第五章 史郎の行動
山での生活が長くなり、ミユキはいろいろ考えてしまいます。
それに対して、史郎は相変わらず正体不明です。
ミユキが食べ終わるのを見計らって、史郎は立ち上がり、
「今から飛行機まで行っていろいろ調べてくることがある。昼食はこれを食べてくれ。」
と言い、また同じメニューの食事を置いていった。ミユキは史郎が何をするのかに付いては全く関心がなく、
「どうぞご勝手に。」
と、ぶっきらぼうに答えた。
ところが、史郎が行ってしまうとあたりには焚火の音と、時折吹く風の音しか残っておらず、ミユキはまた悲しくなってくるのが分かった。しかしいつまでも悲しんでいては仕方が無い。何かすることを見つけて気を紛らわせようと思ってみたが、こんな岩山の上に一人残された状態ですることが見つかる筈はなかった。
することと言ったらその辺を探索するぐらいしかなく、仕方なしに置いてあった昼食を抱えて歩き始めた。しかし、史郎の行った飛行機の方には行く気になれず、全く反対の方向へ進路を決めた。
「そう。今の時間で・・太陽はあそこだから、南の方向かな。」
ミユキは真っ直ぐ歩いていった。何処まで行っても荒地は続いている。大小の岩と石ころとわずかばかりの草があるだけで、他に何も無かった。高地とはいえ、春の穏やかな日差しがあり、さわやかな気候であったのがわずかばかりの救いであった。
三時間ほど過ぎたときミユキは立ち止まらざるを得なかった。そこは今まで続いていた荒地の終わりだった。ミユキが歩いてきた地面はそこで終わり、その下には白いガスの様なものが渦巻いていた。ミユキは絶望の余りその場に座り込んでしまった。
「ここから帰ることはできない・・・」
仕方なしにミユキは日の暮れないうちに帰るため、来た道を引き返すことにした。
夕方になって、史郎はミユキのスーツケースを持って帰ってきた。
「これが君の荷物だろう。今日捜したコンテナの中に入っていた。着替えとかいろいろ入っているだろう。」
ミユキはお礼を言うのも忘れて、自分が今日見てきたことを話した。しかし、史郎は大きくうなずきながら黙ってミユキの話を聞き、たいして驚いた様子は示さなかった。
同じメニューの夕食を食べ、テントに入ってもミユキは寝付けなかった。テントの外に出てみると史郎はすでに寝てしまっている様子だった。空にはミユキが今まで見たことも無いような満天の星が輝き、まるで、すぐにも手に届くような気配が感じられた。中央には淡い一筋の光の筋がぼうっと輝いていた。
「初めて見る。あれが天の川・・・」
ミユキには天の川がなぜか自分たちの帰り道を示しているのではないかと感じた。そう思い込んでしまいたかった。それほど美しくはっきりとした天の川だった。
「明日はあの方向へ歩いていってみよう。」
翌日も、史郎はミユキの起きる前にさっさと朝食を済ませ、出かけてしまった。ミユキは昨日見た方向へ歩いていった。しかし、結果は昨日と同じであった。深い谷がミユキの前進を阻んでいた。
帰りながらミユキはいろいろ考えた。
「飛行機の落ちている方向はどうかしら。あの山の向うに回ればどこかに行けるかもしれない。よし、明日は一緒に連れていってもらおう。」
その日の夕方、史郎が帰ってくるとミユキはその事を話した。しかし、史郎はそれを断った。
「山を越えればどこかに行けるかもしれないよ。」
とミユキは主張した。しかし史郎は
「山を越えるのは素人には無理だ。かなり険しい山だ!」
と夕日を浴びてそびえる山を指して怒鳴った。
「それに、飛行機の周囲にはバラバラになった屍体が散らばっているんだ。女の子の立ち入るようなところじゃない。」
「しかし・・・」
と言ってミユキはこれ以上話すのを止めた。史郎の態度が今までに無い、あまりにも興奮した状態であったため、これ以上話すとどうなるか恐ろしくなった。
次章では、史郎が何をしているのかわかります。ご期待ください。




