第35話 オーロラ支部侵攻
――EF2010.12.20 深夜 【中央大陸北東 コールド州 オーロラ地方 上空】
今、財閥連合はその息を止められようとしていた。
首都グリードシティでの騒乱は政府を動かした。
騒乱から3日後、政府はフィルド=ネストを総指揮官とした大軍を編成し、彼らの最後の砦・オーロラ支部への攻撃を命じた。
財閥連合は間もなく終焉を迎える。
だが、それと共に暗黒の凶魔が静かに動き出していた。
終焉は新たなモノの始動でしかない――……
◆◇◆
真っ暗な空、雪の降り注ぐ深夜、大型の飛空艇から小型の飛空艇が飛ぶ。それらの飛空艇には政府の紋章が描かれていた。これらは政府特殊軍の軍用艦隊だ。
私は窓から今はまだ遠くのオーロラ支部を見る。不意にオーロラ支部の方から砲弾が飛んでくる。それは真っ直ぐ私の乗る旗艦プローフィビを狙っていた。爆音。艦は僅かに揺れる。
「フィルド閣下、敵軍の攻撃です」
「反撃だ。全艦に反撃命令を出せ」
「イエッサー」
その将官は無線機を使い、他の飛空艇に司令を出す。司令を受けた艦艇から砲弾が撃ち飛ばされる。撃ち出された砲弾は遠くに落ち、爆発する。
だが、財閥連合軍側からも次々と反撃の攻撃が始まる。無数の砲弾が飛んでくる。1機の小型戦闘機が撃墜され、雪原に炎を上げて墜落する。
「散開しろ! 固まるな!」
「イエッサー」
旗艦の周囲に集まっていた飛空艇や戦闘機が一気に散開する。これで私の乗る旗艦の周りにある飛空艇は中型飛空艇3隻となった。
兵士を乗せた中型飛空艇やガンシップ、戦闘機はバラバラに動き、オーロラ支部を攻撃する。オーロラ支部からは次々と炎が上がる。
[こちら、第1軍。オーロラ支部正門突破致しました。これより地上戦に出ます]
「了解。一気にかかれ。捕虜となっているパトラー=オイジュス准将を救出せよ」
[イエッサー]
パトラーはこのオーロラ支部の奥深くに捕まっている。早く救助しないと……。きっと拷問されてるかも知れない。情報を求められてるハズだ。
――パトラー……。あと少しだ。もう少しでお前の元に行くから、もう少しだけ待ってくれ!
「フィルド閣下」
「なんだ?」
「第2軍、第3軍がオーロラ支部に攻め込みました」
「そうか。一気に連中を駆逐しろ」
「閣下! 敵軍の飛行兵器です!」
私はモニターを見る。いくつかの戦闘機やガンシップが襲われていた。襲っているのは大量の小型の軍用兵器だった。新型の軍用兵器か……。
ブーメラン型をした中型の軍用兵器。両端から銃弾が飛ぶ。プロペラのないところを見ると、魔法で浮かんでいるのだろう。
「小隊攻撃機フェンサーを全機解き放て!」
「イエッサー!」
命令を受けたその将校は素早くコンピューターを操作する。あの程度の飛行兵器ならフェンサーを向かわせれば十分だろう。
私は窓を見る。暗闇を飛んでいく何十機ものフェンサーの姿が見えた。フェンサーは青色の電撃を帯びた刃物状の右手を上げ、空を飛ぶ飛行兵器を攻撃していく。
「フィルド閣下、着陸地点に到着しました。これより、本艦を着陸させ、全軍を出撃させます!」
「……クォット将軍、ディンター将軍、プトレイ将軍、スロイディア将軍に指揮を行えと連絡しろ」
「イエッサー」
私は彼らに背を向け歩き出す。部屋を出て行く時、出撃許可を高く上げた手で合図した。私も出る気でいた。この手でパトラーを助けたい。あの子を巻き込んだのは私のせいだっ……!
*
【オーロラ支部 外部】
私は1人乗りの軍用スピーダーに乗り、オーロラ支部の外部エリアに侵入する。後ろから付いて来るのは2人の准将と12人の特殊軍精鋭兵だった。私でも1人ではキツイ。施設内には何があるか分からないからな。
「フィルド閣下、あそこから施設内に侵入出来そうです!」
准将のピューリタンが指を指しながら言う。彼女の指の指す方向には確かに小さな入口があった。あのピンク色の電磁シールドを破壊すれば入れそうだが……。
「ピューリタン、排気口から中に侵入して解除しろ」
「イエッサー!」
ピューリタンはスピーダーを進めると出入り口のすぐ近くにある排気口に辿り着く。そしてアサルトライフルを手に中へと入って行った。
彼女が中に入って数分、ピンク色の電磁シールドが解除される。それと同時に私は手で他の部下に合図し、大きな半円上の床に着陸する。
「よし、行くぞ!」
「イエッサー!」
私は13人の部下を引き連れ、施設の内部へと入る。出入り口でピューリタンと合流すると警報の鳴り響く金属とコンクリートで出来た灰色の廊下を走る。
私は最初の角を曲がる。その瞬間、目に飛び込んできたのはバトル=コマンダーを先頭としたバトル=アルファの隊列だった。
[あ、敵兵だ! 殺せ!]
先頭のバトル=コマンダーの合図と共に後ろにいたバトル=アルファたちが一斉にアサルトライフルの銃口を向け、射撃を開始する。
私は剣を引く抜くと、銃弾を避けながら素早くバトル=コマンダーに近づき、彼の首を斬り壊す。バトル=コマンダーは火花を散らしながら、倒れ込む。
「撃てッ! フィルド閣下を援護しろ!」
私の後ろにいる部下たちは一斉に射撃を始める。飛んでくる銃弾がバトル=アルファを打ち壊す。私も魔法を飛ばし、バトル=アルファを破壊してゆく。所詮は安い金属と簡単な構造のバトル=アルファ。ほぼ一撃で破壊出来る。
「ぐぁぁッ!」
「クソッ! 撃ちまくれ!」
私は強力な衝撃弾を飛ばし、残り僅かとなったバトル=アルファを一気に破壊する。耐久力は無に等しい彼らは一瞬で倒れ、二度と動かなかった。
「フィルド閣下、兵士1名死亡」
「……そうか」
グルー准将が私の元に近寄ってきて報告を入れる。これで残りは兵士11名。准将2名。もっとも他の場所からは何千という精鋭兵が侵攻していっているのだが……
「この先にデータセンターがあります。そこで情報を収集してはいかがでしょうか?」
「……そうだな」
私は剣を腰の鞘に収めると、再び歩き始めた。後ろには部下が続く。
オーロラ支部を制圧するのは簡単だ。だが、障害がある。それは新たに開発されたという“2体の生物兵器”だった。
◆クォット
◇国際政府特殊軍の大将。
◇親衛騎士部隊の長官。
◇実は8年前(=EF2002年)フィルドの師でもあった。
◆ディンター
◇国際政府特殊軍の大将。
◇保安部隊の長官。
◆プトレイ
◇国際政府特殊軍の大将。
◇掃討部隊の長官。
◆スロイディア
◇国際政府特殊軍の大将。
◇強襲部隊の長官。
◇パトラーが尊敬する人物でもある。




