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復讐の果ての終焉と始動  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1-2章 交差する絆 ――コスーム大陸――
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第12話 姉の怒り

 【封鎖区域テトラル 西部封鎖ライン】


 グリードシティを出て5日。つまり、年が明けてEF2010年1月3日。灰色の厚い雲が立ち込めるこの日、私は封鎖区域テトラルの西部封鎖ラインにいた。

 封鎖区域テトラルは1年近くかけて作られた高さ600メートルを誇る巨大な壁に囲まれていた。莫大な費用と人員をかけて急ピッチで造られたこの壁の向こうにテトラルが存在する。今はなき地方都市テトラルシティが。


「ダメだ。ここから先は政府元老院の許可なき者は通すことはできん」


 アサルトライフルを持った封鎖ラインを警備する特殊軍の兵士が言う。

 一般市民は勿論立ち入り禁止。政府軍関係者でも将軍以外は立ち入りが禁止されていた。立ち入りには元老院の許可が必要らしい。

 封鎖区域テトラル内に警備兵はいない。封鎖ラインは政府特殊軍が警備しているが、内部には誰もいない……らしい。


「……分かりました」


 数時間に及ぶ交渉の末、私はとうとう折れた。警備部隊は頑として入れてくれなかった。「元老院の許可が必要!」の一点張りだった。

 まさか、今からグリードシティに戻って元老院の許可得る、なんてことは出来ない。今は年が明けたばっかりでみんな休んでいる。元老院議員も同じ。それに例え元老院を収集出来たとしても許可が出るワケない。こうなったら……


「……アレしかないな」


 やった事ないし、怖いケド仕方ない。

 私は巨大な壁を見上げる。封鎖区域テトラルを包囲する壁。内部にあるのは葬られた都市。そこへは交渉じゃ入れない。だったら強行突破しかない!

 今は年が明けたばかり。“壁”を警備する兵士は少ない。それにまさか年始から封鎖ラインの内部に強行侵入しようとする人はいないだろう。警備兵もそう考えているハズ。だから、警戒心も比較的少ない。


 私は封鎖ラインから離れ、山の中で着陸させた飛空艇に乗り込む。流石に今はマズイ。強行突破するなら夜だな。飛空艇の中に戻った私の頭の中で特殊軍のクォット将軍に言われた言葉が横切る。


――財閥連合が街を占拠したのは本当だ。


 それが本当なら今ある情報がウソ。政府はフィルドさんの情報を否定し、都合の悪い事実を隠す為に封鎖ラインを作った。そう考えればつじつまが合う。隠し事がなければあんな巨大な壁、作る必要ない。


 財閥連合に支配され、消された街。消したのは国際政府。その2大勢力は裏でつながっている。その内、財閥連合の後ろには連合軍。連合軍は国際政府に対して戦争を起こそうとしているらしい。

 この葬られた都市で財閥連合に関する事が得られるだろうか? それともリセット・ミサイルで完全に消されてしまっただろうか?

 例え、封鎖区域に入っても何かが得られるとは限らない。空振りに終わる可能性だってあるんだ。何か残っているといいけど……。


 私はそんな事を考えながら温かい飛空艇の中で次第に眠りに落ちていった。



◆◇◆



 【グリードシティ 軍事総本部】


 サレファト……もう少しだからね。もう少しで助けて上げるから。

 1月5日深夜。華やかな首都グリードシティの輝きも私の目には入らない。私がここに来たのは弟のサレファトを助ける為。居場所は分かっている。特殊軍将軍フィルド=ネストの家。つまり、私の目の前の建物。


 私は全身に魔力を溜める。魔力を体に集め、進む先をイメージし、それを解き放つ。次の瞬間、私の目に入る光景は全く違うものになっていた。

 薄暗い部屋。争った跡が形跡がある。私は物が散乱したリビングにいた。


 侵入成功。私にキーロックは通用しないよ。やろうと思えば封鎖区域テトラルに侵入する事も、セントラルタワーに侵入することも出来る。どんな警備網も私には通用しない。なぜなら、私は“空間と時間のパーフェクター”だから!


「さて、っと」


 小さな声で呟くように言うと、極力足音を立てずに歩き始める。……ブーツで来ない方がよかったかな。

 物の散乱したリビングを出て、階段を上る。そして、最初に目についた扉を開ける。茶色の扉のドアノブに手をかけ、ゆっくりと動かす。

 扉の先も薄暗かった。誰かがベッドを背にもたれ掛ってる。私は操作パネルに触れ、電気をつける。視界に入ったのは白銀の髪の毛に小柄な少年……サレファトだ!


「ねぇ、サレファト……?」


 小さな声で彼に呼びかけるが返事はない。私は彼に近寄る。


「うっ、ね、姉さん……?」


 サレファトは酷い状態だった。血を流し過ぎたせいか衰弱していた。まさか、フィルドは私の弟を衰弱死させるつもりだった……?


「大丈夫、もう大丈夫だよ」

「僕を……助けに?」

「当たり前じゃん。私の唯一の家族……愛してるよ」


 私は彼を抱きしめる。やっと会えた。“シリオード帝国の帝族”なのに売られた私たち2人。こうなったのも私のせい。でも、いつか2人で財閥連合を抜けてやるんだ!


「さ、私に掴まって。一気に飛ぶ――」

「どこへ飛ぶんだ?」


 一瞬、心臓が飛び出るかのような感覚に陥る。私は入ってきた扉の方を見る。そこに立っていたのは1人の女性。コイツがフィルド=ネスト……!


「姉さん!」


 サレファトが雷を飛ばす。それはフィルドの胸を貫いた。彼女は剣を落とし倒れ込む。チャンス! 私は彼を抱きかかえると、素早く魔力を溜めていく。目的は彼女を倒す事じゃない。逃げることだ!


「クッ、お前ら……!」


 鋭い目が私とサレファトを捉える。深い憎しみのこもった黒い瞳だった。何があったんだろ? サレファトが何かしたのかな……?

 いや、そんな事はどうでもいい。私は魔力を溜め終ると、彼と共にワープした。フィルドの家から外へ。外に出て、一定の間隔でワープを繰り返しながら、空間を飛ぶ。

 本当は一気に飛びたい。でも、それは出来ない。魔力の問題で出来なかった。もし、一気にグリードシティの外まで飛ぼうとすれば、魔力の使い過ぎで死んでしまう。だから少しずつ飛ぶしかなかった。


 サレファトの右腕にある傷。殴られた後のある頬。酷い……。敵だからってまだ子供なのにこんな目に合わせるなんて……。

 この時、私の心にどす黒い感情が湧きだしていた。いつか、いつかあの女に復讐してやる……! 湧き出た感情。それは復讐という名の闇の感情だった。

◆サルリファス

 ◇時間と空間のパーフェクター。

 ◇サレファトの姉。

 ◇財閥連合の幹部。

 ◇元々はシリオード帝族だった。

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