表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-1章 裂かれる絆 ――政府首都グリードシティ――
3/45

第2話 実験体にされた少女

※前半はパトラー視点です。

 一瞬、政府代表がフィルドさんに何を言っているか分からなかった。平和が……終わる?


「…………。マグフェルト閣下、いまいち意味が分かりませんが……」

「だろうな。わたし自身これは信じられないのだ。だが、“連合軍”と名乗る者たちが存在し、彼らが世界を統治する我々“国際政府”に対して反乱を起こそうとしているのだ」


 そ、そんな話、聞いた事がない……! でも、淡々と語る政府代表がウソをついているとは思えない。じゃぁ、本当に世界の平和がなくなって戦争が始まっちゃう!?


「わたしも信じられぬし、まだ正確な情報でない故、おおやけにすることが出来ん。それに連合軍という組織すら存在せぬかも知れぬ」


 だよね!? そんな危険な組織が存在しているんならもう知れ渡ってるよね?


「だが、もし存在するのであればこれは一大事。何としてでも奴らが戦争を起こす前に逮捕せねばならぬ」

「その任務を私に……」

「うむ。連合軍の施設はクロント地方にあるらしい」


 クロント地方って確か大陸の南東にある地方だったよね。広大な草原が広がっているらしいケド。もしかして草原のど真ん中に基地が……。


「これは極秘任務だ。他の官民には一切喋ってはならぬぞ」

「はい、マグフェルト閣下」


 そう言うとフィルドさんは深々と頭を下げる。私もそれに少し遅れて頭を下げる。っと、少し遅れちゃったな。まぁ、いいんだけど。

 礼をし終えると、フィルドさんはクルッと向きを変えて元来た道を引き返す。私もその後に続いた。



 【グリードシティ セントラルタワー】


 政府代表のオフィスを出て私とフィルドさんはエレベーターに乗った。乗ってすぐ、私は左手で右腕をそっと押さえているフィルドさんに聞いた。(フィルドさんは左手で右腕を握るのがクセなんだよね)


「さっきの政府代表の話、どう思います?」

「…………」

「フィルドさん?」

「え? ああ、すまない。……で、何だ?」


 え? 聞いてなかった? しっかり者のフィルドさんにしては珍しいな。もしかして寝不足なのかな? 大丈夫かな? 心の中でフィルドさんを気遣いながら私はもう一度同じ質問をする。


「そうだな、連合軍の話は簡単には信じられない、よな。その真偽を調べるのが私“の”今回の任務だ」

「……私“の”?」


 フィルドさんは明らかに“の”を強く強調して言った。私のってことは間接的に「お前は付いて来るな」って言いたいのかな……?


「あの、私は?」

「……今回は付いて来るな」

「な、なんでですか!?」

「…………」


 今までそんなことは言わなかった。どんな任務でも「経験は大事」って言って私を連れて行った。来るななんて言われたのは今回が初めてで、正直ショックだった。


「なんで、なんですか?」

「…………」

「フィルドさん!」

「…………」

「私が弱いからですか?」

「違う。そんな事はない。お前は本当によく頑張っている」

「だったらなんで!?」


 フィルドさんは何か隠している。それくらいはすぐに分かった。それを無理やり聞くのはどうかと思うけど、聞かずにはいられない。何としてでも聞きたかった。


「…………」

「……無理やり付いてっていいですか?」

「ダメだ。それは絶対に許さん」

「じゃ、理由くらい教えて下さいよ」

「…………。……前回ヘビに丸飲みされそうになっただろ? あんなことはもうごめんなんだ」


 ウソだ。今、答えるまでにかなり時間かかった。これは適当に言っただけだ。それにこれは遠まわしに私が弱いって言っているようなものだ。さっきフィルドさんは私が弱いことを否定した。


「フィル――!」

「パトラー、分かってくれ」


 そう言ったのとほぼ同時にエレベーターの扉が開くとフィルドさんはさっさと出ていてしまう。分かってくれって、そこまで言われるなんて……。

 私はエレベーターの中でその言葉を何度も頭の中でリピートしていた。分かってくれ、分かってくれ……? そこまで言うなんてよっぽどの事があるんだろうか?

 そんな事を思っていると私が降りない内にエレベーターの扉は閉まって動き出してしまった。


「あっ……」


 時すでに遅し。エレベーターは下に向かって進み出してしまった。



◆◇◆



 【セントラルタワー フィルド専用オフィス】


 部屋に戻った私はイスに座り込む。

 連合軍……。もう平和な時代は終わるかも知れないな。国際政府が作り上げ、守ってきた平和は終わりだ。私は左手で自分の右腕を握る。


「…………」


 フラッシュバックする“あの記憶”。曖昧な混沌とした記憶。私は16歳の時、実験体にされた。実験体にした者たちの目的は忘れた。彼らによって記憶を消されたからだろう。

 どちらにせよ人間を実験体にする組織は確かに存在する。そんな組織が存在する以上、平和なワケがない。

 この数年、彼らが何をやっているのかは知らない。もしかしたら政府代表の言うように戦争の準備をしているのかも知れない。生き物をベースにした兵器――“生物兵器”を開発して……。


「パトラー、お前はこの件には関わるな。お前を巻き込みたくないんだ……」


 パトラーが捕まれば、彼女もまた人体実験にかけられるかも知れない。あの日の気の狂いそうな苦痛と恐怖と味合わせたくはない。だから、関わらないでくれ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ