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最強の悪女の仕立て方。~不幸な結婚をしたくないので、悪役令嬢を目指しているのに、なぜかイケメン皇子その他大勢に愛され、困惑しつつも学園生活を満喫していますわ!  作者: いか墨ドルチェ
第二章 悪女は日々、戦いにその身をおくのですわ――初めての決闘とできる冒険者への道

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第73話 とてもロマンチックな場所に来てしまいましたわ……。

 ジュスティーヌの唇が奪われそうになる危機を救ったのは、1匹のモテない大爪兎のオスだった。


 二人がイチャイチャしていた場所が、彼の巣穴の近くだったこともあり、そのオスは恐ろしく攻撃的だった。自分の縄張りに人間が足を踏み入れたことに怒っていたのだ。


 だが、ジュスティーヌには、その様がまるで自分たちに嫉妬しているように映った。朝、レナードとアルフォンスが言い争っている光景が目に浮かぶ。そして、昨日、レナードがアルフォンスに軽くあしらわれている様も。


 ジュスティーヌは、大爪兎の鋭い爪をレイピアではじき返しながら、心の中で念じていた。


 ごめんね、レナレナ。私は悪女だから、あなたのこと、踏み台にさせてもらうわね。この世はどこまで行っても無慈悲で無常なのよ。来世は、どうかもうちょいモテ男に生まれ変われますように!


 そして出会ったばかりの大爪兎・レナレナが死の苦しみにもがくことがないように一瞬で急所を突いて絶命させた。


 こうして、ジュスティーヌは無事に初クエストのクリア条件を達成した。


「ふぅ。単純そうに見えて、この世界の縮図のような、とても学ぶべきことの多いクエストだったわ」

「おめでとう、ジュスティーヌ」


 勝ち組モテ男のアルフォンスが拍手をしながら祝福してくれた。


「本当に学ぶべきことが多かったわ」


 ジュスティーヌは噛みしめるようにもう一度その言葉を口にした。


 レナレナ。わたしは悪女だけど、あなたの死は、決して無駄にしないわ。


「そう、それはよかったよ」


 気が付いたら、二人は丘の中腹辺りまで来ていた。日も暮れてしまい、木々の間から差し込む月明りだけで歩くのは心もとない。アルフォンスは魔法で松明を付けた。


 炎は獣を遠ざけてくれるが、虫は引き寄せてしまう。たまにどこからともなく飛んできた蛾が炎に近づきすぎてボッと音を立てて燃え上がる。その際に、蛾の鱗粉の影響なのか、炎は黄色や緑、紫など様々な色になった。


「わあ、きれい」


 お亡くなりになった蛾には可哀そうだけれども、ジュスティーヌは素直な感想を漏らした。


「ジュティは夜、こんな風に森の中を歩くのは初めて?」

「うん。お城の近くに森はあったけど、夜は行ったことがなかったなぁ」

「じゃあ、少し寄り道をして行こう。どうせ寮の門限までには戻れないから」


 ああ、そうか、この腹黒皇子のお屋敷に、というかあの「あはははっ」おばちゃんたちが手ぐすね引いて待ち構えているお屋敷に泊まらないといけないのね。メリーはちゃんとキュート系の下着を持ってきてくれたかしら。清楚系だったらどうしよう……。


 いや、あなた今夜アルフォンスに下着姿を見せるつもりですか! と、聞いた人が突っ込みたくなるようなことを考えながら、ジュスティーヌはアルフォンスに手を引かれて歩き続けた。


 アルフォンスが案内してくれたのは、古井戸の近くに七色ヒカリゴケが群生している場所だった。絵に描いたような幻想的な光景が目の前に広がっていた。


「そこの木の実は、割と甘いからこの場で食べられるよ。食べたことはある?」


 ジュスティーヌが首を左右に振るのを見て、アルフォンスは井戸の近くにあったヤマボウシの実をいくつか摘んでくれた。


「皮をむいて食べるんだ。中には種があるから気を付けて」


 そう言うとアルフォンスが一つお手本に食べてみせる。ジュスティーヌは同じようにして皮をむき、未知の果実を口にしてみた。


「どうだろうか?」

「んーっ、甘い。思ったよりもずっと甘い」

「だろ? こうして食べられるものと食べられないものを覚えて、食べられるものの味を知っておくことも冒険者には大切なことだからね」


 ついでに夕食用にと携帯していたサンドイッチを食べる。


 温かいお茶を飲みながら、目の前の光景に心を奪われていると、アルフォンスが声をかけてきた。


「どうかな?」

「うん、すごくきれいだと思う!」

「ロマンチックな光景だと思わない?」

「うん! えっ?」


 今、ロマンチックって言った!?


 今の二人にとってはロマンチックはいわば”禁句”であろう。それなのに油断して、ジュスティーヌはアルフォンスの言葉に思わず同意してしまった。


「さっき、俺が言ったこと覚えてる?」


 アルフォンスは目を細めながらジュスティーヌを覗き込んできた。


「ああ、えっと、種があるから気を付けて、だっけ?」


 ジュスティーヌは、この状況を誤魔化すためにものすごく適当なことを言って返した。


「うん、それも言ったけど、もっと大事なことだよ」


 ジュスティーヌはアルフォンスが言った大事そうな言葉を探してみたが、こうなると何度探してみても「キスがしたい」と「キスがしたい」しか出てこない。


 ああ、もう、2回も言うからだーー!!


「ジュティ、そろそろ観念して。俺も限界だよ。ジュティとキスがしたい」


 アルフォンスはもう一度自分の気持ちを伝えると、ジュスティーヌの手を取った。何かを確かめるように、その手に口づけをする。ジュスティーヌは真っ赤な顔をしているものの、決してそれを拒まなかった。


 今度はその手を自分の胸に当てる。アルフォンスのいつもよりも早い鼓動が手のひらを通して伝わってくる。


「あっ……」

「好きだ、ジュスティーヌ。キス、するよ」


 アルフォンスはジュスティーヌを抱き寄せて、優しくその唇を塞いだ。

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