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第45話 憧れの冒険者になってしまいましたわ!

 ジュスティーヌとアルフォンスの会話に聞き耳を立てていた冒険者たちは、あんなスプーンよりも重たいものを持ったことがなさそうな細腕の清楚なお嬢さんが、冒険者になるだなんて絶対に無理だと思う。


 いや、逆だ。あの殿下が一緒であれば、あの美女は「いやん、助けて、殿下! こわーいっ」とでも言っていればいいので、ある意味無敵だ。あんな美人を連れて冒険の旅デートができるなんて、強者の余裕過ぎるだろう!


「冒険者登録って簡単にできるの?」

「うん、俺ともう一人誰か高ランクの冒険者がいれば可能だよ」


 冒険者のランクは、初級がグラス、ウッド、ストーンの3段階、中級がカッパー、ブロンズ、アイアン、スチールの4段階、上級がシルバー、ゴールド、プラチナで、特級がミスリル、オリハルコンだ。


 いつぞやのナンパな冒険者がシルバーだと粋がっていたのは、上級の冒険者ではあるからなのだ。冒険者登録する際には、誰もが初級からスタートする。といっても、それなりに実力があるものは初級の中でもストーンクラスから始めることができる。その実力の証明として、シルバーランク以上の冒険者2名以上の推薦が必要となる。

 

 冒険者としての実力は、大雑把に二方面から図られる。一つが武術や魔術の腕前――戦闘力であり、もう一つがサバイバル能力だ。後者の能力を人前で簡単に証明することはかなり難しいので、多くの場合はギルドスタッフの前で剣や魔法の腕前を披露するのだ。


「どう? 今日、冒険者登録をするかい?」

「うん! できるならすぐにしたい!」

「承知しました、姫。では、地下の訓練所に参りましょうか」


 そう言うと、アルフォンスはジュスティーヌをエスコートして、冒険者の相手をしていないギルドの受付嬢のところに向かう。


「彼女の冒険者登録をしたいのだが、立会いをお願いできるかな?」


 たまたま空いていた受付嬢は「神様、ありがとうございます!!」と思う。一方、冒険者の相手をしていた受付嬢たちは露骨に不機嫌そうな表情になった。目の前にいる冒険者たちのせいで、アルフォンスに声をかけられるチャンスが1回減ったのだ。恨まずにはいられない。


 その様子をみた高ランクの冒険者たちは口々に、「殿下、もし必要であれば自分がそちらのお嬢さんと手合わせをしたうえで、推薦させていただきますが」と名乗り出てくる。


「ああ、皆、ありがとう。だが間に合っている」


 冒険者たちは非常に残念そうだったが、ジュスティーヌの手合わせを見るためにゾロゾロと地下にやってきた。地下に行くとすでに男が一人素振りをしていた。なんと、少し前にジュスティーヌが剣を粉々にして成敗したナンパ男ではないか。


「その節は大変失礼いたしました。今は心を入れ替えて、真面目に冒険者をしています。どうかお許しください」


 おごり高ぶっていた男だったが、あの後、アルフォンスにもきっちり絞られたようで、すっかり毒気が抜かれ、善良な人間となっていた。今もそうだが、暇があればこうしてギルドの訓練所で素振りをして、腕を磨こうとしているのだ。


「この人と対戦すればいいの?」

「いや、彼はただの推薦人の一人だよ。君の相手は俺だよ」


 そういうと、アルフォンスは着ていたロングジャケットを脱ぎ、シャツの腕を捲り上げた。見学の女性たちから黄色い歓声があがったことは言うまでもない。


「望むところよ」


 ジュスティーヌは表情を引き締め、己に喝をいれた。アルフォンスと手合わせができるのであれば、もっと動きやすい服で来ればよかったと思う。


 手合わせに勝つ必要はない。手合わせを通し、て立会人が登録希望者の戦闘技術を推し量り、ストーンランクに相応しいと判断されればそのランクが付与される。


 アルフォンスが剣を振るっているところはみたことがないが、相当な達人であることは、彼のこれまでの行動から十分すぎるほど推測ができる。勝てないなりに、この勝負を有意義なものとしたい。


 試合開始の合図とともに、ジュスティーヌはうーたんと対戦した時のように次々と自分にバフをかけた。


 それだけで見学に来ていた冒険者たちは驚きのあまり顎が外れそうになる。この美人は、ただのか弱いお嬢さんじゃないぞと。


 ジュスティーヌは手始めに心臓めがけて剣を繰り出す。当然、アルフォンスに軽く弾かれる。この一撃で彼が剣の達人であることがよくわかった。ジュスティーヌの攻撃がよく見えていて、動きに全く無駄がないのだ。


 とにかく剣だけでは歯が立たないと思ったジュスティーヌは少し距離をとると、無詠唱で得意な魔法を連続で放った。


「ファイアボール! ファイアボール!」


 今、二人が使っているのは練習用の木刀だ。この木刀で魔法を防ごうとすれば武器にそれなりのダメージをあたえることができる。


「マジックシールド」


 剣も魔法もできる男じゃないと嫌だと幼いころ彼に話したが、この男、それを実践したようで、魔法も得意なようだ。こちらも無詠唱でジュスティーヌの呪文を無効化してくる。


 そうであればとにかくスピード勝負だ。ジュスティーヌは連続で剣を突き立てる。当然のようにすべてアルフォンスにいなされてしまう。少しぐらいバランスを崩してくれてもいいのにと思うぐらい彼は揺らがなかった。


 もうこうなったら最終手段だ。今のところ、アルフォンスからは攻撃をしてこない。それを利用して、じっくりと詠唱をして中級以上の魔法をぶっ放つ!


「炎の精霊イフリートよ。大いなる炎の支配者にして、すべてを灰に帰す猛き王よ。我が呼びかけに応え、その力んーー」


 途中まで詠唱したところで、アルフォンスに体を押さえつけられ、片手で口を塞がれた。


「ジュティ、気持ちは分からなくもないが、この建物を吹き飛ばすつもりかい?」

「んんー、んーーー」


 こうして無事に、ジュスティーヌはストーンランクの冒険者証を手にすることができたのだった。

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