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第54話 クズの頂点に君臨するクズすぎる王子のお話でしたわ……。

 カイト王子には兄が二人いる。一人は今までそこで暴走していて、夕日に向かって去っていったレナードだが、もう一人王太子のアーロンはとんでもないクズ男だった。


 カイト王子によると、アーロンは最初、親の決めた隣国の姫と婚約をしていた。彼の母がその国の王妃と親しく、それぞれの子どもを娶わせたいと思ったことから決まった婚約だったらしい。


 しかし、お互い年ごろになり、再開した際に、アーロンは本人の目の前で「こんなブスが王妃になるのかよ」と口走ってしまう。その姫は決して不細工ではなかったが、誰しもが思わず振り返るような華やかな容姿はしていなかった。以来、姫はすっかり落ち込んでしまい、婚約も両者合意のもとに解消されることとなった。


 その後、アーロンは、彼の望みで自国内の美人と名高い公爵令嬢と婚約をした。そして、16歳になる歳にこの学園に入学した。彼を待ち受けていたのは、将来、国王となる王子様へ猛アピールをしてくる女子生徒たちだった。


 アーロンは完全に勘違いし、有頂天になった。「俺は世界一モテる男だ。女を選び放題じゃないか」と。大勢の女子たちに思わせぶりな態度をとり、その対立をあおった挙句、男子生徒に一番人気だった平民上がりの男爵令嬢を自らの恋人とした。それと同時に、先の公爵令嬢との婚約を解消し、この男爵令嬢を新たな婚約者としたのだ。


 ここまでの話だけでも十分クズなのだが、彼のクズ下衆っぷりはここでは終わらなかった。


 長期休暇に国にこの男爵令嬢を連れ帰り、周囲にお披露目をするとともに、お妃教育を受けさせたのだが、なんせ平民出身の男爵令嬢だ。短期間では目に見えた成果はでず、いまいち上品さに欠けたままだった。そもそも、アーロン自身、彼女の上品ぶっていないところがかわいいと思って選んだぐらいなのだから、それをある程度分かっている男爵令嬢としては変わりようがなかったとも言える。


 にもかかわらず、陰で貴族たちに彼女の悪口――ひいては、彼女を婚約者とした自分の悪口を言われているのではないかと思った王子は、だんだんこの男爵令嬢が煙たくなった。なぜ、この女はその辺の令嬢が当然のようにできることができないのだと疎むようになった。


 結果、あっけなくこの男爵令嬢は捨てられてしまった。


 そして、アーロンは高位貴族で美しい令嬢から新たな婚約者候補を選ぶことにした。普通に考えて、三度も婚約破棄を繰り返している王子に誰が嫁ぎたいと思うだろうか。しかし、こんなクズ男でも”王太子”という立場にあるため、まだまだ婚約者候補になるべく近づいてくる令嬢はそれなりにいたのだ。


 そして、今度は学園で知り合った他国の侯爵令嬢と婚約することになる。しかし、この侯爵令嬢が相当な曲者だった。相手は誰でもいいので、とにかく自分が王妃になることだけを目標に生きてきたような女性だったのだ。


 彼女は、他の令嬢たちを蹴落とすため、悪の限りを尽くした。手下となる取り巻きの男子に命じて、彼女たちの持ち物を壊したり、食べ物に虫を入れたり、カバンに蛇を入れたり、下剤を盛ったり、それでもアーロンを諦めようとしない令嬢のことは取り巻きの男に襲わせさえもした。これぞ真正の悪役令嬢。自称悪役令嬢のジュスティーヌとは桁違いの悪女である。


 これらの悪事が婚約後に大々的に知れ渡ることとなって、彼女は婚約者の地位を失うとともに、家族もろとも爵位を没収の上、辺境へと追放された。


「はあー? 何その女!! 罪のない人に危害を加えるなんて、悪役令嬢としてとしてのプライドがないのかしら? 全くなってないわ! その女は、悪女ではないわ、ただの犯罪者よ!」


 姫様、何ですか、その感想は……。確かに悪女とかいうレベルを超えてはいますがね。


 これだけのことがあっても、王太子アーロンは自分に非があるとは思っておらず、すべてが自分がモテすぎるが故い起きた悲劇だと信じているらしい。廃嫡されてもいいようなレベルの話だが、彼自身が他の令嬢たちに嫌がらせ等を行ったわけではないとして、これといったお咎めなしで済んだのだ。


 学園内で婚約者を探すことを断念したアーロンは、今は各国の姫に輿入れを打診しているらしい。が、これまでの経緯を多少なりとも耳にしている各国の王室は、当然、頭を縦に振るはずがなく、婚約者選びが難航しているとのことだった。


「信じられないわ! なんだかその王太子の話を聞いていたら、セドリックが菩薩に思えてきたわ」


 ペットから急に菩薩に昇格したセドリックである。


 それにしても、こういう超テンプレートなクズ男がいるから、嫌なのよ、結婚も、婚約も! やっぱり、わたしはわたしなりに悪役令嬢を極めるしかないわ!


 カイトは、この兄と兄の婚約者候補たちの凄まじいまでの泥仕合を、思春期のまだ純真なときにこれでもかというぐらい見せられているのだ。これでは、積極的な女性が恐ろしくなったとしてもやむを得ないと誰しもが思うだろう。


 今でこそ、カイトは王位継承権第三位ではあるが、上二人の兄があのような状態だと、当然、貴族たちはカイトに期待する。次期国王は彼になるに違いない、否、なってほしいと。貴族たちが、是が非でも娘をこの男の婚約者としたいと思うのは必然ともいえた。当然、令嬢たちのカイトへの自己アピールも相当熱がこもったものとなる。


 そして、カイトが彼女たちを適度に避けるものだから、余計に令嬢たちは追いかけたがる。このような状況下で唯一救いなのが、彼女たちが例の侯爵令嬢のように、互いに潰しあいをせずに、共同戦線を張っていることだろう。もっとも、彼女たちも先の侯爵令嬢のことは知っているわけで、それもあって血みどろの修羅場が回避されているという側面もあるのだが。


 カイトの相談は、想像以上に重いものだった。なんと返答すべきだろうかと、話を聞いてしまったジュスティーヌ、セドリック、アカネは途方にくれるしかなかった。

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