第29話 ブラックホール・ボム
僕と姉さんは雨の降り注ぐ軍事総本部を走り続けていた。すでに人々はいなくなり、至る所が魔法シールドで封鎖されていた。僕らが走っているのはメインストリートだった。
しばらく走っていると、メインストリートから大きな広場に出た。周囲を取り囲むのは高い建物群。全て政府関係の建物だ。
僕らがそこを走り抜けようとした時だ。突然、上空からおびただしい数の軍用兵器が降りて来た。また、建物からも大勢の兵士が出てくる。警備軍精鋭部隊の兵士と特殊軍駆逐部隊の兵士たちだ!
「ね、姉さんッ……!」
「クッ……!」
上空から降りて来たフェンサーが4機。ジェット機を背負い、空中に浮かぶ特殊軍兵士と地上の警備軍兵士・特殊軍兵士はあまりの多さで数えきれない。
兵士は全員がアサルトライフルを装備している。中にはロケットランチャーやグレネードランチャーといった大砲を持っている兵士もいた。
[シリオードの帝族いえど、今はただの重罪人! 子供といえど油断するな! 確実に仕留めよ!!]
上から声が聞こえてくる。左右にガトリングガンを装備した戦闘ヘリが飛んでいた。恐らく声の主はあの中に……。
「ど、どうしよう……!」
「シールドを張って! 雷でヘリを撃ち落して!」
姉さんはそう言いながら手に強力な魔法を溜めていく。僕は姉さんに言われるがままにする。2人に物理・魔法シールドを張ると、続いて戦闘ヘリに向かって一本の雷を落とす。戦闘ヘリは雷を喰らい、バランスを崩して炎上する。が、墜落はしなかった。
「喰らえッ!」
姉さんが藍色の魔法弾を飛ばす。それは大勢の兵士たちがいる方向に向かって飛んでいくと、突然巨大化し、大勢の兵士たちや軍用兵器を巻き込み、吸い込んでいく。
それと同時に姉さんは僕の手を掴んで走り出す。落ちていたアサルトライフルを手に取ると、兵士たちに向かって射撃しながら、走る。
「ぐぇッ!」
「殺せッ!」
「ぐぁッ!」
「撃て、撃ちまくれ!」
兵士たちも一斉に射撃を始めていた。四方八方から射撃され、凄まじい銃撃音と共におびただしい数の銃弾が飛んでくる。
走っている時、爆発音が鳴り響き、コンクリートの地面が大きく揺れ、兵士や軍用兵器が飛んでくる。姉さんの放ったあの魔法弾が効果を発揮したらしい。アレは大勢の敵を巻き込み、吸収し、爆発を起こすというものだ。
「急ごう!」
「わ、分かってますよ! “サンダー”!」
銃弾や兵士・兵器が宙を舞い、飛んでくる中、僕も電撃弾やサンダーを撃ちながら次々と兵士を倒していく。悲鳴や怒号、爆音や電撃音が鳴り響き、首都グリードの軍事総本部は戦場と化す。
「どけ!」
「ぐぁぁッ!」
「死にたくなかったら……」
「喰らえッ! ガキども!」
「道を開けろッ!」
「ぐぇッ!」
姉さんはアサルトライフルを乱射し、とにかく兵士を撃ち殺していく。僕も同じように電気魔法で次々と兵士を倒していく。なるべく気絶程度に抑えているけど、これじゃ手加減が出来ない。本当は殺したくはないのに……。
[敵生体を排除します!]
突然、僕は右から激しい衝撃を受け、姉さんと離れてしまう。見ればフェンサーがそこにいた。ジェット機で飛んできて、体当たりされたんだろう。僕の体はその場に倒される。
「殺せ!」
数人の兵士が僕の目の前でアサルトライフルの銃口を向ける。僕は素早く顔を腕で覆う。銃撃音。腕に痛みが走る。そして、また銃撃音。兵士の悲鳴が上がり、生温かい液体が僕の腕に付く。姉さんが遠くから彼らを射殺した。
「“エレキロケットランチャー”!」
僕は腕に付いた血を拭う暇もなく、カッターを振り上げて近づいてきたフェンサーに向けて電気魔法のロケットランチャーを放つ。それはフェンサーの丁度腹部に直撃し、爆発。粉々になった。
フェンサーを破壊したと同時にまた凄まじい爆音が鳴り響く。遠くの方を見ればあの魔法弾が2つもあった。あの魔法、ブラックホール・ボムを一気に2つも……。
「姉さん、魔法を使いす――! …………!」
1つのブラックホール・ボムが爆発し、大勢の兵士と共にフェンサーや彼らの持っていた武器が一気に飛び出す。それと一緒に炎を上げる戦闘ヘリも飛んできた。それは僕のすぐ横を飛ぶ。
僕はつい、身構える。当たるかと思った。が、戦闘ヘリは僕には当たらず、大勢の兵士がいる所に墜落し、爆発する。大勢の兵士の悲鳴が上がり、再び地面が揺れた。
「サレファト!」
姉さんの声が聞こえてきた。僕はその声のした方向に向かって走る。途中で群がってくる兵士はサンダーで次々と倒す。
「急ごう。けっこう倒したけど、また群がってくる!」
「う、うん」
僕と姉さんは惨劇の広場を後にする。ふと後ろを振り返る。空から小型の戦闘用飛空艇が近づきつつあった。その横には戦闘ヘリが2機も。
ここは政府軍の本拠地。敵なんて無限に湧いてくる。それにもっと強い軍人、特殊軍の将軍や最新鋭の軍用兵器も。
「姉さん、僕ら……」
「大丈夫。何もセントラルタワーに攻め込むワケじゃないハズだから……」
セントラルタワーにいけば特殊軍最強の部隊である親衛騎士部隊に遭遇するだろう。もはやあの部隊になると一兵一兵が尋常じゃない強さを誇るらしい。
僕はセントラルタワーに攻め込むという最悪の事態にならない事を祈りながら、再びメインストリートを走る。
街は赤と黄色の2色でいっぱいだった。全ての電光掲示板に警告のマークとメッセージが表示され、警報音が鳴り響いていた。
◆政府特殊軍親衛騎士部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◇政府代表や政府総帥らの身辺警護を行う。
◇1人1人が非常に強い。
◆政府特殊軍精鋭部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◇セントラルタワーや中枢施設の警備、元老院議員や官僚の警護を行う。
◇少し前まで管理官はフィルドだった。
◆政府特殊軍強襲部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◆政府特殊軍駆逐部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◆政府特殊軍掃討部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◆政府特殊軍鎮圧部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。
◆政府特殊軍保安部隊
◇国際政府特殊軍の一角を担う部隊。




