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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第83話 子どもたちよ、怪盗プリンスに挑め! ですわ。

 いつものように、慌ただしく一週間が過ぎていった。今日は金曜日、スーパー鬼ごっこDayである。


 ジュスティーヌはカイトたちに声をかけると一足先にアルフォンスと約束をしていた場所へと向かった。ストーリー的には、前回、怪盗プリンスが魔女姫マジカールをさらったところで話が終わっていて、今回、子どもたちはマジカールの救出のために本気の鬼ごっこをするという設定だからである。


 市民公園の運動広場には、時間前にも関わらず大勢の子どもと見物人が集まってきていた。そして、そこにはすでに大掛かりなセットが用意されていた。アルフォンスが自らの財力と政治力を使って、子どもたちとジュスティーヌを喜ばせるために用意したのである。


 今日は、学園の生徒たちは、ケヴィン扮する騎士ライダーをはじめ、コウモリ紳士のマイク、レッドレンジャーのボブ、マッチョボーイのダン――この4名は初期メンバーのヒーローであるため、PFDではオリジナル(フォー)と呼ばれている――とマジカールの手下である海坊主2名を除き、怪盗プリンスの手下役である。


 午後4時ピッタリになると、時計塔の鐘がなりだした。そして会場の中央に設置された怪盗プリンスの城を模したセットにスポットライトが当たる。


「ははははっ、諸君、よくぞ来た! これより、この私と魔女姫争奪戦を繰り広げようではないか!」


 怪盗プリンスに扮したアルフォンスがそう告げて、指をパチンと鳴らすと、囚われの姫ならぬ、魔女姫マジカールまたはマジョリーヌが、腕を縛られた状態でゆっくりと空から降ってきた。怪盗プリンスはそれをお姫様抱っこの体制で受け止めると、抱きかかえたまま、テラスに置かれた玉座に腰を下ろし、姫を自らの膝の上に座らせた。


「マジョリーヌをかえせ!」

「かいとープリンスめーー!!」


 子どもたちが口々に叫ぶ。


「キャーーー!! 怪盗プリンス様ぁ!!」

「キャーー! 素敵! こっちみて!!」


 女性たちも違う意味で口々に叫ぶ。


「さあ、小さな勇者たちよ! 魔女姫は今、我が腕の中だ! 姫を取り返したくば、私の手下どもを倒し、この会場に隠した5つのカギを探し出してここまで来るがいい。ははははっ」


「だれかー、たすけてー、怪盗プリンスにてごめにされちゃいそー」


 アルフォンスに比べて、捕まったお姫様役の演技が下手くそなジュスティーヌ。


「子どもたちよ、わが主、マジカール様をどうかお助け下さい!」


 海坊主のセドリックもそれっぽく演じる。


「さあ、子どもたちよ! 俺と一緒に、魔女姫を助けるためにファイトだぜ!」


「遊具のどこかに、城に続く鍵が隠されている! みんなで協力して探すんだ! 燃えるぜ、ゴーファイヤー!」


 ヒーロー役のケヴィンたち4人もその場を盛り上げた。


 鬼ごっこが開幕を告げるとともに、四方八方から、黒尽くめの服を着た男たちが登場して、子どもたちを追いかける。最初のエリアは怪盗プリンスの城近くに広がる森をイメージしたエリアで、縄の階段や滑り台、釣り橋や土管などアスレチック遊具がいくつも置かれていた。


 この中で、子どもたちと追いかけっこをしながらも、学園の生徒たちはたまに小芝居を打ちながら、アクロバティックな動きで観客や子どもたちの目も楽しませた。


 カギが見つかったら、次のエリアに進む扉の前で、ヒーローと悪役の戦いが行われた。子どもたちはその間に水分をとってヒーローショーを眺めながら、休憩ができるように配慮されていた。悪役のエリアボスが倒され、扉が開くとともに、今まで捕まっていた子どもたちも全員解放されて、次のエリアでの鬼ごっこが始まった。


 ジュスティーヌは下で走り回っている生徒たちがうらやましくて仕方がなかった。彼女のような性格の姫にとって、囚われの姫ほどつまらない役はない。


 手を縛られているといってもリボンでかるく蝶々結びされているだけなので、簡単にほどける。それ以外拘束されているわけでもないので、「やったー、脱出成功!」といって、下に行くことも不可能ではない。だが、そんなことをしたら、子どもたちの夢を壊してしまう。そう思って、ジュスティーヌは必死に耐えていた。


 そんな彼女の様子に、アルフォンスは当然気が付く。


「ジュティ、つまらなそうだね」

「ひゃっ!」


 突然ウエストに腕を回される。アルフォンスの膝の上に座らされているだけでも恥ずかしいのに、なんてことをするんだ、この男は! と思う。


「ちょ、ちょっと!」


 ウエストを抱かれていることに抗議してみる。きっと離してくれないだろうけれども。


「ジュティがつまらなそうだから、楽しいことをしようか、2人で」

「楽しいことって?」

「キスとか」

「は、はあ!? わたしは全然楽しくないからー!」


 この男は、油断するとすぐにキスしたがるんだから!


 ジュスティーヌはジタバタしながら、アルフォンスの提案に異議を申し立てる。


「アルのエッチ、アルのエッチ、アルのエッチ!」

「それって俺への悪口? だけど、ジュティ、健康的な男なんて、たいていエッチだよ」


 アルフォンスはそういうと、さらにジュスティーヌを抱き寄せ、片手をジュスティーヌの手に重ねた。もがけばもがくほど、アルフォンスのエッチな行動が加速している気がする。


「ああ、ジュティとキスがしたいな」

「い、今はダメに決まってるでしょ!」

「後でならいいの?」

「そ、それは……」


 苦い青汁をがぶ飲みして消したはずの、あの夜のアルフォンスとの甘い思い出が、彼の唇の柔らかな感触と共によみがえる。


 ああ、もう、なんでダメに決まってますーっていえないの、わたしってば!


「じゃあ、後でキスするよ。もう決めたから」

「勝手に決めないでよぅ……」


 アルフォンスがそう決めたならば、それは確実に実行にうつされるということだ。こうなるともう大人しくぼやくぐらいしか、ジュスティーヌにはできなかった。

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