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第15話 刺繍のデザイン? もちろん、悪の華ですわ!

 ジュスティーヌは刺繍作品という賄賂をいくつか持参して、ボランティアクラブを訪れるという計画を立てた。


 それに向けて、日夜刺繍に励むこととなる。


 刺繍セットを教室に持参して、授業と授業の合間の休み時間にも刺繍に勤しんだ。


 この学園では毎年、優秀な生徒のみが参戦可能な剣術大会が開催されている。その際に、参加者の剣士たちの無事と勝利を祈り、女子生徒はハンカチに手ずから刺繍をして贈るという習慣がある。刺繍入りハンカチをもらった男子生徒は、自らの武器や体にそれを括り付ける。人気のある男子生徒の中には、もらったハンカチ全てを装着して登場するツワモノもいる。


 この刺繍入りハンカチを誰に渡すのか、剣士たちが誰からもらったハンカチをどう身に着けて登場するのかは、生徒たちにとってこの剣術大会の隠れた見どころの一つとなっていた。


 去年セドリックもこの大会に参加している。ただ、彼はそこまで女子に人気がなかったのか、ハンカチをもらうつてがないと話していた。それを聞いたジュスティーヌは幼馴染のよしみで刺繍入りハンカチをプレゼントしているのだ。


「えっと、すごい大作の刺繍のハンカチをありがたいのだけど、これは何?」


 ジュスティーヌがセドリックに贈ったハンカチに施された刺繍は、非常に手が込んでいて、それだけみると作り手のとても深い愛が伝わりそうなのだが、いかんせん、デザインがおどろおどろしかった。


「ヒドラよ」

「えっと、なんでヒドラ?」

「確かに、リヴァイアサンとどちらにするか迷ったわ。でも、ヒドラのごとく暴れまわり、学園の名だたる英雄たちを倒せるようにという願いを込めてこれにしたの」


 セドリックは水属性魔法を得意としていた。ジュスティーヌは、水の怪物といったら、ヒドラかリヴァイアサンかクラーケンだと思ったのだ。クラーケンは軟体動物だったので、さすがに候補から外した。


「ああ、そうか、ヒドラか。ありがとう……」

「あまりうれしそうじゃないわね?」


 どうして俺が怪物側なのだろうか? 英雄を倒すさらなる英雄でもよくないか? しかも、ヒドラって結局英雄に倒されるんじゃないか……とセドリックは思ったことが少し表情に出てしまっていたが、口に出すのだけはこらえた。これだけの大作を姫様からいただいておいて文句など言えようはずがない。


「あ、いや、別に、ただ、他の奴らのハンカチをみると花柄が多かったから」

「なるほど、動物よりも植物を好むということね」

「あ、いや、そういうわけではないのだけど……」


 そして、ヒドラのハンカチを身に着けて剣術大会に参加したセドリックは、ジュスティーヌの願いも虚しく一回戦で負けた。今年もまた、セドリックにハンカチを捧げる令嬢がいないのであれば、マンイーターか人面樹を刺繍したハンカチを送ろうと思っているジュスティーヌだった。


 そして、男性は植物の刺繍を好むという情報をセドリックから得たので、今、ジュスティーヌは一生懸命にマンドラゴラを刺繍していた。


 ジュスティーヌが刺繍をしていたら、ビビアンが興味津々に話しかけてきた。


「さすがお姫様! ジュスティーヌ姫は刺繍も得意なんですね? で、それは何ですか?」

「マンドラゴラよ」

「マ、マンドラゴラ!? でも、どうしてマンドラゴラを選んだんですか?」

「セドリックが、殿方は植物系のモンスターの刺繍を好むと言っていたので」

「へ、へぇー……」


 ビビアンは、内心で「セドリックさんって爽やかイケメンだと思っていたけど、案外変人なんだあ。人は見かけによらないんだぁ」と完全に誤解をしていた。


「俺はどちらかというと獣系のモンスターの方がカッコいいと思うけどな」


 公爵令息のフルードが会話に乱入してきた。


「ですよね! わたくしもそう思っていたんですの!」

「だよな、だよな。獣系の中でもトラ系とかクマ系とか。でも、それより何よりもカッコいいのは」

「ドラゴン!」

「ドラゴン!」

「わたくしたち、気が合いますわね!」


 気が合うも何も、多くの剣士たちにとって最強の種族であるドラゴンがカッコいいと思うのは共通認識だろう。セドリックも、彼の名誉のために一言付け加えておくが、「カッコいいモンスターは植物系だ! マタンゴかっけー!」とは一言も言っていない。


 クラスメイト達は口々に「俺もドラゴンがカッコいいと思います」と会話に参加してきた。ここでゴマをすっておいて、剣術大会に出場が決まった暁には、ジュスティーヌからドラゴンの刺繍入りハンカチをもらえたら最高ではないか!


「それにしても、なぜ今刺繍を? 剣術大会はまだずっと先だよね?」


 冷静なカイト王子が聞いてきた。


「ボランティアクラブの話を伺って、わたくしもバザーに出品するハンカチを寄付させていただきたいと思ったのですわ」

「それは素晴らしい取り組みだね。バザーでハンカチを購入するのは女性が多いだろうけど、モンスターや武器防具がデザインされたものだったら、普段使いになるから男も欲しいと思うんじゃないかな。ボランティアクラブの令嬢たちはそういったデザインの刺繍をあまりしないからいいと思うよ」


 なるほど、新たな市場開拓のためにジュスティーヌの刺繍もありということか。そして、親切な同級生たちがいろいろと()()()()アイディアをだしてくれた。


 結果、悪の華――植物系のモンスターではなく、エンブレムにもよく使われる、獅子やドラゴン、剣と盾、馬や鷹あたりを刺繍することになった。

いつも読んでくださってありがとうございます。


新しい短編を一つ書きました。

興味をもっていただけましたら、読んでいただけると嬉しいです。


【短編】

ハイスペで美しすぎるヒロインのわたし。逆ハーを満喫しちゃだめですか?


今後ともよろしくお願いします!

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