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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3-1章 哀しき裏切り ――政府首都グリードシティ――
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第32話 連隊攻撃機ジェネレーター

 【グリードシティ 中央エリア 下層部】


 上層部の公園から中層部を狭い道を通り、私とサレファトは再び下層部へと降りる。特にバトル=アルファが出現したのはあの公園だけらしく他では騒ぎは起きていなかった。

 私とサレファトは下層部に出ると、再びメインストリートを走る。そこをしばらく走っていると、遠くに1人の黒い装甲に身を包んだ男が現れる。


「姉さん!」

「……パトフォー閣下?」


 私たちがパトフォーに近づくと、彼の姿は闇と共に突然消える。そして、少し遠くに再び現れる。まるで私たちを導くように……。

 でも、その次に彼が現れたのは政府特殊軍の兵士や軍用兵器の後ろだった。音もなしに現れた彼に、誰も気がついていない。彼らの視線は私たちだった。


「来たぞ!」

「これ以上連中を進ませるな!」

「確実に仕留めろ!」


 特殊軍の強襲部隊の兵士たち! 後ろにあるのはフェンサーに似た軍用兵器。でもその体の色は真っ赤だった。たぶん、フェンサーより上級の軍用兵器……!

 強襲兵たちが一斉に射撃を始める。けたたましく銃撃音がなり、凄い数の銃弾が飛ぶ。私は途中で拾ったアサルトライフルの銃口を向け、彼らを撃とうとした。

 だが、それよりも前に彼らの頭上に数十本の小さな雷が降り注ぐ。激しい振動と電撃音。強襲兵たちは宙に舞い上がり、地面に叩き付けられる。


「サレファト……」

「僕だって戦いますよ」


 私は再び前を向く。やられた強襲兵達がフラフラと立ち上がる。後ろのフェンサー似の軍用兵器に至っては動じもしてない。サレファトの攻撃でもダメージが少ない。強襲部隊は特殊軍の上級部隊だ。今まで戦ってきた掃討部隊や駆逐部隊の兵士たちとはワケが違う。


「クソッ、やってくれるぜ!」

「この程度でやられるかよ」

「お前ら早く起きろ!」


 私は彼らが完全に起き上がる前にアサルトライフルの銃口を向け、一気に射撃していく。サレファトも再び攻撃する。電撃と銃撃が上がり、辺りを激しく振動させる。

 だが、それと同時に軍用兵器を巻き込む巨大な火柱が上がり、強襲兵たちの体が舞い上がり、地面に強く叩き付けられる。


「パトフォー閣下……!」


 渦巻く炎の向こうでニヤリと笑うパトフォー。彼はそのまま闇に包まれ、再び姿を消す。私はサレファトの手を掴んで彼の後を追う。

 そこで初めて気付いた。彼の進路方向は私たちの目的地と同じだってことを。何の為に誘ってる? 何が目的なんだ……?


「ぐぁッ!」

「ぐぇッ!」


 私たちはパトフォーの後を追いかける。彼はメインストリートで待機する強襲兵やその更に上の部隊である精鋭部隊の兵士たちをも倒していく。全て魔法で一発だった。彼、相当強力な魔力を有してるらしい。


「ここから先は行かせない!」


 近くの路地から槍を持ち、灰色のコートを着た将校が現れる。私は危うく斬られそうになるが、間一髪で避ける。避けた瞬間、その将校の後ろから一筋の雷が飛んでくる。


「あぐッ……!」


 雷はその将校の胸を貫く。一声、苦しそうな声を上げるとその場に膝を付き、崩れるように倒れる。帽子が転がる。まだ若い女性の将校だった。


「そんなっ……! 女の人なのに……」


 サレファトが悲しそうな声で呟く。さっきの電撃はパトフォーが放ったものか……。私は泣きそうなサレファトの腕を無理やり引っ張って先に進む。

 それにしてもパトフォーは私たちを助けているのだろうか? 何の為に? ただ単にミッションを成功させる為だけに、だろうか……?


「ぐぁぁッ!」

「こいつ!」


 パトフォーは次々と魔法で兵士や将校たちを倒していく。私とサレファトが追いつきそうになると彼は姿を消し、少し離れた所に現れる。

 確かにこのミッションは大事らしいけど、そんな事をするなら自分でそのターゲットを消してもいいだろうに、と思う。


[敵生体を発見。排除します]


 目的地まであと僅かという所で一台の軍用兵器が目の前に立ちはだかる。四足歩行をする銀色の軍用兵器。人間が両手両足を地面に付けたような感じだった。確か“連隊攻撃機ジェネレーター”だったかな?

 勝手に私たちが通ってきた道が黄色のシールドによって塞がれる。これでもう撤退する事は出来ない。まるで仕組まれた罠のようでもあった。


「姉さん……!」

「やるしかない!」


 私はブラックホール・ボムを撃つ。それは斜めに飛び、ジェネレーターを吸収すると、大きく爆発する。ジェネレーターは音を立てながら吹き飛び、地面に転がる。

 だが、完全には壊れなかったらしく、煙と火花を散らしながら再び動き出す。動き出す前に数本の雷がジェネレーターの体に落ちる。サレファトの攻撃だ。


「ど、どうだ……?」


 ジェネレーターは膝を付き、倒れそうになる。だが、その体から小型のミサイルを飛ばす。それは空中で曲線を描きながら私達の近くに落ちる。爆発が起こり、私とサレファトは吹き飛ばされ、後ろのシールドに背をぶつける。


「クッ……!」

「まだ動けるなんて……」


 ジェネレーターは火花を散らしながらもまた動き出す。4本の脚で私たちの前に走り寄ってくる。前2本の脚の付け根からはマシンガンが姿を見せていた。

 サレファトが素早く電気シールドを張ると、マシンガンを狙って電撃を撃つ。私も魔法弾を飛ばす。サレファトと私、2つの魔法はそれぞれ左右のマシンガンに直撃する。


「やったか!?」


 左右のマシンガンは爆発する。中にあった銃弾と共に。だが、それでもジェネレーターは近づいてくる。よく見ると、前足の間にある頭部から1本の鉄の管が姿を見せていた。

 そこから一筋の光が飛ぶ。飛ぶ先はサレファトだった! 一瞬でその光は私の弟目がけて飛び、爆発する。私も熱風に煽られる。


「サレファト!」


 私は徐々に晴れていく煙に向かって叫んだ。サレファトは煙の中で倒れていた。シールドが消えている。そんな、まさか……!

 気を失った弟の側にジェネレーターが近寄る。そして、太い足で彼を踏みつぶそうとした。


「させるか!」


 私は再びブラックホール・ボムを撃つ。黒い塊がジェネレーターに向かって飛ぶ。ブラックホール・ボムを撃ったと同時に私は走り出す。サレファトの元に。あの位置だと巻き込まれる……!

 ジェネレーターの足がサレファトにトドメを刺そうとした時、その鋼の巨体はブラックホール・ボムの中に吸い込まれ出す。

 私はサレファトの体を抱き寄せ、彼が張ってくれたシールドの中に引き寄せる。そして、私自身もブラックホール・ボムの中に吸い込まれていく。


「クッ……」


 彼の張ったシールドでブラックホール・ボムに耐えられるだろうか? もし耐えられなかったら2人とも死だ……!

 ブラックホール・ボムの中に吸い込まれる。中は激しい魔法の雷と青黒い雲で覆われていた。どっちが上でどっちが下なのか分からなかった。

 一瞬、目の前が真っ白になる。私はサレファトを強く抱き締める。


「サレファトっ……!」


 突然、固いものに強く頭や体を何度も打つ。そこで初めて気がついた。私達はブラックホール・ボムから弾き出された事に。体を何度も打ちつけたのは地面だ。私達は再びどしゃ降りのグリードシティ軍事総本部に出た。


「ね、姉さんっ……」

「サレファト!」


 サレファトは弾き出されたショックで気がついたらしい。彼を抱きしめながら、立ち上らせる。辺りを見れば少し離れたところでジェネレーターが炎を上げて倒れていた。完全に壊れたらしい。


「姉さん……」

「あと少し、だから……」


 私は弟の顔や服についた汚れを指で拭き取ると、少しだけ微笑んでみせる。もうターゲットがいる場所はすぐ近くだ。やったここまで来れた。あと少しで……。


「よく来た。久しぶりだな」


 突然、後ろから、つまり私たちの進む方向から声が投げかけられる。この声は……!


「姉さん、あの人ですよ!」

「分かってる……」


 私は振り向く。剣を持った1人の女性が立っていた。刃の部分が赤と黄色の光を反射させていた。赤茶色の髪の毛をし、同色の瞳をした女性――フィルド=ネスト!

◆連隊攻撃機ジェネレーター

 ◇国際政府特殊軍が所有する攻撃型軍用兵器。

 ◇一度に一個連隊(3840名)を相手にすることが出来る。


◆中隊攻撃機パーシュアー

 ◇国際政府特殊軍が所有する攻撃型軍用兵器。

 ◇一度に一個中隊(240名)を相手にすることが出来る。

 ◇類似の軍用兵器に小隊攻撃機フェンサーがある。


◆ルーシー

 ◇国際政府特殊軍精鋭部隊准将。

 ◇槍を武器に戦う女性軍人。

 ◇作中ではパトフォーに一撃で倒されたが、まだ生きている。

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