表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3-2章 とある時代の終わり ――財閥連合・オーロラ支部――
38/45

第37話 仲間 of フィルド

 【オーロラ支部 上層エリア】


 バトル=ベータは力を失ったように倒れる。オーロラ支部上層エリア。中層エリアにはほとんど軍用兵器はいなかったが、上層には多くの軍用兵器が配備されていた。……といっても下層エリアや外部エリアのように大量に配備されてるワケではないが。


「フィルド閣下、目的地まであとどの程度で着きそうですか?」

「だいぶ進んだ。残り僅かだ」


 ピューリタンの質問に答えると、私は剣や鞘にしまい、白い煙を上げるバトル=ベータの残骸が転がる廊下を歩き出す。もうすぐハンター=ガンマが配置されている部屋だ。


「パトラー准将、大丈夫でしょうかね?」

「……分からない」


 パトラーと出会ってもう3年になる。3年前、アイツが14で、私が将軍の地位に任命されてから間もない頃、彼女と出会った。出会った場所はグリードシティの軍事学校だった。当時、アイツはちょっとした悩みを抱えていた。それがキッカケで私の弟子となった。

 それから最初のミッションはサキュバスという魔物の討伐。散々な目に合ったが、そのミッションは成功した。辛うじて、だがな……。


「また階段、ですか」

「ここを登ればもうあと少しだ」


 アイツが15の時に巨大ゴブリンの討伐。これは比較的楽だった。でも、アイツの凡ミスが連続して危うい戦いになった。結果的には成功したが……。

 16の時、つまり1年前はオロチ討伐。コスーム大陸南部の深い森林でのミッション。危うくアイツが丸呑みにされそうになった。そして、12月の政府代表からの密命。そこで聞かされた連合軍のこと。そのせいでアイツと喧嘩した。

 今年はクロント支部での事件。連合軍の事は何もかも吹き飛んだが、残ったものから財閥連合の軍用兵器・生物兵器の証拠が見つかった。そして、私のクローンであるデミ・フィルドと“仲間”になった。


「…………ッ」

「……どうしました?」


 兵士の1人が聞いてくる。私は「何でもない」と素早く答え、歩く速度を少し早めた。……少し泣きそうになった。

 デミ・フィルドはもう……いない。サレファトらの首都強襲の翌日私の目の前で死んだ。最後の言葉は「ありがとう」だった。

 クローンである自分を、オリジナルである私に1人の人間として、大切な仲間として接してくれてありがとう、だった。


「到着しました、が……」

「ロックされているようですね……」

「パスコードを解析し、扉のロックを解除しろ」

「イエッサー」


 パトラーがいなくなり、デミ・フィルドが死に、私の周りから、仲間はいなくなった。もし、パトラーがすでに殺されていたら、私の周りには本当にもう誰もいない。

 私は胸が締め付けられるような感覚を覚える。目頭が熱くなる。アイツと暮らした3年が再び頭を駆け巡る。アイツを失いたくない。側にいて欲しい。一緒に、ずっと一緒にいて欲しい。


「まだ?」

「申し訳ありません、ピューリタン准将。厳重なセキュリティがかかっておりまして……」


 私はパトラーを失ったらどうなるのだろう? 胸にある悲しみは怒りに変わり、全てを滅ぼすのだろうか? 殺戮騎にでもなるのだろうか?


「残り僅か、です」

「早くしないとまた軍用兵器がやってくるぞ」

「申し訳ありませんっ……」


 ふと、サレファトとサルリファスの顔が思い浮かぶ。2人は財閥連合の人間だった。パーフェクターで、私の仲間であるデミ・フィルドを殺そうとした。

 私はその無意味さと財閥連合の真の目的に気付いた。それを2人に教えた。だが、それでも私は2人を殺そうとした。2人はまだ子供だった。なのに、怒りと憎しみの下、殺そうとした。

 きっと、パトラーが捕えられ、デミ・フィルドが死にかけ、内心恐怖を抱いていたのだろう。仲間を失う恐怖と焦りが……。


「……まだか?」

「ピューリタン准将、そうかさないで下さい……」


 私はパトラーやデミ・フィルドといった仲間を得ることで弱くなるのだろうか? パトラーは私の大切な仲間だが、彼女を得て弱くなったのだろうか? 失うことへの恐怖があまりに大きいのだろうか……?

 でも、例え弱くなっていようが、彼女らと出会わなければよかったとは到底思えない。この3年、彼女と一緒にミッションを遂行したり、一緒に行動出来てよかった。悔いはない。


「……ロック解除!」


 白色の金属製をした扉にかけられていたロックは解除される。扉上部の横長のランプは赤から緑に変わり、扉は左右にスライドして開く。


「…………。よし、行こう」


 私は開いた扉を通り、鋼色をした細長い廊下を歩く。この先に財閥連合の開発した新型生物兵器ハンター=ガンマがいる。その奥に人工知能オーロラ。ウワサではオーロラこそが財閥連合の支配者らしい。

 ソイツを破壊すれば、財閥連合は終わりだ。全ての軍用兵器は停止し、私たちの勝ちとなる。そして、パトラーを助ける事が出来る。

 あと少しだ。ここまで長かったが、もう終わりだ。財閥連合が倒れれば連合軍も終わりだ。私を実験体にした財閥連合・連合軍の終焉は、……近い。


 細長い廊下の先、最後の扉が見えてきた。ロックはかかっていない。私達が近づくと、その扉は自動的に開かれ、クロント支部で見たあの広いドーム状の空間と似たような空間に出た。白い壁と天井。薄い水色をした床。ここに新型生物兵器ハンター=ガンマが……。















































 いよいよ、決戦だ。財閥連合を終わらせ、パトラーを救い出す――!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ