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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-2章 交差する絆 ――コスーム大陸――
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第15話 処分

 【グリードシティ 軍事総本部】


 夜の軍事総本部。高いビルが連なり、装甲服を着た大勢の政府軍人が行き来する所。空中を幾つもの飛空艇が飛び交う。

 私はヘリポートに着陸した飛空艇から降ろされる。周りを特殊軍の駆逐兵が取り囲み、私を連行していく。

 私の周りだけでなく、取り囲む兵士の周りには更に上級の部隊である精鋭兵までいた。彼らは2列に整列して待っていた。列と列の間を開け、私はそこを進んでいく。


 私、逮捕されちゃうんだ……。フィルドさんともお別れ。犯罪者として、世界の秘密を探った者として消されてしまうのかも。


「政府代表マグフェルト閣下。封鎖区域テトラルへの侵入者を連行してきました」


 隊列の奥にいたのは政府代表のマグフェルトだった。思えば1ヶ月ほど前、彼は私とフィルドさんに密命を下した。その時の光景が懐かしく頭を駆け巡る。戻りたい。やり直したいっ……!

 政府代表の後ろには、黄金色をした鋼の装甲服を着た守護騎士たち。黄金の大きな槍を持ち、紅のマントを纏った2人は見る者を威圧する。


「ご苦労。彼女はわたしが取り調べる。後ほど元老院から特別手当を送ろう」

「有難う御座います、閣下」


 私を連行した軍の将校が一礼をすると、サッと背中を向け、キビキビとした動きで駆逐兵を従えて飛空艇に戻っていく。

 彼らが飛空艇に戻ると、今度は政府代表に誘導される。ヘリポートからセントラルタワー内へ。その周囲を固めるのは4人の守護騎士。私がどう足掻いても勝てない相手だ。

 セントラルタワーに入り、しばらく歩くとエレベーターが見えてきた。密命を下されたあの日、乗ったエレベーターと同じヤツ。私たちはそれに乗り込み、上へと向かう。


「あのっ、どこへ……」

「わたしのオフィスだ」


 政府代表のオフィス? てっきりセントラルタワー内の尋問室に連れて行かれるのかと思っていた。なんで政府代表のオフィスに……?

 そんな事を思っている内にエレベーターはセントラルタワーの最上階に到着した。扉が開き、豪華な模様が施された廊下。赤いじゅうたんの敷かれた廊下。美しい花の絵画がかけられた廊下が視界に入る。


「さ、行こう」


 私と政府代表は廊下を進む。4人の守護騎士は付いて来なかった。彼らはそのままエレベーターで降りて行った。私は政府代表と2人きりで廊下を歩く。

 やがて、左右に開く大きな扉を開け、私たちは政府代表オフィスへと入る。中には既に誰かがいた。2人の守護騎士と彼らの間にいたのは赤茶色の髪の毛をした若い女性……フィルドさん!?


「…………!? パトラー!?」

「フィルドさん!」


 私はついフィルドさんの下に駆け寄るとした。でも、すぐに顔を背け、その場に留まる。……私はもう犯罪者だから、ね……。


「…………? パトラー?」

「……ごめんなさい」

「あ、いや、“アレのこと”は……その、私が、悪かった。……すまない」

「まぁ、待て。フィルド」


 政府代表の椅子の近くにいるフィルドさん。政府代表オフィスの出入り口にいる私。政府代表がその間に立ち、落ち着いた声で言った。


「今回は凄く残念な話をせねばならぬ。ここに犯罪者がいる」

「は、犯罪者……? ……まさか……!」

「世界の法を破った者。あの封鎖区域テトラルに入った者がいる」


 私は下唇を噛み締め、俯いて政府代表の話を聞いていた。紛れもなく私の事だ。イヤな汗が額から滲み出て、体が震える。


「テトラルッ……! パトラー、何故テトラルなんかに行ったんだっ……!」

「フィルドさんッ……!」


 私は搾り出したような声で言った。フィルドさんを助ける為に過去を知りたくて、って言ったらなんて言われるかな? いい顔は絶対しないよね……。


「パトラーは君を助けたかったのだ」

「…………? どういう意味で……?」


 政府代表が私の代わりに話し出す。私は顔を伏せたまま、黙り込む。


「7年前……いやもう8年前か? EF2002年の真実、あの葬られた情報。それを知ろうと、彼女は封鎖区域に入った。過去が分かれば君の助けになると思ったのだ」

「“あなた方、国際政府と財閥連合が消した7年前の真実”を……」


 フィルドさんと最高議長の会話。EF2002年の真実、葬られた情報、封鎖区域テトラル……。やっぱり、今回っている情報はウソなんだ。フィルドさんの虚偽の情報こそ真実……。


「そう。当時の国際政府総帥グラン=ダイレイと軍事総督ナネット=バコの両名が独断で勝手に消した真実だ」


 当時の政府総帥と軍事総督は、私も知っている。彼らがいなくいなった事件も。……今から4年前(=EF2006年)の冬に起きた事件。“総帥・総督暗殺事件”だ。あの事件で2人は殺害された。事件が起きたのはセントラルタワーから別の建物に移る時だった――……。





 ――EF2006年12月【グリードシティ 軍事総本部】


 私が聞いた話によると、その日は雪の降る日だった。たくさんの雪が降り、グリードシティは白く染まり、数メートル先はもう真っ白。そう、吹雪の日だった。


「ダイレイ総帥、ナネット総督閣下。こちらの車に」

「うむ」

「よし、下がれ。“メタルメカ”」

「はい、総督」


 当時の特殊軍・守護騎士部隊の長官はメタルメカという男性だったらしい。車を用意した彼はダイレイ総帥の命令で下がった。その後、車は数十人の守護騎士に守られ、元老院議事堂へと向かった。その道中だったらしい。突如、車が爆発し、2人が殺害されたのは――。

 その後、メタルメカは責任を取らされ、守護騎士部隊長官を辞任。1ヶ月後には軍を抜けてしまった。彼はその後、財閥連合にスカウトされ、その組織の幹部となったらしい。





「少し話がズレたな。……パトラーは法を破った者。だが、それを言うならテトラルの真実を隠した2人も同じ犯罪者」

「…………」

「だから、ここはパトラーの処分は君に任せよう。フィルド」

「……わ、私に!?」


 全く予想しなかった展開に私は驚いて政府代表の方を見る。フィルドさんに私の処分を……!?


「どのような処分でも構わん。“罰なし”という処分でもよい。……パトラーは君のことを思い、助けようと動いた。これだけは覚えておいてくれ」

「……はい、閣下」


 フィルドさんは政府代表に頭を下げる。それを見た彼は少しだけ満足そうに微笑んだ。



――財閥連合を倒そう。あれが全ての元凶だ。財閥連合という強大な組織が崩壊すれば、連合軍もおのずと消えていくだろう。


 フィルドさんと共に政府代表オフィスを出る時、彼はそう言った。私はこの時、密かに誓った。政府代表とフィルドさんと3人で財閥連合を倒そう、と……。

◆政府代表

 ◇元老院議会を統括し、行政府を担う地位。

 ◇元老院議会の指名によってなれる。

 ◇政府代表は各省庁の大臣を任命できる。

 ◇任期は7年だが、再選できる。

 ◇現在の政府代表はマグフェルト(2期目)。


◆政府総帥

 ◇議会が決めた法案・予算案に対して反対することが出来る(例えば、ある法案が否決されても可決に修正することもできる。但し、議会が再度否決した場合には逆らえない)。

 ◇政府代表に指示をすることが出来る(但し、政府代表が反対したときは逆らえない)。

 ◇全市民から直接選挙によって選ばれる。

 ◇任期は7年。

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