第87話 みんなで大冒険ですわ!
「ジュティ、送っていくよ。週末の相談もしたいしね」
夜の街をこのエロエロ大魔王と二人で歩きでもしたら、何をされるかわからない。なにせ、公衆の面前で、「スカートをめくる」と宣言し、平気でキスをするような男なのだ。
「キュートハニーよ! そんな男といたら危険だ! 俺と一緒に帰ろう!」
「ジュティ、口直しに、うちの店によってタルトを持って帰るといいよ。オレンジタルトを取っておいてあるから」
しかも、腹黒皇子はまたしてもタルトでジュスティーヌを釣った。
「オ、オレンジタルトが廃棄処分の危機にさらされていて、わたしの助けを求めているから、行ってあげないと……」
「わかった愛しの妻よ! それならば俺がこいつが何もしないか見張っていよう!」
「では、僕は兄上が暴走しないように見張ります」
「じゃあ、私は何か起きたら記事にしたいからついて行きます! アカネっち行くよ」
「えー、アカネっちずるい、あたしも行きたい!」
こうして、アルフォンスとジュスティーヌの後にレナード、カイト、オリビア、アカネ、ビビアンが続いた。そして、みんなでオレンジタルトを味わっている。
「で、ジュティ、明日は何をする?」
「また、ギルドに行って、クエストを受けたいな。早く冒険者ランクを上げたいし」
「スイートエンジェルが行くならば、スーパースターの俺も行くぞ!」
「では、僕も兄を見張りに」
「うっ、私も行きたいけど、冒険となると、さすがに厳しい……。アカネっち、ビビアン頼む!」
「お任せを!」
「りょうかーい、任せてくださーい!」
「はあ、わかった。ではみんなで行くとするか……」
アルフォンスは残念そうにため息をついた後で苦笑いをしていたが、こうして週末は6人で冒険に行くことになった。
まずは冒険者ギルドに向かう。
ビビアンは冒険者登録済みだが、他の3人は登録を行う。
レナードは「通りすがりの救世主である俺様が初級なわけないだろう! 最強戦士の俺はどう考えてもウルトラ超級だろう!」とゴネたが、アルフォンスに「気に入らないならば帰ってもらっても構わない」と冷たくあしらわれて、大人しくなった。
クエストは、パラヴェント大森林に生えている風切り草ともりもりキノコの採集を請け負うことにした。
ここでもまたレナードが、「大海原に招かれし男である俺様は、一角シャチの討伐がいい!」と言い張ったが、アルフォンスに「君、一人で行ってくればいい」と冷静に返されて諦めた。
クエスト自体はただの採集だが、当然この森には魔物が生息している。しかも、前回ジュスティーヌが行ったルキドゥスの丘よりも強い魔物が。状態異常系の特殊攻撃をしてくる魔物が多いので気を付けるようにとアルフォンスは注意を促した。
この冒険を一番楽しんでいるのは、意外にもカイトだった。どちらかというとインドア派として生きてきたカイトにとって、護衛もつけずに外を冒険してまわるのは初めての経験だった。
一行は、パラヴェント大森林近くの集落で昼休憩をとった後に、森へと足を踏み入れた。お姉さん風を吹かせたジュスティーヌはカイトたちに言って聞かせる。
「珍しい木の実があるからって勝手に食べちゃだめだからね。あと、その辺にある植物にもやたらと触らないように気を付けて!」
そもそもカイトはお育ちの良いお坊ちゃま王子だから、その辺に生えているものを食べようとは思わない。ビビアンは冒険慣れしていたし、アカネも忍びの一族だからそのあたりは心得ている。
「子どもじゃないんだから、大丈夫ですよ!」
と、ビビアンが返した傍から、レナードはその辺の果樹をもぐもぐ食べていた。
「これはなかなか甘くてうまいぞ! 愛する妻も食ってみるか?」
「それは、不幸のグミだ。食べると悪臭が漂ってくるから、誰も近づかなくなる。ジュティは絶対に食べちゃダメだよ。レナード、君は我々から少し離れたところを歩いてくれ。臭くてたまらん」
「つ、妻よぉぉ……」
「こ、こないで~~」
「くっさっっ!」
「おげーーーー」
こうしてレナードは、ジュスティーヌの半径5mの範囲内に近づけなくなった。
森の中を進んでいくと、左手から巨大な蝶の群れが近づいてくる。
「幻覚蝶だ。鱗粉攻撃を浴びると、幻覚が見えるようになるから気を付けて」
アルフォンスが注意を促す。
ジュスティーヌたちは近づきすぎないように魔法や飛び道具を使って攻撃をした。しかし、近距離攻撃が基本のレナードはそのままパンチを繰り出す。幻覚蝶自体は一撃で倒したのだが、タダでは死なないのがモンスターだ。レナードは、死に際に蝶が振りまいた鱗粉を思いっきり浴びることになってしまった。
レナードは臭い上に、幻覚まで見えるようになった。
「こっちにくるなーー! さわるなーー! やめてくれーーー!」
どのような幻覚が見えているのかは聞かないであげてほしい。
次に登場したのは、突撃大牙イノシシだ。こちらは力技しか仕掛けてこない魔物だったので、ジュスティーヌたち4人の協力プレイで倒す。初めての割には、なかなかいい連携が取れている4人だった。
この後も、お目当ての風切り草ともりもりキノコを採集し終わるまでに、結構な数の魔物を倒した。
「風切り草ともりもりキノコは状態異常を治す薬を調合する際に使われるんだ。せっかくだから少し多めに持ち帰って、薬草店で調合してもらおう」
そう、アルフォンスが言うのを聞いたレナードは、何かひらめいたかのようにその辺の草とキノコを食べだした。
あっ、それ、絶対にやっちゃいけないやつだ……。
「兄上、それを食べてはいけない!」
カイトが止めようとしたときには、時、すでに遅し。
レナードが食べた草は、ただの名もなき苦い草だったのでまだよかったのだが、キノコは大爆笑ダケだった。
レナードは自分がとてつもなく臭い上、恐ろしい幻覚が見えるのにもかかわらず、大爆笑し続けなければならなくなった。




