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第48話 ネタ集めは堂々と、だって悪役令嬢ですもの。

 久々にジュスティーヌとアカネは、ジャーナリズムクラブの活動――スクープを求めてその辺をブラブラすることにした。


 ここ数年の間に学園で起きた事件というと、婚約者の奪い合いに端を発する令嬢同士の口論からの大乱闘、パーティを利用した公開処刑的な婚約破棄、美少女が集団でいじめられてそれを庇った王子様たちが悪役令嬢を断罪、三股が発覚した男が集団リンチ……ではなく大規模な決闘でボコボコにされたことなどである。


 この手の事件は急には発生しない。必ずどこかに事件の芽があるはずだ。


 令嬢たちの話を盗み聞きして、校舎裏でイチャイチャしているカップルを尾行し……はあ、これじゃあただの探偵風コソ泥じゃない。隠れてこそこそするから後ろめたいのであって、こうなったら堂々とするに限る。悪女たるもの、悪行に対して後ろ指を指されることを恐れてはいけない!


「ねえ、アカネ。一緒にお茶しましょう。グランメゾンのティールームで」

「ええっ! ですが、そこは貴族様御用達の場所では?」

「別に貴族以外使っちゃいけない決まりがあるわけじゃないし。お金はわたくしが出すので、よろしいでしょ? ワイロよワイロ」


 PJL3()1()メンバーでもあるアカネは、この姫のことをよくわかってきていた。賄賂を贈る割には、それと引き換えになにかとんでもない要求をするようなことはない。姫様は周りに気を使わせないために、わざと「賄賂」などと言って悪女ぶっている実はいい人なのだと。


「わかりました。では、遠慮なく買収されます!」


 そんないい人な姫様に対する大正解な返答はこれしかない!


 もちろん、ジュスティーヌはアカネが内心で彼女をいい人だなんて思っていることは全く知らない。


 放課後、グランメゾンのティールームには多くの貴族令嬢がいておしゃべりに花をさかせていた。彼女たちの話を堂々と聞かせてもらおうではないか。事件のネタの欠片が落ちているかもしれないのだから。


 ジュスティーヌとアカネはど真ん中の席に陣取った。そして近くの令嬢たちに挨拶をして回った。


「ごきげんよう、皆さん。どうぞ皆さんはいつも通りにおしゃべりを楽しんでくださいませ。もし、何かお困りのことがあってわたくしにお話したいことがございましたら、遠慮なくどうぞ」


 アカネは心の中で密かに、「この姫様は諜報員にだけは絶対になれないな」と思った。


 ジュスティーヌはアカネと二人、運ばれてきたお茶とストロベリータルトを堪能していた。


「このタルトはまあまあね」


 あの腹黒エロ皇子の店のタルトの味が、圧倒的に自分の心をつかんでいることがなんだか悔しい。


「あの……ジュスティーヌ姫様、実はわたくし、どうしても姫様にご相談したいことがあるのですが……よろしければ、聞いていただけますでしょうか?」


 いきなりきたわ! さあ、どんな情報があるのかしら、じゃんじゃんお話なさいな!


「よろしくってよ。なんでもお話になって」


 近くのテーブルに座っていた令嬢数名がこちらにやってきたと思ったら、その中の一人が話し出す。


「あの、わたくしってどちらかというとかわいい系じゃないですか?」

「は、はあ……」

「だから、ずっとかわいい系のドレスしか似合わないんじゃないかと思っていたんです」

「は、はあ……」

「でも、先日のパーティでわたくしと同様にかわいい系の姫様が赤と黒のセクシードレスをお召しになっているのをみて、羨ましくなっちゃったんですの! でも、かわいい系のわたくしにあのようなドレスが着こなせるかどうか自信がなくて……」

「それ、わたくしも同じこと考えていましたの! 姫様のようなドレスに少し憧れるのですが、露出が多いので殿方にどのような目で見られるかと思うと、かわいい系のわたくしとしては躊躇してしまって……」


 悪役令嬢のわたしにする相談がそれ!? しかも、かわいい系連発しすぎでは!? なんか平和でいいわね……。だけど、どんな相談をされても悪役令嬢の悪は揺るがないのよ!


「女は皆女優よ! そして、ドレスは衣装よ! 衣装を着た途端、わたくしたちは舞台に立つ女優になれるのよ。なぜ人の目なんて気にするのかしら。なりたい自分であればそれでよろしいじゃないの。堂々となさいな!」


 ふっ、決まったわ。カッコよすぎるじゃない、わたし。悪の華って感じで。


 自称かわいい系のご令嬢たちはジュスティーヌの演説を聞いて、自信をつけたようだった。「姫様、ありがとうございます! かわいい系のわたくしですが、次は少し色っぽいドレスに挑戦してみようと思いますわ」と言うと、満足げに自分たちの席に戻っていった。


「あの、わたくしも聞いていただきたいお話が……」


 また、別の令嬢が友達と二人で少々おどおどしながらジュスティーヌのもとにやってくる。


 今度は何かしら? またかわいい系のわたくしとかの相談じゃないといいのだけど……。こちらの方々はかわいい系というよりは、清楚系といったところかしら?


「あの、姫様は、その……とても殿方と親しいと見込んでの相談なのですが……」


 そうよ! わたしは男を手玉に取って篭絡した挙句、下僕としている真の悪役令嬢ですもの! さあ、何でも相談なさい! 婚約者がレッツゴーエンジョイな感じの自称かわいい系の女に奪われそうとか、そういうのだとかなり望ましいわ。わたしがあなたに代わってお仕置きしてやるんだからっ。


 清楚系令嬢の相談事に、大いに期待を寄せているジュスティーヌであった。

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