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第30話 続・わたくしに届いた熱々の恋文の数々ですわ!

ブックマークの登録、評価ありがとうございます。

これからもよろしくお願いします!

 ジュスティーヌに届いた恋文の開封儀式はまだまだ続く。


『アホ、ブタ、クソ、デブ、ケチ、バカ、まぬけ、チビ、グズ、カス、のろま、ゴリラ、ハゲ、ゴミ、ブス、でべそ、ドブネズミ、おたんこなす』


「これは……この方は人を貶す言葉をたくさんご存じなのですね。単純な言葉なだけに相手に伝わりやすいのね、この手の悪口は。今後の参考にさせていただくわ。ただ、残念ながら悪口でない言葉がいくつかあるうえに一つだけ明確な誉め言葉が混ざっていますわ」

「えっ、どれですか?」

「おたんこなすとかですか?」


 おたんこなすの意味がいまいちわからなかったボブがそう尋ねる。


「おたんこなすは純然たる悪口よ! ボブはおたんこなすといわれて嬉しい? わたくしは屈辱的だわ。もし、おたんこなすといわれたら、『そういうお前はオタンチン・パレオロガスだ!』と言い返してやりますわ」


 王侯貴族の悪口は高尚すぎて意味が分からないと思うボブであった。


「で、結局悪口じゃないのは何なのでしょうか?」


 気になって仕方がないトムが正解を尋ねる。


「ゴリラよ。ゴリラはどう考えても誉め言葉でしょ」


 ゴリラと呼ばれて「褒められた」と喜ぶ麗しいご令嬢なんて初めて見る。


「ゴリラは動物の中では知性も高く、穏やかで平和主義な性格よ。それでいて筋肉質な体をしているから並の男なんて全く敵わないパワーがあるのだから! それにブタだって知能が高くてとても素早いのよ。ブタよりも早く走れる人間はそうはいないわ。きっとこれを書いた人だって、徒競走でブタに負けるわよ! ネズミだって賢いし、害虫を駆除してくれる有難い子なのよ」


 なるほど。このお姫様、戦闘技術科にいるだけあって精神力がゴリラのパンチ並だと思うクラスメイトたちであった。


 次の手紙を開封したジュスティーヌは顔を青ざめさせ、思わずその手紙を落としてしまう。先ほどまで気丈に振る舞っていた姫をこれほど動揺させるとは、一体どのような内容だったのかと思い、近くにいたフルードが拾い上げ、みんなで中身を確認する。


『この手紙を受け取った人は99時間以内に同じ内容を書いて99人に送らないと必ず不幸が訪れます』


「ど、どうしましょう……! 99人も知り合いがいません、わたくし!」


 ジュスティーヌは軽く涙目になりながら、クラスメイトに訴えた。


「あ、いえ、だからそれ送らなくても大丈夫ですから……」


 カイト王子の提案でこの手紙にも呪術がかけられていないか鑑定してもらうことにした。


『愛しのジュスティーヌ姫様。突然のお手紙で失礼します。いつも素敵なあなたのお姿を見て、僕は恋に落ちてしまいました。あなたと結婚したいと思っているので今すぐに連絡ください。24時間、365日どこにいてもあなたのことを見守っています。今夜お食事を一緒にしたいです。むしろあなたを食べたいです。いつまでも待っています』


「これは大変ですわ……ついに本当の恋文をもらってしまいましたわ……」


 こんなにも頑張って悪役令嬢をやっているというのに、それでもこんなに熱心に求愛をしてくる男があの変態皇子以外にもいるだなんて! もっと悪い女にならないといけないということね。


 この手紙の主が王族や高位貴族でないことを祈るしかない。


「た、確かに、これは大変ですね。姫君、なるべくお一人にならないようにお気を付けください。僕たちもできるだけ側にいるようにするので」

「だな、この手の輩は何をしでかすかわからんからな」


 カイト王子やフルード公子が注意をしてくれたが、ジュスティーヌはさらなる悪女化計画を頭の中で立てていてほとんど聞いていなかった。


 最後のはギリギリラブレターといえるだろうか。数十通ある手紙を開封しても開封してもだいたいはこんな内容だった。そしてこれらの手紙は差出人名が書かれていない。


 だが、一通だけまともそうな手紙があった。封筒の宛名に「ジュスティーヌ姫様」とあり、差出人は「皇子の剣同盟」とある。


『果たし状 貴女に対して決闘を申し込む。本日、放課後、第二武術訓練所にて待つ。必ず来られたし。なお、来なかった場合にはこちらの不戦勝とさせていただく』


 き、きたああああ!!! こういうのを待っていたのよっっ!!


 興奮のあまり、ジュスティーヌは思わず立ち上がってしまった。


「皇子の剣同盟の方は何と?」

「最高のデートのお誘い、熱い熱いラブレターだったわ」


 アカネが聞いてきたのでジュスティーヌは今までのように手紙を皆に公開した。


「えっ、もしかしてこれ行くつもりですか!?」

「もちろんよ! アカネ、ジャーナリズムクラブの先輩たちに、『今日は頭痛がひどいのでお休みします』と伝えておいて」

「いやいや、そのウソ、すぐにバレるますから! というか絶対に先輩たち見学、じゃなかった、取材にきますって!」

「ジュスティーヌ姫、相手の実力がわからないから危険だ。しかも、同盟ということは相手は複数人いる可能性が高い。まずはセドリック先輩に相談しましょう」


 カイト王子はさすがに冷静だ。とりあえず、昼休みにセドリックのクラスに相談に行くことで落ち着いた。


 一方、ジュスティーヌは学園での初決闘に胸を躍らせていた。悪の大魔王のように”皇子の剣同盟”を蹴散らしてやろうじゃないの! すでに心の中で高笑いをしているジュスティーヌだった。

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