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第33話 24時間、365日の君は誰ですの?

 ジュスティーヌは心配してくれていたセドリックやクラスメイトたちのほうへと向かう。みんな大興奮で出迎えてくれる。それはそうだ。これはある意味、歴史に残る試合だったのだから。


 盛り上がっているセドリックやクラスメイトたちをよそに、「帰ろう」という会長の一声で生徒会のメンバーたちは静かにその場から立ち去った。あのソフィーも無口で、表情もなく、いつものように「レッツゴーエンジョイ決闘ウイニング!」といった雰囲気ではなかった。


 その生徒会とすれ違いながら、ジャーナリズムクラブのメンバーは「インタビューさせてー!」と大はしゃぎでジュスティーヌのもとに駆け寄ってきた。


 みんなでワイワイしていると、ジュスティーヌは「あれ、なんか悪寒がする気がするわ……」とただならぬ気を感じて後ろを振り返る。すると、フードを被った背の高い男がこちらに近づいてくるのが見える。


「やあ、ジュティ! 素晴らしい試合だったよ」


 まさかのアルフォンス皇子ではないか。


「えっと、見てたの?」


 ジュスティーヌは「あなたのせいで、わたくしとーっても迷惑を被っているんですからねっ!」と責めるような目つきでアルフォンスを睨んだ。


「当然! 君の決闘を俺が見逃すはずがないだろう?」

「あの人たち、あなたのファンなんでしょ? 止めようとは思わなかったの?」

「ああ、うん、まあ、そうだね。それに、君だって戦ってみたかっただろ?」


 そう答える彼は少しバツが悪そうだった。まぁ、確かに戦ってみたかったのは事実である。だから、止められたって戦いはしたのだけど。


「というか、何で知ってるの?」

「ジュティのことはいつも気にしているからね」


 はぁー、またこの男はそういう言葉で人の気を引こうとしちゃって! 全くもって腹黒いわ! って、あれ? もしや、24時間見守っていますって手紙の送り主、この男だったりする!?


「24時間、365日?」

「えっ、まあ、そうありたいとは思っているよ」

「今夜、わたしと食事をするつもりで、わたしも食べるつもり!?」

「えっ、食べていいの?」

「いや、ダメに決まっているでしょ!」

「あの手紙の送り主、絶対に殿下ではないと思いますよ、姫様」


 ジュスティーヌが何を確かめようとしていたのか気が付いたセドリックは、こそっと耳打ちしてくる。


「手紙? 誰からの? どんな手紙?」


 当然、アルフォンス皇子が興味を持つ。


「えっへん! わたし、結婚を申し込まれたの!」


 何を思ったのか、ジュスティーヌは名無しのストーカーから怪しさ満点の手紙をもらったことを自慢しだした。


「誰に?」

「24時間、365日わたしを見守ってくれているという人に」

「そいつが君と食事をすると、今夜」

「そうよ。だから残念ながらあなたとは夜ご飯一緒に食べられないわ。ああ、すっごく残念!」


 ジュスティーヌは悲劇のヒロインを演じる舞台女優のように天を仰いで大げさに嘆いてみせた。


「じゃあ、俺も同席させてもらうとするよ。俺がいながら君に結婚を申し込むような度胸のある男に一度会っておきたいからね」


 目が笑っていなさすぎるアルフォンス皇子の表情を見たセドリックは背筋が凍った。クラスメイト達も息が詰まる思いで二人の会話を見守っていた。だって、あの手紙、どう考えてもただのストーカーからで、仮に一緒に食事をするといってもどこで? となるからだ。


 一方、そこまで事情を飲みこめていないジャーナリズムクラブのメンバーは「ちょっと、ちょっと、どういうこと!? 堅物皇子の熱愛発覚後に新たなライバル登場で三角関係に発展とは!? これはさらなる特ダネかーー!?」と期待に胸を膨らませていた。


 この腹黒皇子、ねちっこすぎる!! 人様のデートに割って入ろうとするとはどんだけずうずうしいの! 今日はちょっと疲れたから、もう寮に帰ってゆっくりお風呂にでも浸かって早く寝たいのに……。


 ジュスティーヌがげんなりして、疲れの色を見せているのに気が付いたアルフォンス皇子は、セドリックに頼んだ。


「ジュティ、君もさすがに疲れているだろう? 今日は大人しく部屋に戻ったほうがいい。セドリック、すまないが、ジュスティーヌ姫の代わりにその男のところに出向いて、今夜はご一緒できないと断って来てくれないか?」


 なぁーんで、はやく帰りたいと、思っているの、わかるのお……? やぁっぱり、この腹黒おーじ、心が、読め、てる……!?


「あ、いえ、それが、その男が何処の誰だか俺は知りません。というか、姫自身も知らないのではないかと……」

「どういうことかな、ジュティ?」


 どーも、こーも、いつも、みたいに、わたしの、心を、読んでみなさいな……って、あー、もう、眠くなってきた、あくび、でそう……。


 とろんとした目になって、お姫様らしからぬ大あくびをするジュスティーヌの姿を見たアルフォンスは、サッと彼女を抱きかかえた。絵にかいたような、皇子様によるお姫様抱っこを見せつけられた女子生徒たちは、一斉に「キャー!!」と悲鳴をあげた。


「ちょっと、もう、おとしてよー…………」


 すでに眠気が限界に達したジュスティーヌは、言っていることが半分おかしい。ジュスティーヌを抱きかかえたまま寮に向かって歩きつつ、アルフォンスはセドリックたちにこれまでの経緯の説明を求めた。


 ジュスティーヌはというと、アルフォンスの体温と心地よい揺れに、全く抵抗する間もなく、彼の腕の中で寝落ちしてしまった。

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