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第56話 本気の鬼ごっこの果てに見えてくるものがあるの……ですわ。

 広場で鬼ごっこに勤しむ子どもたちとPDFの4人。


「はははっ、一番の鬼ごっこのプロは俺だぜ!」


 最後まで残った男の子が高らかに宣言する。


「ふっ、甘いわね、坊や。この魔法少女マジカール様に捕まえられない男なんていないのよ」


 それはある意味真理かもしれないとセドリックたちは思う。


「一瞬で、あなたを捕まえてみせるわよ」


 そう口にするとジュスティーヌは力強く地面を踏みしめ、軽やかに空に舞いあがると、クルクルと空中で5回転して、まだ捕まっていなかった男の子の目の前に一瞬で降り立った。


  逃げていた男の子も、捕まった男の子たちも、4人のバケモノも、広場で鬼ごっこを眺めていた人々も、ジュスティーヌのウルトラC級の大技に見惚れていた。


「はい、捕まえましたわ」


 広場からはどこからともなく拍手が巻き起こった。


「本日の鬼ごっこの勝者は、魔法少女マジカールとその手下たちだったわね。でも、あなたたちもなかなかやるじゃないの。また、来週、この広場で熱い戦いを繰り広げましょう!」


「おう! 次はもっと仲間増やしておくからな。覚悟しろよ、マジカール!!」

「そうだぞ、次はつかまらねえ、このばけものやろう!」

「言ったな、このクソガキ! バケモノの力なめんなよー」


 そう言うと、セドリックは子どもを軽く担ぎ上げてみせた。子どもは「おろせよー」と言いながらも嬉しそうだ。バケモノとして案外ノリノリのセドリックである。


「わたしたちがいないときも、いつまでも遊んでいないで、ちゃんとあの鐘がなったらお家に帰るのよ。そうでないと、次に会った時に遊んでやらないわよ」

「おう、わかったぜ、マジカール。また金曜日待ってるからな。絶対に来いよ!」


 そう言うと子どもたちは満足げな表情で手を振りながら家に帰って行った。


 毎週金曜日、広場での子どもたちとの放課後鬼ごっこが慣例化しつつあった。


 カイトは鬼として子どもたちを追いかけている間、童心に返っている自分を感じていた。そして、兄たちと遊んだ幼き日々を思い出していた。


 あのころの自分はもう少し活発だった気がする。上二人の兄に負けないように一生懸命走り回った。体の小ささを活かして上手く隠れる狡猾さを発揮して、二人の兄を出し抜くこともあった。


 いつの間にか、品行方正であらねばならぬと自分を律しすぎたのかもしれない。


 海坊主という今の自分とはまったく異なる新たな姿で、子どもたちと追いかけっこをすることで、彼は大切なことを思い出したような気がした。


「ジュスティーヌ姫、素晴らしいよ。この活動は本当に素晴らしい!」


 様々な思いが込み上げてきて、カイトの口からは自然と言葉がこぼれ落ちた。


「気に入ってもらえたようでよかったわ。もしカイトさえよかったら、この先も平和防衛隊の活動に参加してもらえないかしら、海坊主2号として」


「もちろんだよ! ぜひとも参加させてほしい。あの子どもたちともまた鬼ごっこしたいしね。セドリック先輩、次は負けませんよ」


「は、ははははっ」


 今回、セドリックは一人で6人の子どもを捕まえている。カイトは4人でミハエルは3人だった。セドリックはもう少し自分の成果を誇ってもいいような気もするが、なぜか乾いた笑いをした。ジュスティーヌの海坊主2号と言う言葉が引っかかったのだ。つまり、俺は永遠に海坊主1号なのだと。


「私としてはこの単純すぎるルールに物申したい気分ですな」


 一人も捕まえられなかったジーニアスが異議を申し立てる。


「世界には様々な鬼ごっこが存在するはず。運動神経がよくない者でも楽しめるようなルールを導入すべきではっ!」

「負け惜しみを言わないでくださいよ、殿下」


 運動神経のいいカイト並みの活躍をみせたミハエルはかなり得意げだ。


「まあ、でも、確かにいろいろな子どもが楽しめるルールを取り入れてもいいかもしれないね」


 カイトはすっかり鬼ごっこの虜となったようだった。


「そう、それならば、あなたが考えてくるといいじゃない、その新しいルールとやらを。子どもたちがそれで納得するのであれば、わたくしは構わなくてよ」


「はいっ、必ずやマジカール様をご満足させるウルトラ鬼ごっこを考案してみせます!」


 子どもの遊びである鬼ごっこと真摯に向き合い、持てる力のすべてを注ぎこもうとする、将来の世界の指導者たちだった。


 一休みしたジュスティーヌたちは、担当する地区へと足を運んだ。先週のケンカを仲裁した件がそれなりに知れ渡っているのか、今日は露骨な無法者はいなかった。


 巡回の途中、道に迷っているらしい女性の冒険者グループがあったので、声をかけようとしたところ、むしろ不審者だと思われて逃げられた。


 そのことでジュスティーヌはセドリックに責められる。


「そりゃ、海坊主は子ども受けはするかもしれませんよ。ですが、相手は極々普通の女性です! 姫様は海坊主な男に声をかけられたいですか!」


「そんなの、かけられたいに決まっているでしょ。だって、海坊主よ! 海の妖怪がどうして街中にいるんだろうって思うじゃないの!」


「いや、海坊主ですが、どう見ても海坊主の()()でしょ、これ。祭りでもないのに妖怪の仮装しているなんて、不審者かもしれないって思うのが普通だと思うのですが?」


「セドリック、人を見た眼で判断してはいけないわ。海坊主は確かに妖怪かもしれないけれども、悪人が悪人の仮装をするとは限らないじゃないの。むしろ、悪人は、自分が悪人であることを隠すために善人に化けると思うわ。このわたしのように!」


 ああ、そうだった。姫様の中では、この魔女っ()マジカールは正義の味方なんだった……。


 とりあえず、セドリックの脱・海坊主計画は今回もあえなく失敗するのだった。

最後まで読んでくださりありがとうございます。

次回は2日後の2月12日(木)18:30更新予定です。

この先もよろしくお願いします!

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