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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第74話 初めてのちゅーですわ。

 突然、流星群が極大を迎え、イナゴの大群が麦を食い尽くし、海底火山が噴火して新しい島が誕生し、天使を従えた神が降臨した。


 アルフォンスが彼女とのファーストキスのために用意した、ロマンチックな状況を全部破壊しつくしてしまうぐらい、ジュスティーヌの頭の中は混乱を極めていた。


 永遠と思えるような長い長い10秒ほどの後、アルフォンスは唇を離した。


「ジュスティーヌ、ちゃんと息をしないと」


 それだけ告げると、アルフォンスは再びジュスティーヌの唇を塞いだ。


 ああ、超新星爆発が起きてしまいそう……。いえ、腹黒皇子の罠にからめとられているのだから、むしろブラックホールに飲み込まれそうだわ……。レナレナ、ごめんね。わたし、最強の悪役令嬢なのに、すけこまし皇子に篭絡されてしまいそうだわ……。


 ジュティのおたんこなす! レナレナが三途の川の向こうからそう叫んでいる気がした。


 アルフォンスは再び唇を離すと、今度はジュスティーヌをきつく抱きしめ、「好きだよ、ジュスティーヌ」とささやく。ジュスティーヌはほとんど無意識に自分の腕をアルフォンスの背中に回していた。


「好きだ、ジュティ、もう一度キスがしたい」


 ここまでくると、ジュスティーヌは、もう自分の身に何が起こっているのかよくわからなくなっていた。


 どれだけ時間がたって、何度口づけをして、何回愛の言葉をささやかれたかわからない。天頂に昇った月の光が二人を照らし始めたとき、アルフォンスはようやく、「そろそろ戻らないとね」と残念そうに口にした。ジュスティーヌは、わずかにこくりと頷いた。


 が、立ち上がれない。人形にでもなってしまったかのように、すっかり体の力が抜けてしまっていた。


「俺のせいだね」


 アルフォンスは一段と増した”色気”という一般名称の付いた”毒気”を隠そうともせずに、そんな一言を吐いた。そして、ジュスティーヌを大切そうに抱きかかえた。ジュスティーヌは完全にされるがままだった。


 夜の暗闇にも目が慣れて、月明かりが足元を照らしてくれていたので、松明はもう必要なかった。静寂に包まれた、深い夜の森の中にいたジュスティーヌの耳には、アルフォンスの息遣いと、彼が散った落葉樹の葉を踏みしめ歩く音だけが響いていた。そんな心地よい音に促されるように、ジュスティーヌはそっと瞳を閉じた。


  ◇  ◇  ◇


 ふわふわの雲の上に寝転んでいると二人のおばちゃん巨人が現れる。一人は白い衣装を着ていて、もう一人はピンクだ。ジュスティーヌを挟んで「絶対に白」「いえいえ、ピンクじゃないと!」と激しく言い争う声が響いていた。しかも、なぜかジュスティーヌの脚を引っ張りながら。


 いつの間にかアルフォンスが公邸まで連れ帰り、ベッドに寝かせてくれたらしい。そして、ジュスティーヌは夢を見ていたようだ。


 ぱちっと目を開けると、ジュスティーヌは柔らかなベッドの上に寝ていた。そして、先ほどの夢の通り、おばちゃん二人が自分の脚を引っ張っている。正確にはニーハイブーツを脱がせようとしていたのだ。


「あらやだ! 目が覚めたのね、マジョリーヌちゃん!」

「あらもう! 私たちうるさかったかしらねぇ! 起こしちゃったようだったらごめんなさいね。あはははっ」

「せっかく目が覚めたことだし、お風呂に入って体中、磨き上げましょうね。あはははっ」

「それよりも、のどが渇いたわよね。美容に良いお茶でもいれましょうね。あはははっ」

「どっちがいいかしら?」

「どちらをお望みですか?」


 おばちゃん二人にそう問われて、ジュスティーヌは半分寝ぼけ眼で「ピンクの方で」と答えた。


 ミランダは自信に満ち溢れた声で高らかに自らの勝利を宣言した。


「あはははっ。あらやだ! あたしの勝ちみたいね! やっぱりマジョリーヌちゃんにはピンクのフリフリが似合うと思ったのよ。絶対にかわいいから殿下もメロメロ間違いなしよ!」


 えっ? このおばちゃん、今なんて? 殿下もメロメロ間違いなし? それは困る!! これ以上メロメロになったら本当に身が持たないわ!


 そんなことを考えてしまったものだから、あの森で味わってしまったアルフォンスの唇の感触が生々しくよみがえる。こうなったらあの甘く溶けてしまいそうなほど柔らかな感触を強制的に上書きするしかない。


 幸い、耳に残っていたくすぐったくなるようなささやき声の「キスがしたい」と「好きだ」は、このおばちゃんたちの「あらやだ! あらもう! あはははっ」が9割方デリートしてくれた。


「あ、あの、やっぱりお茶をください! いえ、できれば青汁をください! とびきりまずいやつを!」

「あらもう! お姫様は美意識がお高いのね! さすがだわ! あはははっ」


 こうしてジュスティーヌは青汁をガブガブ飲んで、お風呂に入った。


 そして、ついに――ミランダの推測では、アルフォンスをメロメロにすることがほぼ確実な――ピンクのフリフリの下着を身に着けた。


 結局、ミランダが買ってきたもののようで、ジュスティーヌの知らない真新しい下着だった。にもかかわらずサイズは割とピッタリだった。ものすごい目分量のボン・キュ・ボンでこれだけフィットしたサイズのものを選べるとは、これが昔取った杵柄というやつだろうか、おばちゃんは案外侮れないと感心するジュスティーヌだった。


 さあ、いつでも来るがいいわ。腹黒キス魔皇子。こうなったら、悪役令嬢の名誉挽回で、とことんメロメロに、いえメロメロを超えたメラメラにしてあげるわ! そうよ、わたしは悪女なのよ。メロメロになるのはわたしじゃなくてあなたのほうよ! おーほっほっほっほっ!


 心の中で高笑いまでしながら、ジュスティーヌは一瞬で爆睡していた。

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