り大きくなっている気がする。
…が本人は吐き出さないように口を押さえるのに必死でそれ所ではないようだ。
顔は真っ青になり終にはしゃがみ込み俯いたまま動かなくなった。
「佐藤、背中摩ってやれ」
佐藤が背中を摩ると直ぐに嘔吐したようだった。
私も隣に行ってギャロッサの顔を覗き込む。
「魔王は何処に居るんだ?」
ギャロッサは首を横に振るばかりで答えない。
「私は別に君をどうこうしたりしないから教えてくれないか?」
出来るだけ優しい声色で問いかける。
すると少年は漸く言葉を…
「知らない」
すっとぼけている様子でもない。
一体どういう事だろうか?
「俺…魔王様とは会った事ないし…」
さっきは直属の部下だと言って無かっただろうか?
言ってる事が矛盾しているが…
首を捻って考える。
ココはもっとツッコムべきか悩む所だな。
私はただ黙って聞いていたがそれが逆にギャロッサにプレッシャーを与えてしまったようだ。
「なんか魔王様ってカッコいいし…直属の部下って言ったらビビってくれるかなぁって」
あんまりな内容にため息しか出ない。
そう考えると今までやって来た奴らも怪しいな…
「でも俺戦いには向いてなかったみたいだ」
むしろ何故今まで気が付かなかったのかと問いたい所だが泣きそうな顔を見ると何も発言できない。
仕方ないな、私は黙って肩を叩いてやった。
思春期ならではの気の迷いというのは誰にでもある事だ。
私も昔ウーヤーターと…いやこの話題はもうよそう。
「すみませんでした」
ギャロッサは頭を下げて去って行った。
素直に自分の過ちを認めるのはとても難しい…これは少年を評価してやっても良いだろう。
しかしながらこれで魔王の情報はまた1から探さなくてはならなくなった。
弱ったな…
一応他の村人にも何か情報がないか聞いてみるか。
私がそう決意して立ち上がると既に佐藤は色々と話を聞いて回っているようだ。
アレで中々気が利く!
少し佐藤を見直した所でふと彼女の手に持つザルに目が行った。
ザル?
どうしてザルが必要なんだ?
木で編まれたザルの中には沢山の硬貨が入っている。
「ねーねー魔王知らない?知らないの?だったらせめて勇者北野様が魔王を倒す軍資金位出してくれるわよね?」




