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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第78話 勝兵はまず勝ちてしかる後に戦う――つまり、作戦は完璧ですわ!

 月曜日、今日はいよいよパーティで決闘の日だ。


「”本日、天気晴朗なれども風強し”と言ったところね!」

「確かに快晴ではありますが、風はそれほどでもないのでは?」


 どこかで聞いたことのあるような誰かの名言をもじった台詞を吐くジュスティーヌに、セドリックがつっこむ。


「いいのよ! なんかそれっぽいことを言ったほうが士気が上がるでしょ! ”善く戦う者は、これを勢に求め”よ!」


 本日のジュスティーヌは、戦士でありながらも、名兵法家・名参謀モードなのだ。


「士気が上がると言われてもねぇ……」


 見てください、このメンバーを! そんな一言で士気が上下するような連中じゃないでしょ?


「マーメイドのような美しい妻よ! 俺との式は南の無人島で挙げよう!」


 とりあえず、違う()()()()()()としたメンバーが一人だけいた。


 ほーらねと言いたそうな表情でセドリックは肩をすくめた。


「あっ、僕は少しだけ士気があがったよ!」


 やさしいカイトがフォローしてくれる。だけど、少しだけって……。


「で、今日の作戦は? どうするんです? 参謀殿」


 気を取り直して、セドリックは自らの主であるジュスティーヌに、この決闘でとるべき戦法について考えを問う。


「ズバリ! T字戦法でいくわ!」


 T字戦法――某国が超大国との海戦で取った作戦で、この作戦が上手くはまった結果、某国は超大国との圧倒的な戦力差を覆し大勝利を収めたのだ。


「いや、もうそれ引っ張るのやめましょう……。だいたい相手が縦一列の隊列なんて組まないでしょう?」

「チッチッチッ。何を言っているのセディ。縦一列になるのはわたしたちのほうよ」


 セドリックは4人が一列に並んでいる図を頭の中に思い浮かべた。


「いやいやいや、ちょっと待ってください。何ですか、その無謀すぎる意味不明な隊列は? レナード殿下だけに戦わせるつもりですか?」

「まぁ、そうともいえなくはないわね。いい、カイト、セディ。二人はレナード殿下の背中に隠れつつ、それぞれが得意とする土魔法と水魔法をミックスして撃つのよ! 相手の顔めがけて」


 カイトは土魔法が使える。ただし、こぶし大の塊を出す程度が関の山である。一方のセドリックはそれよりはもう少し強力な水魔法が使える。だから、カイトの出した土球をセドリックの放水で飛ばすのだ。その過程で、土と水は泥となる。


 それを顔にぶつけて、相手に不快感を与えて精神的な動揺を誘いつつ、こちらはそのような子どもじみたチキった攻撃しかできないと思わせることで、相手の油断を誘う作戦である。


「顔に泥をぶつけるってわけか。姫様らしい、えげつない作戦ですね……」

「なるほど。さすがはジュスティーヌ姫だ! 足りないものを補って強化しつつ、新たな攻撃とするいい作戦じゃないか!」

「ふっ、驚くのはまだ早いわ! 実はこの泥んこ魔法作戦はただの目くらましにすぎないのよ! ”兵は詭道なり”よ! 実は本命はこのわたしが使う炎魔法よ!」


 ジュスティーヌはたった今、即席で考えた、自分の完璧すぎる(と信じている)作戦に完全に酔っていた。


「セディ、わたしがこの週末、何をしていたと思う?」


 ジュスティーヌは得意げに、なぜか別の話題を振る。


「デートですよね? アルフォンス殿下と」

「ま、まぁ、そうともいえなくはないけれども、それさえも目くらましよ!」

「おお!」

「わたしは、この週末、皇子の剣同盟メンバーの弱点を探るべく、彼らの生態に詳しいアルの懐に潜り込んでいたのよ」

「そうだったんだね!」


 カイトはほっとした。アルフォンスのことが好きで好きで会いたくてたまらなくて、ずっと一緒にいたわけではなかったのだと。


「そして、彼らの長所から弱点まで、すべて把握済みよ。”敵を知りて己を知れば百戦して危うからず”。つまりは、わたしたちの完全勝利はすでに約束されたようなものだわ!」


 いや、敵は知れたかもしれないですが、己のこと、本当にわかってます? 姫様……?


 セドリックの心配をよそに、4人は今日の決闘の会場――第一武術訓練所にやってきた。1対1の決闘によく使われる第二武術訓練所よりも広い第一訓練所だったが、すでに周りには大勢の生徒が詰めかけていた。


 クラスメイトやPJL35、ジャーナリズムクラブや”飛ばされ隊”のメンバーもいて、口々に応援の言葉をかけてくる。


 対する相手――皇子の剣は、ジュスティーヌの(アルフォンスの)予想通りのメンバー構成でパーティを組んできた。


 ランキング3位で皇子の剣同盟のリーダーでもある片手剣の使い手であるデューク。6位でタンク役を担っている大盾使いのゲイジ、雷魔法が得意で足の速いランキング9位のオニキス、この中ではバフをかけるのが比較的得意な12位のルカだ。


 ジュスティーヌやレナードといった個々人への対策をしつつ、非常にバランスのいいパーティ構成で来たと言っていいだろう。


 まずは、12位のルカから泥玉攻撃で潰す。次にオニキスだ。タンク役にはたまに泥玉を投げてちょっかいを出しつつも、できるだけ放置する。そして、レナードにはデュークの相手に集中してもらう。


 うん、やっぱり完璧な作戦だわ。


 ジュスティーヌは自画自賛した。


 4人と4人は、立会人を挟んで対峙した。その間を一筋の風が吹き抜ける。観客たちは息を飲んで、この緊迫した一瞬の時間を楽しんだ。


「よくぞ、逃げずに来たではないか。誉めてやろう」


 ランク3位のデュークがまずはこちらを挑発するかのような一言を口にする。「殿下、何かカッコイイ一言を返してください」とジュスティーヌはリーダーであるレナードをたきつける。


「貴様らこそ、その目によく焼き付けるのだな! 通りすがりのスーパースターであるこの俺の、女神の祝福を受けた麗しの妻へ捧げるほとばしるラブパッションを!」


 うん、なんかよくわからないけれども、まぁ、良しとしよう……。


 決戦の時は迫っていた。

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