なーろっぱ世界の短編 婚約破棄とか聖女とかドアマットとか転生とか
ひとちがい
初夜だ。
いつもは、明るく饒舌な彼女が、今日はうつむいたままだ。
結婚式の日の朝からずっと。
緊張しているんだろう。
ボクだってそうだ。
ボクはジェフリー・ノーラット。
彼女は、アイナ・コットン。
ボクの祖父のやらかしのせいで、悪評まみれの我が家。
それでもアイナはボクを選んでくれた。
ボクはアイナが。
アイナはボクが。
大好き。
ようやく結婚にこぎつけられた彼女。
大切にしなければ――
激痛。
「え」
腹を見た。ナイフが突き刺さっていた。
「な」
「思い知ったか!」
憎しみに燃える目で、彼女はボクを見ていた。
「な、ぜ」
アイナはナイフを抜くと、
「自分の胸に訊いてみるのね! このクソがぁっ!」
ずぶずぶとボクを刺した。刺した。刺した。
ベッドは噴き出す血に染まっていく。
その中へボクは倒れた。
痛みがひどすぎて、ただ痛い。
痛い。痛い。痛い。痛い。
「わたしはもう意味なく耐えも我慢もしない! せっかく生まれ変わったんだから!」
なにもわからない。
世界が暗くなる。
彼女は何度も何度もボクを刺す。
痛すぎて、もう何度刺されても全部同じ激痛に飲み込まれていく。
「ざまぁざまぁざまぁ!」
アイナの狂った叫び声が聞こえる。
「きゃははは! ジェフリーいいざまね! あのキャシーとかいう貴方の真実の愛が貴方の死体見たらなんていうかしら!」
キャシー? 真実の愛? ボクにそんなものは……。
あ。
ジェフリー。
キャシー。
それは。
ボクの先祖だ。
2代前の先祖。
愛人キャシーにいれあげて、正妻のアイナをないがしろにしたどころか虐げ、そのあげく正妻を病死に見せかけて殺した。
あっさりばれて妻殺しで処刑されたバカ。
そしてジェフリーとアイナの間で出来てしまっていた子供が、ボクの父だ。
若い頃の祖父はボクにとてもよく似ていたそうだ。
「こんなけがらわしいもの切り取ってやるわぁぁ!」
それがボクが聞いた最後の声だった。
たくさんの作品の中から、本作をお読みいただきありがとうございました。
最後までお付き合いいただけたこと、とても嬉しく思います。
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別の物語も書いておりますので、もしよろしければ、そちらも覗いてみてください。




