第50話 だってサキュバスのような悪役令嬢ですもの!
いつもご覧くださりありがとうございます。
早いもので、50話まで更新することができました。
2月は、毎週水曜日以外の週6日間、時間も夕方の18:30としようと思います。
次回は2月5日(金)18:30の更新となります。
今後ともよろしくお願いいたします。
一人の男を巡って睨みあう令嬢軍団と悪役令嬢のジュスティーヌ。ついに、その戦いの火ぶたが切って落とされる!
「姫様……先日は大変申し訳ございませんでした」
と、思ったら違った。普通に謝罪される。
「わたくしたちが浅はかでしたわ。まさか王女殿下がアルフォンス殿下と恋仲だとは知らず……」
へぇー、わたしも知らないわ、それ。
「カイト様が姫様に心を奪われてしまうのではないかと心配になってしまい……ですが、そうだとしてもお相手がアルフォンス殿下となればさすがにカイト様も敵わないといいますか……」
「とんだ誤解で大変なご迷惑を。本当に申し訳ございません!」
令嬢たちはこぞって頭を下げて謝罪した。
「ああ、その件でしたらもう構いませんことよ」
第二ラウンド開始かと思ったら、なになに、もう戦意喪失なわけ? 早くない? はぁ、残念。それもこれもすべてはあの腹黒皇子のせいじゃない! ムキーー!!
「それにしても、先ほどの言葉は聞き捨てなりませんわ」
「えっ?」
「あなたたち、カイトがアルフォンス殿下に敵わないですって! あなた方はカイトのことを心から愛する親衛隊なのではなくって!? そのあなた方がカイトの実力を見くびってどうするの!?」
自信なさげな顔をしていた令嬢たちはハッとなり、下げていた頭を上げる。
「それとも、あなた方のカイトへの想いはその程度なのかしら!? あなた方も”皇子の剣”をご存じでしょう? 彼らのアルフォンス殿下に対する忠誠……いえ、あの暑苦しいまでの男惚れっぷりを少し見習ってみたらいかがかしら? それに、どうしてわたくしがカイトを狙っていないと言い切れますの? わたくしが男を両天秤にかけるサキュバスのような悪女で、どちらも虜にした挙句、飽きたらポイッと捨てるような女かもしれませんことよ」
ふふふっ、男がいるという噂があってもそんなことでへこたれないのが悪役令嬢なのよっ!
「ジュスティーヌ姫様! ありがとうございます!! わたくしたち、完全に目が覚めましたわ」
そうでしょ、そうでしょ。ほら、遠慮せずに舌戦を挑んできなさい!! わたしは何回戦だって行けるわよっ! なんせ真の悪役令嬢なのだから!
「あの、それで、その、大変厚かましいお願いなのですが、どうかカイト様とわたくしたちの間を取り持っていただけないでしょうか?」
「先ほど、姫様は愛の女神と伺いました。どうかお願いいたします」
そう言うと、カイト親衛隊のご令嬢たちは一斉に頭を下げてきた。
えっ、なんか恋から愛に進化してない? どっちも無縁なんですが!? まぁ、でも、彼女たちとカイト王子を追えば何らかのスクープにありつけるかもしれないわね。
「どういうことかしら? とりあえず、お話を聞かせてくださる?」
ジュスティーヌは令嬢たちに席を勧めた。
彼女たちはカイトと同じ国の貴族の令嬢で、婚約者候補である。夜会やお茶会といった男女の交流会があるたびに、カイトに自分たちを売り込むべく必死にがんばっているらしい。一方のカイトときたら、暖簾に腕押し状態で、誰のことも同じようにしか扱わず、裏を返せば誰のことも相手にしていないように見えるとのことだった。正直、何をどうすれば彼に気に入ってもらえるのか、まるで分らず、彼女たちは迷走をしている状態の様だ。
以前、カイトから少し聞いた話と一致点も多い。彼は、そもそも恋愛結婚などする気がないのだろう。一国の王子という身分に相応しいと第三者が判断した令嬢を、自らの伴侶とするだけだと思っているのだ。彼は、そこに自分の意志を含ませるつもりがないのだ。
「追えば追うほど逃げたくなるというやつですわね」
ジュスティーヌは、ようやくもっともらしいことをしみじみと口にした。
あれ? とういうことは、逆にわたしがあの皇子を追いかければ逃げてもらえるのでは?
今まではなんとなく避けようとしていたから、面白がってしつこく追いかけまわされている気がする。令嬢たちとの会話の中から思いがけないいいアイディアを得ることができてしまった。あまりにもしつこいようだったら今度試してみようかと思う。
だけど、追いかけるってどうやって!? こっちから「アル、わたくしの唇があなたを欲していますの。約束した通り、早くダンジョンにいきたいですわぁ」とか言わなきゃいけないわけ!? いや、行きたいけど行きたくないというか。とにかく、絶対に無理無理無理!!!
「ということで、熱烈に追いかけたい気持ちもわかりますが、一歩引いてみるのもありなのでは? 特にカイトはわたくしから見ても女性に対して積極的な殿方ではありませんし。少し考える時間を差し上げたらいかがかしら?」
「さすがの慧眼ですわ! まさに恋愛の女神様ですわ!」
「姫様、わたくしも恋の道に迷った際にはぜひともご相談させてください!」
外野のご令嬢たちが感嘆の声をあげる。
ついに、恋も愛も合わさってしまった。実際はどちらも無縁なのに。
そして、翌日にはなぜか「放課後、グランメゾンのティールームに行くと恋愛の女神であるジュスティーヌ姫様が恋の悩みを解決してくれる」というはた迷惑な噂が学内を飛び交っていた。
いや、この学園、情報が伝わるスピード凄まじくない!?




