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第6話 学園恒例イベント①――先輩令嬢に絡まれる――発生ですわ!

 ジュスティーヌとセドリックの行く手を阻む謎の令嬢軍団。その先頭にいた栗毛色の髪をした縦ロールの令嬢が目を吊り上げながら一歩前に出る。


「ジュスティーヌ王女殿下でいらっしゃいますか。少しお話がありますの。よろしいでしょうか?」


 きたーーー! こういうの待っていたのよ。すっごいウェルカム、大歓迎よっ!

 

「どこの馬の骨ともわからない女が王女である尊いわたくしに一体何のご用かしら?」


 ジュスティーヌは扇子を出すと口元で広げ、半分顔を隠しながら悪役令嬢っぽくこの台詞を言ってのけた。


 言っちゃったーー! こういうザ・悪役令嬢ってセリフ言ってみたかったの。こんなに早く願いが叶うなんて、幸先よすぎじゃない?


「わたくしはカイト殿下と同じフェデリス王国の出身で、ルブルム公爵家の長女サブリナと申しますわ。王女殿下は、ずいぶんと男性関係がお盛んと伺いましたが、わたくしたちのカイト殿下に手をお出しにならないでいただきたいの」

「あらまあ、何のことかしら? わたくしが娼婦のような閨狂いの尻軽女だからといって、誰それ構わずに手を出したりはしませんわ。わたくしにも選ぶ権利はありますもの」


 悪口を自分に倍返しする女、それがわたし、悪役令嬢のジュスティーヌなのよっ! そして、着実に相手を煽っていくこの話術!!


「なんですって! カイト殿下を侮辱したらわたくしたちが許しませんわ!」


 令嬢たちは完全にジュスティーヌの掌中に落ち、怒りをぶちまけてくる。


「そもそも、わたくしたち()って、あなた方は()()()の婚約者か何かですの? ()()()にこんな大勢の婚約者がいるとは知りませんでしたわ」


 はい、名前呼び捨て、ここで使わせていただきます! ほらほら、もっと反応しなさいよ。あなたたちにはできないでしょ~、名前呼び捨て!


「なっ! なっ……!」


 令嬢たちはわなわな震えて言い返すことができない。


 気が付くとギャラリーがかなり増えて、「なー、あれみろよ」みたいな声もちらほら聞こえてくる。よっし!


「あなた方が()()()を勝手に慕ったとしてもわたくしに関係ありませんが、わたくしがさも()()()に懸想しているような言いがかりはやめていただきたいものだわ! ()()()とわたくしの間にはまだ何もありませんのに。()()()もあなた方の行動をどう思うでしょうか……」


 カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、カイト、六連発!


 実は騒ぎを聞きつけて群がってきた聴衆の中には当の本人であるカイト王子もいた。出て行ってこの騒ぎを収拾すべきなのだろうが、姫と令嬢たちの間に飛び散る見えない火花の激しさにたじろいでしまい、足を動かせずにいた。


 令嬢たちはこれ以上言い返すことができずに押し黙ってしまった。


「あら? お話はもうお終いですの? では、そこをどいてくださる? 教室で()()()ほか、10名の男たちが胸をときめかせてこのわたくしのことを待っていますので、失礼。おーっほほほほほっ!」


 一度やってみたかった高笑い! 一生懸命練習しておいてよかったぁ~。決まったわ、これはもう完璧に悪役令嬢そのものじゃない! ひゃっほーい!


 さあ、あとは堂々と教室まで悪役令嬢のオーラをまき散らしながら歩くだけよ。取り巻きが一人しかいないのは残念ね。さっきの令嬢の一団のように最低でも5人ぐらいはほしいわよね。アカネさんのことはタルトで買収するとして、あと三人、同じ寮の男たちをどうやって懐柔しようかしら?


 そのようなことを考えながら歩いていると、後ろから声をかけられた。


「あの、ジュスティーヌ姫、おはよう……」

「あら、カイト。おはよう」

「その……」


 カイト王子はなんだかバツが悪そうだ。先ほどの対決を見ていたのだろうか?


「カイトは人気者なのですね。あのようにご令嬢たちがあなたのことを気にしているなんて」

「あ、いや、ジュスティーヌ姫、申し訳ない。妙なことに巻き込んでしまって」

「カイト、何も謝ることなんてないわ」


 むしろ感謝したいぐらいよ! 悪役令嬢として名をとどろかせる絶好の機会をもらえたのだから!


「その、君にこんな話をしても仕方がないとは思うのだけど、彼女たちは僕の婚約者候補なんだ。僕は王子といっても三番目だから、自国の貴族の令嬢と婚約することになる。まあ、あちらからすると家門の繁栄のために王子妃の座を勝ち取る必要があって……」

「同士!」


 ジュスティーヌは思わずカイト王子の手を両手で取って握りしめてしまった。


「えっ?」

「あ、失礼。ただ、その事情、少し、いえ大いにわかりますわ」


 ジュスティーヌは思わずカイトに同情した。彼もまた政略結婚の犠牲者なのだ。というか、実はあの令嬢たちも? いや、彼女たちは王子妃の座よりもきちんとカイト本人を欲してそうだった。実際どうなのかはジュスティーヌにはわからないが。


「カイトはどちらのご令嬢がお気に召していますの?」

「いや、僕にはそんな選択肢はないよ。決めるのは僕じゃないから。だから僕は誰か一人を選ぶようなことはしないでいるんだ。本人に妙な期待をさせてしまったら申し訳ないからね」


 ちょっと、いいヤツ過ぎない? いいヤツ過ぎでしょう! だけど、王子殿下、あきらめてしまってもいいの? 誰かが選ぶままに政略結婚をさせられてしまっても?


「カイトは抵抗しないんですの? 誰かが決めるままにそれを受け入れるのでよろしいのですか? わたくしは、抗ってみせますわ、どんな運命だって、この手で変えてみせます!」


 やばっ、ちょっと感情移入しすぎてしまったわ。悪役令嬢はもっと冷静でないと。


「ジュスティーヌ姫はかっこいいね。まるで……」


 …………まるで、なんですの? まるで悪役令嬢ですか? ですよね?? でしょう!!


「あ、いや、なんでもない」


 そういってカイト王子はちょっと恥ずかしそうに頭を掻いた。


 ガクッ。えっ、続き、めっちゃ気になるんだけど、ねえ、続きはーーー!?

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