表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/64

第59話 ハッピーな聖女候補たちVS凶器な王子様ですわ。

 昼時のカフェテリアは、無料で食事ができるというだけあって、休日にもかかわらず思いのほか混みあっていた。


 テラス席で食事をしていたものは悲惨だった。おいしい食事の匂いをかき消すように、生臭い匂いが近づいてきたからだ。それに気が付いた生徒は、慌てて室内へ避難していた。しかし、逃げ遅れた一団が……。そうあの、もぐもぐおいしいイートの聖女候補様ご一行である。


 この日も、レッツゴーエンジョイ団の幹部たち――戦闘技術科の平民の同級生8人と、お勉強をした後で食事をしていたのだ。


「はーい、むにゅむにゅあーん、ご飯でちゅよー」

「みみっくも、おいしいイートだお~、あーん」


 ”むにゅむにゅ”と”みみっく”はソフィーのファンクラブメンバーなのだが、一体元の名前が何なのか、すごく気になる。


 それはおいといて、そんな感じでランチタイムを楽しんでいたら、急に生臭い匂いと共にレナードたちが姿を現したのだ。


「うっ、くせえ、なんだ?」

「おええ」

「いやんっ、なにこれぇ。くっさーい。って、肉男!?」


 レナード殿下のあだ名は肉男なんだ……。せめて筋肉男にしてやりなさいよ。


 テラスにいた聖女候補様ご一行に気が付いたレナードは、声をかける。


「おお、ハッピー娘とハッピーな仲間たちじゃないか! お前らにも俺様の披露宴に参加させてやろう! 感謝するがいい! ははははっ」


 ハッピー娘、確かに……。案外、レナード殿下ってセンスある!? っていうか、披露宴って、魚の解体披露の(うたげ)だよね?


「ソ、ソフィー、ここにいたら俺ら邪魔になりそうだから、中に行こうか?」


 ソフィーの取り巻きのモブ男Aが提案する。すると、レナードはその男をつまみ上げた。


「ひええ!」

「俺に遠慮は不要だ! ん? お前、武術鍛錬クラブにいたなあ? よし、この後俺と決闘するか!? いや、なに感謝は不要だ! はははははっ」


 いつものように勝手に話を進めていくレナード。こうなると、他のものはもう何も言えなくなる。余計なことを言うことで目立って、レナードに目を付けられたら大変だからだ。


「ねえ、レナード殿下って決闘のときは武器、何を使うの?」


 純粋な好奇心からジュスティーヌがカイトに尋ねた。


「ああ、兄上は武器」


 は使わないんだ。基本的には体術だけで戦うからね。と答える前にレナードが被せるように回答する。


「男たるもの! 己の拳ひとつで勝負すべしだああ!」

「拳ひとつ? 片手ってこと? 足技は使わないんですか? ほかの体術は?」


 拳ひとつを言葉通りに受け取り、さらに質問を重ねるジュスティーヌ。


「すまないーー!! 俺は卑怯な男だああ! 今まで両手を使ってしまっていたあああ! 足や頭もだあああ! どうか離婚しないでくれええ!!」


 うん、大丈夫。離婚はしないと思う。そもそも結婚していないから。


 レナードは頭を抱え込むと、近くにあった鉄製のテーブルにガンガン頭を打ち付けた。


「殿下! レナード殿下やめてください。お強い殿下に攻撃されたら、テーブルが壊れてしまいますわ」


 慌ててジュスティーヌが止めに入る。鉄のテーブルはゆがんでしまっていたが、レナードの額は少し赤くなっているぐらいで無傷だった。


 この頭で攻撃されたら、普通の人間だと死ぬわ、これ……。


 悪意なき生ける凶器・レナードの鋼鉄を超えた強靭な身体に、ソフィーたちは完全に恐れをなし、言葉を失っていた。


「それよりも、殿下。早くこの魚をさばいてください。わたくし、お腹が空いてきましたわ」


 まるで凍り付いた辺りの空気を溶かすように、ジュスティーヌがそう催促した。彼女は空気が読めるできる女。なわけはなく、単純にはやく魚をさばくところが見たかったし、この魚を食べてみたかったのだ。


「お、おう! そうだった! 愚弟よ! お前の剣を貸すのだ!」

「嫌ですよ。厨房に行って包丁や必要な道具を借りてきましょう。申し訳ない、ジュスティーヌ姫。ここで少し待っていて」


 そう言うと、カイトはジュスティーヌと魚を残し、兄の背を押しながらカフェテリアの室内へと消えていった。


 鬼の居ぬ間に洗濯ではないが、肉男が去ったことで勢いづくソフィー。


「はあ、もう。ジュリジュリってば意地悪なんだから、くすん。あたし、泣いちゃいそう。レッツゴーノ―エンジョイえんえんだよお」


 えっ、わたし何もしてないけど? しかも、ノーエンジョイならば、そもそもレッツゴーじゃないのでは?


「あたしが肉男、怖いの知ってて、いじめるために連れてきたんでしょ? そーいうのよくないと思う。めっだよぉ!」

「ソフィー大丈夫? マジで怖かったよなぁ」


 親衛隊の面々が彼女に同調はするものの、ジュスティーヌを責めることはしなかった。もしソフィーに続いて彼女を糾弾している間に、あの殿下が戻ってこようものならば、彼らの命は失われたも同然だ。


「それに、ジュリジュリってばやっぱり超エッチ!! アルフォンス殿下にフラれたからって、肉男に乗りかえるなんて! エッチな身体が好きだからってエッチすぎる!」


 いや、だから、フラれてはないし。それに、エッチ度で言ったら、どう考えてもあの腹黒皇子の方がエッチでしょ!?


「悪いけど、レナード殿下は全然エッチなんかじゃないわ!」

「うそ! 絶対にすっごいエッチなんだから!」

「ソフィーは殿下の何をもってしてそんなにエッチエッチ言うのかしら?」

「もう、見るからにエッチでしょ! すぐに触ろうとするしぃ」

「えっ、ソフィーさん、殿下におさわりされたのですか?」

「えっと、触られたのはあたしじゃなくてジョンピーだけど」

「ジョンピー!? 誰ですか、それは?」


 ジョンピーは恐る恐る手をあげた。さきほどレナードにつまみ上げられ、決闘を申し込まれていたモブ男A氏である。


「えっと、あれはおさわりされたのではなく、締め上げられようとしていたのでは?」


 あれはとりあえず、おさわりなどと言う生易しい感じではなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ