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第46話 悪役令嬢、下僕をゲットしてしまいましたわ。

 これから学園が休みの週末は、冒険者ランクアップのため、アルフォンスと共にクエストを受注してこなしていくことになったジュスティーヌ。完全に彼のペースに飲まれてしまっているのだが、冒険者はそもそも自分自身がやりたいことだったので、よしとすることにした。


 休み明け、いつものようにセドリックやアカネたちと登校しようと、寮のエントランスをでると、皇子の剣同盟とPJL2()7()のメンバーが立っている前に一人の男が土下座していた。


 あの男、インテリ眼鏡王子である。あれだけ激しくジュスティーヌをののしっておきながら、一体どの面下げてここにきているのだろうか。


「何の用ですか?」


 ジュスティーヌを庇うように、セドリックが一歩前に出て問う。


「ジュスティーヌ姫様、先日は大変失礼いたしました。私が間違っておりました。姫様の蹴りの尊さに漸く気が付きました。どうかお許しください」

「そう言われて許せるわけがないだろう」

「はい、おっしゃる通りでございます。が、どうか、どうかこのジーニアスめにもう一度機会をお与えください。姫様がお望みであれば、このジーニアス、犬にだってなります! わんわん」

「犬に失礼だから、やめてちょうだい」

「はい、おっしゃる通りでございます。では、下僕になります」

「あなたの顔を見るのも不愉快だわ。これ以上の謝罪は結構ですので、二度とその顔を見せないでちょうだい」

「ははーーっ」


 平伏すジーニアスの横を通ってジュスティーヌたちは登校した。


 あれだけぼろクソに文句を言っておきながら、反省したといって謝罪してくるとは、一体どんな風の吹き回しだろうか。まぁ、でもジュスティーヌは今日はちょっと気分がいいのだ。なんせ憧れの冒険者になったのだから!


 そして、あのインテリ眼鏡のおかげでブチ切れて暴走した結果、おそらく自分は真の悪役令嬢に覚醒したのだと自負があった。こうなったらもう怖いものはない。気に食わない男は、この先ジャンジャン投げ飛ばしてやろうと思う。


「ふふふっ、あはははっ、おーっほほほほっ!!」


 歩きながら急に高笑いとかしてみる。


「姫様、ご機嫌のご様子で安心しました! もしかして、あの後、殿下ととぉーってもいいことがあったとか!?」


 オリビアが探りをいれてくる。


「ええー? んまぁ別に、いいことっていうかあ。うふふふっ」


 ふふふっ、なんせわたしは冒険者だもの! そして、覚醒した真の悪役令嬢だ・し! るるら~♪


 ルンルン気分でスキップしだしたジュスティーヌと、オリビアとでは、()()()()として想定しているものが異なる。


「もしかして、殿下とキスとかしちゃった感じですかー!!」


 今度は、会長のアンが直球を放り投げてきた。


「えっ」


 ジュスティーヌは、スキップするために右足を振り上げたまま、石像のように固まった。そうかと思うと、腕をぶんぶん振り回して否定する。


「べ、べ、べ、別に、まだしてないし! ただ予約しただけだし!!」


 姫様、動揺しすぎです。しかも、予約って……。


 とセドリックは思う。


「ええっ! 予約ですかあ! 詳しく!!!」


 今度はビビアンが突っ込んでくる。


「あの、あの、あの、ファーストキスはもっとロマンチックなところでした方が良いってあの男が言うからあっっ」


 それ、わざわざ説明しちゃいますか、姫。


「ロマンチックなと・こ・ろ!! いつどこでする予定なんですかー!!」

「えっと、ダンジョンで……」

「ダ、ダンジョンですかああ! さすがは我らが姫様と殿下ですね!」


 ダンジョンがロマンチックって、絶対殿下の発想じゃないですよね?


 キャーキャー騒ぐ女子たちをみて、何となく無の境地に至る男子たちであった。


  ◇  ◇  ◇


 放課後、ジュスティーヌはPJL2()8()のメンバーとともに、平和防衛活動の成果報告と今後の目標について会議を行っていた。


 すると、眼鏡付きのお面にマントを羽織った男が登場した。女子たちはあっけに取られていた。どう考えてもこれはジーニアスだ。


「……二度と顔を見せないでといったはずですが」

「はい、ですから、顔は見せていません」

「……そういう意味ではないのですが……」

「もし、姿を見せないでというのであれば、こうしてマントで隠します」

「いや、隠れていませんよね、それ」

「いえ、隠れています。見えているのはマントだけなので」


 何たる屁理屈か。


「あなたは一体何がしたいのでしょうか?」

「姫様のお役に立ちたいのです。こう見えて私は有能です。頭脳と経済力には自信があります」

「姫様、この男の人柄は最低のクズですが、成績優秀なのは確かです」

「それに、私は目覚めてしまったのです。姫の強烈な投げ技をこの身で体感して。姫の暴力的なまでの美しさに。ですので、僭越ながら勝手に結成させていただきました。姫様の非公式ファンクラブを! 君たち来るがよい、姫様がお目通りを許されたぞ!」


 いや、許してないし。


 ジーニアスの声掛けで、ひ弱そうなメガネ男子が6名、木の後ろから出てきた。


 ちょっと待って! インテリ眼鏡に気を取られてたとはいえ、彼らの気配にまったく気が付かなかったわ……。なんたる存在感の薄さ!! このわたしの目を欺くとは、これはある意味ものすごい才能かもしれないわ……!


「ジュスティーヌ姫の非公式ファンクラブ、名付けて『ジュスティーヌ姫様に蹴・飛ばされ隊』です! 姫の特技である蹴りと投げ技両方を名称に取り入れてみました。どうか我ら7名を姫の下僕にしてください!!」


 いや、わたしがいうのもなんだけど、そのネーミングセンス……。まぁ、でもか弱い王子さまたちを力でねじ伏せて下僕にするなんて、相当な悪女よね? うん、これ悪くないかもしれないわ。


「ふっ、お前たちの覚悟はわかったわ。そんなにわたくしに足蹴にされたいのであればしてやろうじゃないの!」

「ははー、有難き幸せにございます!」


 メガネ男子7名はそろって頭を下げた。


 こうして、ジュスティーヌの非公式ファンクラブが開設されることとなった。

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