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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第三章 学園の華は、何といっても悪女と学園祭ですわ

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第90話 No.1の美女になるために、ですわ。

 学園祭の準備は着々と進められた。


 ジャーナリズムクラブでは、毎年、イケメン・美女名鑑を発行している。


 イケメン・美女は、学園生の投票によって選ばれる。各学年から3名ずつ選出し、最高得票数だった生徒が、学年に関わらず表紙を飾ることになっている。昨年度、表紙を飾ったのは、すでに卒業してしまっている侯爵令嬢だった。2回以上表紙を飾ると殿堂入りとなるのだが、例えば、アルフォンスは当然のごとく3年連続で1位選出という偉業を成し遂げ、いうなればスーパー殿堂入りを果たしているのだ。


 ジュスティーヌの知り合いで今までに選出されたことがあるのは、ソフィーや会長のフレデリク皇子・副会長のエルドリック王子・その婚約者ヴィクトリア公女あたりになるが、なんと1年目にはあのレナードも選ばれていた。ワイルドすぎる正体がバレたためか、残念ながら去年は選出されていない。


 ということは、スターレナードは、あの腹黒エロ皇子に負けるまでは案外まともな人だったのかしら?


 ちなみに、ジュスティーヌの幼馴染にして、()()()()のイケメンのセドリックは去年4票獲得していた。


 ふっ、これならいける、いけるわよ! ビビアン! というか、むしろセディに入れた4人は誰? たぶん、一人は本人で、残りも男ね。


 アカネが推しているうーたんに関しては、聞かないであげてほしい。


 ジャーナリズムクラブメンバーで、過去に名鑑に載った人物はほとんどいないのだが、今年はジュスティーヌが表紙を飾ることになるのは、ほぼ確実だった。3年男子は会長・副会長が人気を二分しているため票が割れるし、男子に大人気のソフィーは女子に人気がない。No.1になるためには、男女双方からほどよく人気であることが必須条件と言えた。


 このイケメン・美女名鑑に推しを当選させることは、各公式・非公式ファンクラブ会員最大の使命と言っても過言ではなかった。


 投票のための選挙運動期間が始まると、ファンクラブ会員たちは、推しのために絶対に負けられない仁義なき戦いを開始する。ライバルとなる者の醜聞をあげつらう、ネガティブキャンペーンまで行われることもある。


 今年も、ソフィー派対ヴィクトリア派の戦いは熾烈を極めた。


 先に動きを見せたのは、ソフィー陣営だ。ソフィーの信奉者である男子たちは、学園中で「ソフィー、聖女候補のソフィーでございます。みなさん、ありがとうございます。ソフィー、レッツゴーエンジョイのソフィーでございます!」とまずは新入生に彼女を覚えてもらうべく、ソフィーの特大ポスターを持って名前を連呼しながら練り歩く。


 これに対して、ヴィクトリア陣営は、最初のネガティブキャンペーンを張ってくる。


「皆さん、我々は良識ある学園生の皆さんに訴えたい! 本当にソフィーを学園の顔にしてもよいのでしょうか? 確かに彼女は聖女候補と呼ばれています! ですが、彼女は一度たりとも皆さんのために、皆さんの前で光魔法を使ったことがありません! これが事実です! 聖女と呼ばれるに足る実績が何らなく、単なる”候補”というだけでここまで持ち上げてよいのでしょうか!」


 負けじと、学園の中庭広場では、今日もソフィー陣営が街頭演説会ならぬ、園頭演説会を行っている。 


「学園のみんな、ソフィーをかわいいと思うかー!」

「おおー!」

「ソフィーをやさしいと思うかー!」

「おおー!」

「ソフィーファースト! ソフィーファースト! レッツゴーエンジョイ・ソフィーファースト!」


 ヴィクトリア陣営も、ネガティブキャンペーンの手を緩めない。


「皆さん、ソフィーの公式ファンクラブの演説を聞かれましたか。どうでしたか。そう、中身がまるでない! ソフィー陣営が行っているのは単なる名前の連呼だけ! つまり、皆さんに伝えるべき、誇れるような実績がないのです! 学園の顔として、この学園を背負って立つだけの能力に欠けている! 彼女では、役不足だ! 一方のヴィクトリア様は、常に慈善活動に勤しみ、慎み深く、淑女の鏡です! 我々、学園生が推すべきは彼女のような女性だと思いませんか!」


 こんな調子で、激しい舌戦が繰り広げられるのだった。


 ある時、ジュスティーヌが選挙戦の取材をしていると、ソフィー本人と出くわす。


「はあ、ジュリジュリはいいなぁ。1年女子にはかわいい子いないからなぁ。勝てて当然だもんね。2年女子はあたしの他にも美女が多いから大変だよぉ」


 やっぱり、いじめていい? この人のこと。


「あと、ジュリジュリってジャーナリズムクラブだから、票操作とかもできちゃうよね。あたしの名前書いた票消して自分の名前に書き直すとかぁ。たぶん、去年、あたしの名前が書かれた票、大量に捨てられていたと思う」


 いや、学年違うから、そんな不正したらバレるから、しないし。しかも、総得票数を数えればその手の不正はわかるから、捨てたりしてないし!


「ジュリジュリはお姫様だからアルフォンス殿下の取り巻きにも気に入られているけどぉ、あたしはフレデリクとエルドリックの取り巻きに嫌われちゃってるしぃ。平民だからって意地悪されちゃう。くすんっ」


 それ、身分関係ないから、どう考えても自分が悪いよね? というか、その二人には妙なあだ名つけてないのね。


「ソフィー先輩、おっしゃりたいことはそれだけでしょうか?」


 ジュスティーヌはここまでよく耐えた。ヴィクトリアから学んだ、ちょっとおつむの弱い聖女候補との戦い方”冷戦”の特技を駆使して、反撃せずにソフィーの言葉をすべて受け流した。


「あと、ジュリジュリはアルフォンス殿下よりも肉男がお似合いだから、そっちとお付き合いした方が良いかも」


 はあ? この機会に言いたいこと全部言う気、この女。そっちがその気ならば、あなたが苦手なスターレナードを呼ぶわよ!


「そう、それは貴重なご意見を、感謝しますわ。ただ、ひとつ言わせてもらうと、レナード殿下は肉男(にくおとこ)ではなくて、魚男(うおとこ)よ。では、失礼」


 腸は煮えくり返っていたが、顔色一つ変えずに一言だけ告げた。余裕の悪役令嬢たるこのわたしが、あなたに伝えたいことは、この程度のことしかないのよと言わんばかりに。


 そして、揺るがぬ悪役令嬢らしく、優雅にその場を去った。ジュスティーヌは無益なケンカに乗らなかった自分を、心の底から褒めてあげたいと思った。

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