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第13話 悪女姫VS学園のアイドル聖女候補、第一ラウンド開始ですわ!

 ジャーナリズムクラブ新入生の最初の仕事は、来週末開かれる歓迎パーティに出席する予定の来賓、それから生徒会や各クラブの会長から先輩たちとともに一言コメントをもらってくるというものだった。


 ジュスティーヌは副会長のオリビアとともに生徒会からのコメントをもらってくる役割を仰せつかった。


 いきなり憧れの王子様方が集う生徒会に乗り込めるとは、学園中の令嬢を敵に回しそうな仕事である。


 生徒会にアポを取ったところ、明日の午後サロンのティールームでインタビューに応じてもらえることになったので、オリビアとともに訪れることになった。


 現生徒会長は、なんとジュスティーヌの()()()()()になることを拒否したブリオントクロヌ帝国の第三皇子、フレデリクだった。相手は何となく気まずそうにしていたが、ジュスティーヌはそれほど気にしていない。ジュスティーヌにしてみるとこの男よりもその兄が問題児すぎたからだ。


 副会長を務めるのはノーザンベル王国の第二王子エルドリック。彼は会長と人気を二分しているらしい。こちらは氷を思わせる貴公子だった。


 そして、会長と副会長の間、まるで両方から愛されていますと言わんばかりのポジションに掛けていたのが、聖女候補と言われている平民のソフィーだった。彼女は書記かなんからしい。このソフィーはジュスティーヌのデビュタントの際、フレデリクの隣にいた女性だ。


 生徒会には一定数の平民を入れることになっているが、それ以外はほとんど公爵家以上の、しかも結構見栄えのする令息から成っていた。ソフィーにとっては逆ハーレムといったところだ。


「えー、新入生に一言お願いいたしますわ。まずは会長の皇子殿下から」


「これはこれは、ジュスティーヌ姫、お久しぶりです。私のこと覚えているかい?」


 実はきれいさっぱり忘れてましたわ、今の今まで。あなたのお兄様が強烈な変態すぎて。


「はい、夜会で一度お会いしていますわよね?」


「ああ、そうだね。えっと、毎年恒例の歓迎の言葉だよね? 『新入生の皆さん、ご入学おめでとう。学園は優秀な皆さんを歓迎します。大いに学び、学園生活を謳歌し、そして卒業した暁には世の役に立つ人物となってください』こんなでどうだろうか?」


「素晴らしいお言葉をありがとうございます」


 って、普通。誰でも言えそうな内容過ぎない? 兄はあんなに変態なのに、あまりにもフツーー。


「次に副会長様、お願いいたしますわ」


「……………………新入などと言って甘えていられるのは入学して一日だけだ。あとは、ひたすら学べ」


「…………」


「…………」


「以上でしょうか?」

「……以上だ」


 氷の王子とは聞いていたけれども、さすがに氷過ぎない? 全然歓迎してないじゃん。いや、これ、そのまま掲載していいの!?


「もお、エルドリックってばあ!? それじゃあ、新入生のみんながこわがっちゃうってっ。えっと、あたしからは、『新入生の皆さん、皆さんがこの学園に入学したことはいわば神様が起こした奇跡です。どうか、この学園でいっぱいいっぱいお勉強してください。お友達もいっぱいいっぱい作ってください。レッツゴーエンジョイ学生ライフです。皆さんの未来がキラキラになりますように』てへっ」


 えっと、最後の「てへ」も入りますかー?  あと、古代語の文法が若干おかしいです。それと学生だけは古代語じゃないと、メモメモ。


「さすが、ソフィーは優しいね」


 生徒会の男たちは聖女候補を褒めそやす。優しいか? わたしにはちょっと頭の弱い女にしか見えないのだけど、生徒会の質……。


 合法的に生徒会の皆さまの写真を撮った後、副会長のオリビアと声を揃えて「ご協力ありがとうございました」とお礼を伝えて部屋を出る。すると、先ほどのソフィーがわざわざ追いかけて話しかけてきた。


「王女さまあ、この前はフレデリクが大変失礼いたしました。かっこいい皇子様にダンスを断られちゃってショックだったよね? あたしからもごめんって言わせて」


 なに、この女? 真剣に虐めてもいい? いじめてもいいよね? えっ、みんなこの聖女候補のこと虐めてないの? こんなに虐めてオーラを発しまくっているのに!?


「あ、いいえ。気にしていませんわ。もっと超絶かっこいいイケメン皇子様と踊れましたからっ!」


 どや、これぞ悪役令嬢の力よっ!


「あっ、そうだったね。でも、アルフォンス殿下は正妃の子じゃないから、皇帝になる順番はフレデリクよりも下なんだけどぉ」


 はっ? だから、何? んなこと聞いてないし!


「まあ、そうなんですの。わたくし自身が王女でそれなりに身分が高いから、皇位継承権などまああああったく気にしませんでしたわ。わたくし、殿方は()()()()だと思っていますので」


 あと、剣と魔法の腕ね。


「えっ……王女様、エッチっっ。もぉ、女の子がそんな『男の人の身体が欲しい』みたいな超エッチなこといっちゃだめですぅ! エッチな女の子だと思われて男の人に嫌われちゃいますぅ!!」


 身体が欲しいとは言っていない。見ていたいだけ。それに嫌われて結構なんだけど。そうか、「男は顔と身体」と言えば、エッチな女ってことで殿方に嫌われるのね。あなたからは何も学ぶことはないと思っていたけれども、これ、今後も活用させてもらうわ。


「お話は以上でしょうか? このエッチな王女ジュスティーヌにまだ何かあります?」


「あっ、もぉいいですよぉ。王女様も学園でレッツゴーエンジョイ素敵な学園ラブができるといいですね。でも、エッチなのは”めっ”ですよぉ」


 そのレッツ()()()()()()()って何!? 流行語か何かなの!?


 それにしても聖女候補おそるべし。彼女が絡んで来てくれれば、何の努力もせずに悪役令嬢になれる気がしまくっているジュスティーヌだった。


 そして、ジュスティーヌとソフィーの特ダネ級の会話を丸々聞いて顎が外れそうになっているジャーナリズムクラブ副会頭のオリビアだった。

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