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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-1章 裂かれる絆 ――政府首都グリードシティ――
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第3話 楽になれ、パトラー

 【グリードシティ】


 蒼天の空。白いビルに太陽光を反射する窓ガラス。色とりどりの看板。ビルや居住用の建物の間に植えられた植物。建物群の間にある歩道。大勢の人々が歩いていた。

 私はその一般の広い歩道を歩いていた。多くの市民とすれ違う。ネクタイをし、ブレザーを来た大人。会社員かな? 私服を着てはじゃぎ回る子供たち。その姿を見て微笑みながら後を追いかける大人。家族なんだろうな。


「ねぇねぇ! この前さ、……!」

「ハハハ、そうか、そうか。それなら俺もな、……!」


「今日は休暇を取ったんだ」

「へぇ、最近忙しいと聞いていたのによく取れたねぇ」

「そりゃ大変だったよ。上司に頭下げてさぁ……」


「あーっ、待ってよぉ!」

「へっへーんだ! 追いついてみろぉ!!」


「ねぇ、お腹すいたよー!」

「そうか、あのレストランで食事にでもすっか」

「お金大丈夫なの?」

「なぁに、この前給料入ったばっかだからな!」


 平和な光景だった。グリードの見慣れた光景だったけど、政府代表からあんな話を聞いた後だと、また違って見える。この光景が続くことを願わずにはいられない。

 私は街道に設けられた木製のキレイなベンチに腰掛ける。涼しい風が吹き抜ける。風がよく通るように設計されているんだな。光もよく当たるように計算されてるらしい。


「ねぇ、見て。あの子、政府軍人じゃないの? 服装からして政府の軍人さんだよね」

「まぁ、ホント! まだ子供なのに軍人って凄いねぇ」


 私は声のする方向に目が行く。2人のおばさんが私を見ていた。彼女らと目が合う。微笑んで手を振った。彼女達も返してくれた。そうやって返してくれると私も嬉しいな……。

 守る。この日常を、みんなの心を壊させない。壊れないように守るのが私の使命なんだ。みんな、頑張るよ! 全部私が守って上げるからね!


 フィルドさんの弟子になって2年。優しさだけじゃみんなを守る事が出来ない。だから、私は必死に自分を鍛えてきた。

 正直、とってもきつかったけど、みんなを守りたいし、フィルドさんのように強くなりたかったから頑張ってきたつもり。まだ、フィルドさんには追いつけないけど、いつか絶対に超えてみせる!



「フィルドさん、ホントに1人で行くのかな……。私って役に立たないのかな……?」


 昨日、言われたあの一言は今も心に大きくし掛かってる。「分かってくれ」だって。なんで関わっちゃダメなんだろ?

 実力が足りないから? 本当に足手まとい? 知られたくない事があるから? まさか、1人で手柄を……いや、それはあり得ないな。……じゃ、やっぱり力不足?


「理由ぐらい言ってくれてもいいのにな……」


 ……そういえばなんだか戦争の話をされてから様子が少し変だったな。上手く言い表せれないけど、とにかくなんか違和感あった。

 も、もしかして、戦争について知ってる? まさか、戦争が起きるのを知っていたのかな? ……もし、そうだとすると、戦争が本当に起きる……のかな……。





 グリードシティ軍事総本部の飛行場。そこに停まっている大型の飛空艇。その艦内に入って行く大勢の兵士たち。全員がアサルトライフルを持ち、別の入り口からは軍用兵器が運び込まれていた。

 収容完了した飛空艇から血の色をした空に飛び立つ。飛空艇もまた太陽の光を反射し、不気味なオレンジ色に光っていた。まるで炎の色だった。


[連合軍は市民を殺しながら、侵攻と勢力拡大を図っている! 連中を討ち滅ぼし、世界をもう一度安定にするのだ! 連中を容赦してはならん!!]




 戦場。大勢の人間の死体。市民と兵士と連合兵の死体だった。みんな体から血を流して死んでいた。別の方向に目を移せば、墜落した飛空艇。焼け野原と化した街。あの街の人々はどうなったんだろ……?


「パトラー」

「……フィルドさん!」


 後ろからかかる声、フィルドさんの声だ! 私は振り返る。その瞬間、ゾッとした。背筋に冷たいモノが走った。


「フィルド、さん?」


 少し赤のかかった髪の毛。黒色の瞳。血の付いた顔。彼女の来ている灰色の服にもたくさんの血がへばり付いていた。

 そして、右手に持つ剣は真っ赤に染まっていた。鋭い先端からは血がポタポタと地面に落ちていく。地面に血の水溜りが……。


「パトラー、お前がまだ生きているなんてな」

「え、え? フィルドさん?」


 フィルドさんは剣を大きく振る。剣の血が宙を舞う。その水滴が私の顔にもかかった。慌てて服の袖でその血を拭う。

 その隙にフィルドさんは私のすぐ目の前まで近づいてくる。拭い終わった時、彼女は剣を持ったまま、すぐそこまで来ていた。


「フィ、ルド……さん?」


 突然、私の体が持ち上げられる。自分の腹部に目がいく。赤茶色の剣が突き刺さっていた。その元々付いていた血の上からもっと赤い血がたくさん流れてくる。私、刺された……!?


「フィルッ、……ぐゥッ!」

「困ったよ、ホントにな。まさか政府代表に連合軍の事がバレてるなんて」


 ど、どういう事!? まさか、フィルドさん……!


「まぁ、いいさ。グリードシティごと吹っ飛ばしてやったから全て終わりだ。世界も私の復讐も、な」


 な、なんでっ? 何度も助けてくれたフィルドさんが何でッ!? 剣からフィルドさんの手や腕をも鮮血で赤く染めていく。私、死ぬんだ……。

 ……連合軍と関わりがあったからあの時、私を遠ざけたんだ。そういう事だったんだ。

 ふと見れば、フィルドさんは左手にハンドガンを持っていた。銃口の先は私の眉間……!


「楽になれ、パトラー」


 銃口から放たれた弾が私を――……!





「いやあぁぁぁッ!!」

「は?」

「え、え?」

「な、なんだ!?」


 私は走る。なぜだか分かんなかったケド……。走り出してすぐに誰かにぶつかった。その場に倒れ込む私と知らない人。相手はプラスチック製の白い装甲服を着ていた。


「何をするんだ!」

「え、えっと、あのっ……」


 見えるのはいつもと変わらないグリードの歩道。大勢の市民がコッチを見ている。そ、そうだ。私、フィルドさんに殺される夢見て……。夢、だよね? 夢だよね!?

 私は一声、そのグリードシティの警備兵に謝ると再び走り出した。フィルドさんッ、連合軍の人じゃないですよね!? 連合軍の人間という事がバレるとマズいから私を遠ざけたワケじゃないですよねッ!?


 首都グリードの地面の動く蒼いメインストリート。そこを駆け抜ける。向かう先は軍事総本部のフィルドさんの下へ、だった。

 怖いけど、確認しないと……! フィルドさん、お願いだから否定してくださいッ!!

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