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第31話 悪役令嬢と宿敵、決闘までのカウントダウンですわ!

「ねえ、ねえ、セディ見て! わたしこんなすっごい手紙もらっちゃった!」


 お昼休み、ジュスティーヌはカイトやアカネとともにセドリックのクラスを訪れていた。浮かれてクルクル回りながら例の手紙をセドリックの前でヒラヒラさせているジュスティーヌの様子をみて、セドリックは嫌な予感しかしない。


「決闘でも申し込まれた感じですか、これは……」

「えっ、決闘!? 結婚ではなくて??」


 興味を持ったセドリックのクラスメイトまで集まってくる。


「皇子の剣同盟」の差出人名をみて、セドリックやクラスメイトたちの表情が一瞬にして曇る。


「そんなに危険な人たちなのでしょうか?」


 セドリックたちの様子を横目に見たカイト王子が尋ねた。


「ああ、全貌を知っているわけじゃないですが、一言で言うと彼らはアルフォンス殿下の熱狂的なファンですね。当然、剣の腕も並外れています。それにおそらくメンバーのほとんどが三年生です」


 クラスメイトたちもうんうんと頷く。


「とにかく、俺もついて行きますので、絶対に無茶はしないでください。怪我でもしたら大変ですから」


 クラスメイトたちも再びうんうんと頷く。


 実はこの学園の戦闘技術科では、理由のない私闘こそ禁じているものの、正式な手続きにのっとった決闘――練習試合は推奨されている。この練習試合で勝利してポイントを稼ぐことで、学年末に行われる剣術大会の参加資格を得ることができるのだ。


 一年生は全員10ポイント保有のDクラスからスタートする。二年生以降は前年度の実績によって、20ポイントを有するCクラス、30ポイントのBクラス、Aクラス、Sクラスとランクがあがる。同クラス同士での練習試合で勝つとポイントが1プラスされ、一つ上のランクに勝つごとにこのポイントが倍になるのだ。下のクラスは負けることによるペナルティはないが、AとSクラスは負けるとポイントが減る。


 ”皇子の剣同盟”が申し込んできた決闘も正式なものだ。その点では、例えば5対1で戦わされることはない。そして、一人が一日にできる決闘は原則一回までだから、ジュスティーヌが一日に何戦もさせられることもない。ただ、相手はおそらく全員Aクラス以上の上級生だろうから、実力、経験ともに相手のほうが圧倒的に格上だ。


 と、少なくともジュスティーヌ以外の者は思っている。


 放課後、ジュスティーヌは、セドリックとそれぞれのクラスメイトたちを伴って、決闘の場に指定された第二武術訓練所に赴いた。どこでこの決闘の噂を聞いてきたのか、すでに多くのギャラリーが訓練所を囲っている。


 そして、訓練所の真ん中には完全武装をした長髪の男たちが、全部で8名、仁王立ちをして待っていた。


 ああ、あの髪型、もしかしてアルフォンス皇子のマネ……。どこまで皇子好きなんだ、この人たち。しかも、残念ながらほとんどの人がまるで似合ってない! やっぱり、顔の良さって大事なのね。それはともかく、このような舞台を用意してくれた彼らには感謝せねばっ。


「わたくしがグランソード王国第一王女、ジュスティーヌよ。わたくしにご用がおありなのはあなた方ですの?」


「貴様が男の中の男であられる殿下をたぶらかした小賢しい女狐か!」


 おそらくこの隊長っぽい男は貴族なのだろう。さすがに語彙力があの朝の手紙の主たちとは違う。こういうのを期待していたのだとジュスティーヌはちょっと嬉しくなる。


「その通り。わたくしこそがあなた方が慕われているアルフォンス殿下を毒牙にかけた、悪知恵の働く魔性の女ですが、何か?」


 こうして文句言ってくる相手が語彙力あると助かるー。これならば相手の言った言葉を少し言い換えるだけで悪女っぽいセリフを簡単に言えちゃうじゃない!


「クッ、自ら腐れ女であると認めたな! 貴様のような素行不良な女、殿下には相応しくない! 我々が正義の鉄槌を下す! この勝負に負けたならば潔く身を引いてもらおう!」


「いい男なんてこの世に五万といるのですから、わたくしは構わなくってよ。ただ、殿下が離してくれませんの。あなた方はそこをどうお考えなのかしら? わたくしよりもまずは殿下を説得されては?」


 いや、本当にそうなんだってば。むしろ説得してほしい! あの腹黒悪魔皇子を! あなた方が!


「おちょくりおって、この女!」

「で、わたくしのお相手はどなたですの?」

「フッ、我々は上級生だ。お前に誰と対戦するのか選ばせてやろう」


 血気盛んな男たちは、ああいえばこう返してくるジュスティーヌに一度は苛立ちをみせたものの、懐深さ、いわば”余裕”を見せてきた。戦う相手をこちらから選べるというのは、非常に大きなアドバンテージである。


 決闘で使う武器は持参可能だ。いい武器を持っていることも勝利に近づく第一歩となる。また、呪文の使用も可能だ。ただ、決闘前に予めかけておいた魔法は解除されるし、自己強化の効果がある魔道具や回復薬の使用も禁止されている。しかし、実際に一対一の戦いで魔法が使われることはほぼない。なぜならばほとんどの場合、詠唱をしている余裕がないからだ。


 対戦者は各々胸に決闘メダルを付ける。この決闘メダルは身に着けている者の代わりにダメージを受け、一定以上のダメージを受けると壊れてしまう。このメダルが壊れると敗北となる。ほかには、場外に足が触れたときと気を失ったときも敗北となる。


 これらの条件を重ねて考えると、力はないがスピードと技の切れには自信があり、何よりも魔法が得意なジュスティーヌにとって、一撃の強さを信奉してそうで動きが鈍そうな男を選ぶのが正解だ。ジュスティーヌは大きな両手剣を背中に背負っている大柄な男を指名した。


「こちらの方にしますわ」


 隊長らしき男は、内心でガッツポーズをする。彼はSランクの中でもランキング5位の強者だったからだ。皇子の剣同盟にはギリギリAランクのものも2名いたのに、彼我の実力差もわからないとは愚かな女だと思う。


 対戦相手は決まった。いよいよ決戦の時である!

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