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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3-2章 とある時代の終わり ――財閥連合・オーロラ支部――
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第38話 ハンター=ガンマ

 私たちが部屋の中央に辺りまで進と、突然目の前に大きなホログラムが現れる。映っているのは間違いなく財閥連合のコマンド代表。8年前、テトラル事件の時にも見た事がある。それと同じ人間だった。


[ようこそ……。我がオーロラ支部へ……]

「やっと登場か。コマンド代表」

[待ちわびておったぞ、フィルド将軍。お前がここに来ることは全てパトフォー閣下が予言されておったわ……]


 パトフォー……? ……そういえば8年前、私が実験体にされた時、そんな名前を聞いたような気がする。実験体とされた時の記憶はほとんど薄れていったが……。

 どうでもいいが私はもう将軍ではない。


「そうか。ならお前たちは予言されたにも関わらず逃げなかった大馬鹿者だな。ちなみに私は特殊軍副長官だ」

[ええい、あの女を殺せ! ハンター=ガンマの威力を存分に見せつけてやれ!]

[はい、代表……]


 別の男の声が聞こえてきた。たぶん、ここの施設長官、ネストールの声であろう。その男の声がしてすぐに天井が開き、白銀をした鋼の装甲に身を包んだ大男が降ってくる。コイツが新型生物兵器ハンター=ガンマか……。


[お前の戦闘能力は人工知能オーロラが全て把握している。そのハンター=ガンマもオーロラによって操られる生物兵器……。お前に勝ち目はない]


 そう言うとコマンドの姿は消滅した。戦闘上の判断は全て人工知能のオーロラが行い、実践はハンター=ガンマが行うのか。生物と機械の両兵器を掛け合わせた敵という事か。


[戦闘を開始します。ターゲット4名、ロック・オン。戦闘フォーメーション……スタート!]


 機械の声。ハンター=ガンマは刃が青色に光る剣――電磁ブレードを取り出す。激しい電気エネルギーを帯びた魔法の剣。グリップに魔法クリスタルを入れて作った物で、政府軍の軍用兵器開発部門が作り出した最新鋭の武器だ。あんな物、どうやって手に入れた……?


「来るぞ!」

[ターゲット1・ターゲット2・ターゲット3を確認。――破壊セヨ!]


 ハンター=ガンマは凄い速度で私の右側にいた兵士に近づき、電磁ブレードで彼を胸を刺す。彼を刺し殺すと同時にその近くにいた兵士の体を斬り裂く。一瞬の早業だった。

 私は素早くピューリタンの目の前に飛び込み、剣でヤツの電磁ブレードを防ぐ。防がれると、ヤツは素早く空中に飛び上がる。ハンター=ガンマは戦闘開始と共に背中に背負ったジェット機を起動させていた。あのジェット機を使い、一気に2人の兵士に近づいたのか……。


「ど、どうしましょう……?」

「叩き潰す!」


 私は空中に飛んだハンター=ガンマに向かって火炎弾とサンダーを飛ばす。2つとも命中した。更にその隙に大きくジャンプすると、剣を携えて彼の頭部を破壊しようとした。

 だが、ハンター=ガンマはジェット機を使い、横から私の脇腹を強く蹴り、天井に叩き付ける。激痛が襲う。天井に叩き付けられたその体は真っ逆さまに落ちてゆく。

 その隙を突いて、ハンター=ガンマはもう一度蹴りを入れる。今度は天井を向いた背中をを蹴られ、床に叩き付けられる。


「うぐッ!」

「フィルド閣下!」


 ピューリタンの声が聞こえる。私は激痛に消えそうな意識の中、必死に彼女の方を向く。ハンター=ガンマが彼女に急接近していた。そして電磁ブレードで彼女を斬り殺そうとする。

 彼女はその電磁ブレードを自身の剣で防ぐ。一般的な軍用の剣、アサルトソードで……。


「…………!」


 アサルトソードで防がれた電磁ブレード。それでも、無理やりハンター=ガンマは押し切ろうとする。その内、アサルトソードの刃は溶け出す。鉄の刃だったが、それが赤くなり、溶け出していた。

 アサルトソードの刃が溶け壊されると同時にピューリタンは素早く身をかがめる。もし、身をかがめていなかったら、彼女の首は斬られていただろう。


「クッ……!」


 ピューリタンは剣を捨てると、素早く横に飛んでハンター=ガンマと距離を取る。ハンター=ガンマは電磁ブレードを握りしめ、歩いて彼女に再び近づく。剣を失った彼女。次、攻撃されたら防ぎようがない。間違いなく死ぬ。


「ク、クソッ……!」


 私は自分自身を回復させると、ハンター=ガンマのジェット機に向かって破壊弾を撃つ。黒い魔法弾が飛び、彼のジェット機に直撃する。破壊弾は小さく爆発し、彼の体を倒す。爆発威力は小さいが、対象となったジェット機は歪み、炎を上げていた。衝撃弾のように余計に周りを巻き込まないのがこの魔法の利点だった。


「フィルド閣下!」


 ピューリタンが私の元に走り寄ってくる。その手にはアサルトライフルが握られていた。


「アイツの装甲を破壊しないと決定的なダメージが与えられません」

「だろうな。一点集中攻撃だ。頭部を狙え!」

「イエッサー!」


 ハンター=ガンマはその巨体を起き上がらせる。その体は完全に鋼の装甲で覆われていた。白色に薄い青色のラインが入った装甲。アレを砕かない限りはダメージを与えられない。

 私は自分魔法攻撃力を増強させる強化魔法を使う。それと同時にピューリタンにも物理攻撃強化の魔法をかける。


「撃て!」


 私の声と共にピューリタンはアサルトライフルの銃口をハンターC型の頭に向け、連射する。彼の頭部を覆う装甲から火花が散る。私は破壊弾を4つ、ハンター=ガンマの頭に向けて撃つ。アサルトライフルの銃弾と破壊弾。無数の攻撃が彼の頭部を攻撃する。

 突然、爆音が鳴り響き、火花と共に彼の姿は灰色の煙に消える。


「なんでしょうか……?」

「ジェット機で飛ぼうとしたんだろ。それを使おうとして自爆した。それよりも銃弾補充リロードしておけ」

「もうやっています、フィルド閣下」


 銃弾の補充を終えた彼女は再び煙に向かって銃口を構える。


「攻撃準備完了です」

「敵が現れたら一気に攻撃しろ。次、あの剣で攻撃されたら命はないぞ」

「イエッサー」


 煙が晴れる。黒いすすをつけたハンター=ガンマが現れる。頭部装甲にはヒビが入っていた。それを僅かに確認した途端、ピューリタンが銃撃を開始する。ハンター=ガンマも動き出す。

 だが、彼の向かった先は倒れた兵士の元だった。そうか、アイツ、彼の持っていたアサルトライフルを……!


「マズイ……!」


 私は慌てて自分たちに物理シールドをかけようとした。もうハンター=ガンマは落ちていたアサルトライフルを手に取ろうとしていた。間に合うか……!?

 だが、それよりも先に、アサルトライフルは火花を上げて遠くに飛ぶ。また、何度も狙撃され、それは壊された。


「ノー・プログレム、です」

「……よくやった」


 とっさにアサルトライフルを狙撃したのはピューリタンだった。彼女の持つアサルトライフルでそれを狙撃し、使わせないようにした。

 ハンター=ガンマはアサルトライフルを諦めると、今度は兵士のアサルトソードを奪おうとする。盗人か、アイツは。

 だが、ヤツが剣を抜き取った瞬間、爆発が起こり、剣と彼の体は別々の方向に吹き飛ばされる。ピューリタンの放ったハンドボムが爆発したのだ。


「ナイス!」


 私は倒れたハンター=ガンマの頭部を目がけて4発ほどサンダーを落とす。再び爆発が起こる。その爆発と共に雄叫びが上がる。ハンター=アルファやハンター=ベータとよく似た雄叫びだった。

 煙の中からハンター=ガンマが走って来る。その頭部の装甲は砕け散っていた。濃い灰色の皮膚が露出していた。


「よし! 後は楽そうですね、フィルド閣下」


 いや、確かに装甲は破壊したが、楽というのはちょっと……。そんな事を考えている内にピューリタンは先に走り出す。その手には魔法発生装置が握られていた。

 バカ! アイツはまだ電磁ブレードを持っているんだぞ! そう思った瞬間、ハンター=ガンマは電磁ブレードを再び起動させる。電撃音と共に青色く不気味に光る刃が現れる。


「し、しまった……!」

「グォォォ――!」


 ハンター=ガンマは雄叫びを上げ、ピューリタンに接近していく。私は自分の剣――デュランダルを握りしめていたが、それをハンター=ガンマの露出した頭面を目がけて投げつける。

 鋼色に輝くデュランダルは一直線に飛び、電磁ソードでピューリタンを刺し殺そうとしていた彼の額に深く刺さり、剣の先端が後頭部に残っていた装甲をも貫く。


「グ、ォッ……!」


 デュランダルを額に突き刺したハンター=ガンマは数歩よろけるが、すぐに力を失ったように倒れ込む。大量の血が床に流れる。財閥連合の開発した新型生物兵器ハンター=ガンマ。その呆気ない最期だった。

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