第35話 悪女の宣伝に役立つならば、いくらでも取材に応じちゃいますわ!
読んでくださった方々、ブックマークや評価、リアクションをくださった方々、ありがとうございます。
注目度でランクインさせていただきまして、ここ数日で、それまでのひと月分ぐらいのアクセス数が。
驚きを隠せません。
この先もがんばって書いていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ジュスティーヌは記名のあった手紙には律儀に返事を書いた。
魔法少女になりたい王子へは、平和防衛隊の活動日と場所を暗号風の手紙でお知らせしておいた。
脳筋公爵には、トレーニングは自分に合わせたメニューを行っているので今のところ間に合っていると返事をする。正直なところ、筋肉質な男性の身体は美しいと思うが、自分がムキムキのマッチョになりたいわけではない。
殴られたい公爵には、正式に決闘を申し込みたいのであれば日時と場所を指定したうえで、決闘委員会に申し込みをするようにと伝えた。
ここ数日の間、想定外のイベントが発生しまくっていたため、ジャーナリズムクラブに思うように顔を出せずにいた。それもようやく落ち着いてアカネとともに活動部屋に赴くことができた。
ハッサン部長とオリビア副部長は手ぐすねを引いて待ち構えていた。
まずは、先日の決闘について、スポーツ欄担当の記者にいろいろと質問をされる。決闘が行われるたびに学内新聞の記事になるわけではないが、注目度の高い決闘の記事は、実用面からみても需要が高いのだ。
次はお待ちかね、アルフォンス皇子とのことをオリビア副部長が根掘り葉掘り聞いてくる。彼女には申し訳ないのだが、彼とのことで報告することは特に何もない。
しいて言うならば、彼のよからぬ行動――特権を利用した裏口入店、悪役令嬢に対する贈賄、その上無銭飲食、更には悪魔的とも思われる魔術の使用(人の心を読む魔法)――を報告することぐらいしか思い浮かばない。が、自身の悪女っぷりを遥かに凌駕する彼の悪巧みに、自ら手を貸すような真似はしたくないので、その報告は胸にとどめておくしかない。
「で、で、あの日、姫様はアルフォンス殿下とどこまでいったのですかー!?」
「タルトのお店までですわ」
彼に関しての話をする際は、慎重を期す必要があるが、どこに行ったのかぐらいは話しても問題はないと判断する。といっても、オリビアの質問の意図はそうではないのだが。
「ああ、殿下のお店の? あの店、いつも混んでいて大人気ですよね。おいしいんだけど、なかなか入れないんですよねぇ。買って帰るのも一苦労で……ってそうじゃなくて、二人の仲のことですよぉ!」
「ちょっと待ってください! あのお店は殿下が経営しているのですか!?」
「ええ、そうですよ。姫様ご存じなかったのですか?」
くうっ、あの男、そんなこと一言も言っていないじゃない! 裏口・無銭飲食の極悪皇子だと思っていたのに、単に自分の店だったなんて。完全に騙されたわ……。というか、お店経営しちゃうぐらいタルトが好きなの? なんか大好きなものが同じで微妙だわ。これからはシフォンケーキに乗り換えようかしら……。ああ、でもあのタルト生地のサクサクだったりしっとりだったりの多彩な食感は捨てがたいわ!
「で、二人の仲はどうなんです!? 遠くから鐘の音が聞こえる夕日の沈む丘で、キ、キスとかしちゃったんですかあ!?」
「オ、オリビア! な、なんてことを聞いているんだ! 仮にも相手は姫様だぞ! で、どうなんですか、姫様、潮騒が響くきらめく波の海岸で、く、口づけとかしちゃったんですか!?」
オリビア副部長もハッサン部長も、同じ穴の狢だった。どう考えても、夕日の前に帰ってきたし、海岸まで行って帰ってくる時間はなかった。
期待してくれているところ本当に申し訳ないのだが、彼とはそういう仲ではない。だが、悪役令嬢として彼の善意に付け込みたいと、ほんのちょっぴり思っているので、完全否定もしたくはない。
「うーーーん」
ジュスティーヌは天を仰ぎ見た。
なんと説明すればいいのだろうか。あのデートで何をしたかというと、腹黒皇子にタルト二つで買収されたぐらいしか思い浮かばない。しかし、その事実は悪役令嬢としては墓場まで持っていかないといけないような恥辱でしかなく、とてもではないが公表するわけにはいかない。
「”次回以降に乞うご期待!” ということでいかがでしょうか?」
「おおっ、次回ですね!! すでに次のデートの約束をしちゃっているんですね!! それはもちろん期待しています!! 絶対に最初に取材させてくださいね!」
とりあえずタルトで買収された件は誤魔化せそうだからよしとしよう。
次のデートではもう少し悪役令嬢らしいことをしないと報告できることがなくなってしまう。というか、そもそもたかがデートの内容が学内新聞の記事になること自体がおかしくないか?
「ところで、大きな行事がないときは、みなさんどのようなお仕事をなさっているのでしょうか?」
「そうですね、もう少しすると学園祭の準備が始まりますが、それまでは各自で学園で起こる事件を追いかけて、スクープを狙うとか、あとは大物の取材をするとかですかね?」
先輩方が記事にするべく”事件”としてリストアップしているもののうち、5分の3ぐらいはジュスティーヌがらみだった。
例えば、『事件を巻き起こす台風の目のような迷惑極まりない悪役令嬢ジュスティーヌ』のような記事をうまく書いてもらえれば、悪役令嬢っぷりを新聞を通して周知することができるのでは?
今後も積極的に事件を巻き起こして――というか、現状では巻き込まれているだけだが、先輩たちの取材には積極的に応じることにしようと固く誓うジュスティーヌだった。
読んでいただき、ありがとうございました!
今後ともよろしくお願いいたします。




