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「早速だけど魔王様の為に死んでください」
そう頼まれてもはいと答える筈がない。
ジリジリと迫ってくる少年に私は少しずつ後ずさりして距離をとる。
「僕の必殺技をくらえ!」
少年はそう叫ぶと懐から取り出したナイフでなんと自分の腕を切り裂いた。
ボトボト流れ落ちる血。
ソレが地面に落ちる度にシュワシュワと音を立てて溶けていく。
私に向って腕を振り回し血を噴きかけようとするが距離があるせいで一向に届かない。
必死で腕を振り回す少年に私の方が悲しくなって来た。
「きちんとくらえよ!」
少年が叫ぶが私だって好き好んで危ないモノに当たりに行く筈も無い。
私は暴れまわる少年を無視して宿へ向って走り出した。
ふらふらとした足取りで少年は追いかけてくるがこの老いぼれの私にすら一向に追いつけない。
寧ろどんどん引き離している。
5分も走らない内に後ろからドサリと何かの倒れる音がした。
さっきの少年が倒れている。
真っ青な顔から見ても恐らく貧血で間違いない。
一応大人として放って置けないので少年の服を破って傷口を縛り日陰に放置しておいた。
もう残りも少ないが包帯や救急用品も買い足しておく必要があるな…
そんな事を考えつつ宿に戻って少し遅くなったが朝食を取る。
干した洗濯物は流石にまだ乾いて無かったので佐藤と合流した後、また買い物に繰り出した。
これで包帯もばっちりだ。
宿で洗濯物を取り入れ俺と佐藤は漸く魔王退治への道を歩み出した…
は良いが、魔王は一体何処にいるんだ?
佐藤に訊ねるも知らないの一言。
困った…だが一番弟子がこの町にいたという事はそう遠い所には居ないだろう。
私達はそう結論付けて町を出た。
「お前が北野だな!」
町を出て数分も歩かない内に髪の長い優男に声を掛けられた。
この展開は嫌な事を思い出す。
真正面に立ちはだかる男に黙って頷く。
すると男は口角をあげ嫌な笑いをして見せた。
間違いない敵だ。
確信すると私は竹刀を抜いて構える。
剣道なんてやった事も無い、だが見た事はあるので見よう見まねだ。
「俺こそが魔王さま腹心リーバだ!」
さっきは一番弟子だったな…
それだけ重要な人物がここに集まっているのだ魔王もきっと近くにいるのだろう。
それにしても来たばかりだと言うのに少々有名人過ぎないだろうか?
「私も家に帰りたい…悪いがこっちから行かせてもらうぞ!」
竹刀を力一杯振り下ろす。
ガスッ大きな音がしてリーバはソレを足の裏で受け止めていた。
「なんだ?」
それはリーバが足を高く上げて受け止めているのではない。
手が…足になっているのだ。
「ふっふっふ…驚いたか!俺の能力は手と足を入れ替える事なのだ!」
自信満々に威張るリーバだが手と足が入れ替わったと言う事は…
足の方に視線をやると手は届かないので右足だけで必死に踏ん張っている。
「わ…わわ…」
私が竹刀に少しだけ力を込めるとリーバはまるで棒倒しの棒のようにバタンっと真後ろへ倒れた。
…
「北野様流石ですぅ!」
目をキラキラさせて私の方を見る佐藤だが私はため息しか出ない。
本当にコイツは腹心なのだろうか。
とりあえず何も情報が無いので優男の腕と足を縛って隣に腰掛けた。
「なぁ…魔王は何をしたいんだ?」
やはり世界制服だろうか。
それともお姫様でも攫ったのか?




