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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第77話 ペアルックなのですわ。

 武器加工工房『モンスターボーンズ』を後にしたジュスティーヌとアルフォンスは、今度は毛皮製品の店『ぷにぷにきんぐだむ』に来ていた。


 えっ、ちょっとまって、どうしてぷにぷにきんぐだむ!? せめて、ふわふわきんぐだむじゃない? しかも、この店主の見た目、どうみてもぷにぷにきんぐだむって感じじゃないわ!


 そう、ぷにぷにきんぐだむの店主は、スキンヘッドで顔に傷のある、どこからどうみても強面で、筋肉質の渋い中年男性で、ぷにぷに要素は欠片もなかった。


「…………おう……らっしゃい……」

「大爪兎の毛皮の加工を頼みたい」


 ジュスティーヌに代わってアルフォンスが店主に交渉を持ちかける。


「…………おう…………何にする?」


 ジュスティーヌはレナレナの毛皮を店主に差し出した。


「……いい毛並みだ……」


 そっか、レナレナ、毛並みは上等だったのね。なのにモテなかったなんて……。


 そういえば、レナードも顔は悪くない。その上、強い。でも、モテない。それと一緒なのだろうか。


 じゃあ、メスの心をつかむ秘訣は何なのかしら!?


 ジュスティーヌは隣にいるアルフォンスをじっと観察した。レナードになくて、アルフォンスにあるもの。それは……。


 腹黒さ、ってことかしらね?


 ほかの男を出し抜き、意中のメスを言葉巧みに罠にはめる狡猾さ。それこそが、勝者が有している才能ということか。


 現にジュスティーヌもアルフォンスの手のひらの上で踊らされているようなものだ。ダンスに誘われて、何度もデートに連れ出され、キスまで許してしまった。先ほどは自ら「アルの婚約者」と名乗らせられている。本人はまだ認めていないが、とっくの昔にこの男の虜になってしまっているのだから。


「あの、これで、普段使える小物を作るとしたら、何がいくつ作れますか?」


 店主はレナレナの毛皮を手に取って眺め、二人を交互に見た後でこう告げた。


「……ペアの……ペアのマフラーが1セットだな……」


 ペア!? なぜにペア!? マフラー2本ではなく、ペア1セット!?


「……お嬢ちゃん……こいつはよう…………メスにフラれた……淋しいオスだろ?」


 はっ! そういうこと、そういうことね!


 天を仰ぎ見て、深くため息をついた、いかつい顔の店主は、うっすらと目に涙を浮かべていた。


「……お嬢ちゃんと旦那が身に着けることで……せめて、こいつに……こいつが得られなかった甘い夢をみさせてやってくれないか……!」


 ジュスティーヌはぷにぷにきんぐだむの店主の手をしっかりと両手でつかむと、「みなまでいうな……!」と言わんばかりに真剣な目で一度だけ頷いた。


 こうして、素材の加工の依頼は済んだ。あとは、レナレナのお肉をどうするかだ。狩ったものの責務として、きちんと食し、自らの血肉となす必要がある。こうしてやることで、レナレナは永遠にジュスティーヌの中で生き続けることができるのだ。


 ジュスティーヌは肉の消費方法について、アルフォンスに相談をした。そして、週末の大鬼ごっこ大会の後に、みんなでバーベキューをすることになった。


 二人は、肉を預けがてらアルフォンスが経営するカフェ『テミス』でタルトを堪能したのち、ようやく学園の寮へと戻った。


 寮の前では、なぜかレナレナ……ではなく、本物のレナードが一人キャンプをしていた。と、思ったら、カイトもいた。レナードはともかく、カイトも正統派の真面目な王子様から方向を切り替えて、ワイルドなアウトドア男を目指しすことにしたのだろうか。


「お前! 俺の妻を何度さらえば気が済むんだああ!!」


 ジュスティーヌと一緒にいるアルフォンスの姿をみて、レナードは詰め寄る。


「ジュティは君の妻じゃないし、さらったりもしていない」


 アルフォンスは至極冷静に事実を告げる。


「ジュジュジュ、お、お前! 人の妻を馴れ馴れしく呼ぶなああ!」

「そっちこそ、俺の恋人を勝手に妻呼ばわりしないでほしいな。ね、ジュティ」

「えっ? ええっ?」


 レナード殿下の妻でもないけれども、あなたの恋人でもないと思うのだけど。いや、恋人なのかしら……? キ、キスしちゃったし……。ああああああ!


「愛する妻よ! どうしてこんな男の服を着ているんだ! 服がないならば俺のを貸してやるぞ!」


 そういってレナードは自分のタンクトップを脱ごうとする。それをジュスティーヌとカイトは全力で止めた。


「あ、いえ、自分の服がないわけじゃないんで。それに殿下の服はペラペラじゃないですか。それだと隠せないから」

「隠せない? 何を隠す必要が? あっ!」


 レナードは気が付いた。女性が上半身で隠したい場所といったらそこしかない。レナードは、決して想像してはいけないものを想像してしまった。鼻血が噴出さないように慌てて鼻を押さえる。


 レナード脳内小劇場のはじまりはじまり。


 あるところに、ウルトラスーパー超絶かわいらしいお姫様がいました。お姫様は、諸悪の根源にして人類の敵ともいうべき悪徳皇子につけ狙われて、かどわかされてしまいます。


『はははっ、スカートめくるぞ! おっ〇〇も見せろ!』

『キャー助けて! いやん、エッチーー!』


 女ったらしスケベエロ皇子はお姫様のドレスをビリビリに破り、姫のやわらかそうな憧れのぷるんぷるんなおっ〇〇を我がものにしようとしていました。そこへ登場したのが、通りすがりのスーパーヒーローにして正義の味方、人類の救世主こと、この俺様レナードなのだ!


 レナードは自身の脳内小劇場で展開された続きの話をその場で演じだした。演じたといっても結構本気ではあるのだが。


「貴様ッッ!! 俺の妻の服をよくも!! 許さん!!」

「俺は何もしていない。ただ、君のような男にジュティの肌を見せられないと思っただけだ」

「何だと! お、お前は見たのか……!?」

「……………いや」

「何だ、その間は! しかも、なぜ目をそらす! 見たんだろう!」

「もう、二人ともやめて! アルはこっちに来て! 着替えたら服を返すから」


 ジュスティーヌはアルフォンスの手を引いて自分の部屋まで連れて行った。哀れなレナードは、「マイスイートハニーよおお!」と叫んでいた。

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