カラオケ
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
ボウリングが終わり、次はカラオケだ。
受付を済ませて、小さめのカラオケルームに通された。
照明はほんのり暗く、テーブルの上にはタッチパネル。
ボウリングの余韻が残っているのか、咲の頬はまだ赤みを帯びている。
「じゃあ……罰ゲーム、お願いします」
勝者らしい満面の笑みを浮かべながら、咲が注文用タブレットを俺の方へ押しやった。
「はいはい。……何がいい?」
「ポテト! あと唐揚げとー……チョコパフェ! ハニトーも!」
「おいおい、頼みすぎだろ。ほんとに食べきれるか?」
次々と口にする咲の注文に、思わず眉をひそめる。
どう考えても、食べきれる量じゃない。
ここは突っ込まないわけにはいかなかった。
「大丈夫大丈夫! もし残っても、悠馬が食べてくれるでしょ?」
「……はぁ、しょうがねぇな。罰ゲームだし。はい、注文完了」
「やった!」
勝ち誇ったように両手を握る咲。
その姿は、さっきストライクを決めた瞬間と同じくらい、無邪気で眩しかった。
ひと息ついたところで、咲が曲を選ぶタブレットを手に取る。
「じゃ、最初は私ね」
そう言って慣れた手つきで検索を始めると、すぐに画面に有名なアイドルグループの曲名が表示された。
高校の頃からカラオケに来れば必ず歌っていた、咲の十八番だ。
「さてとっと!」
イントロが流れた瞬間、咲は立ち上がり、軽く肩を揺らす。
「お、待ってました!」
「いぇーい!」
マイクを片手に、笑顔を浮かべる咲。
画面の中の本人映像と同じ動きで踊り、サビでは両手を大きく広げてステップを踏む。
合間にちらりとこちらを見て、笑う咲。
合間合間のファンサービスや、曲に合わせて楽しそうに踊る姿は、まるで本物のアイドルみたいだった。
いや――俺の目には、アイドルよりも魅力的に映っていた。
「よしっ、完璧!」
画面に表示された『94点』を眺めながら、肩で息を整える咲。
その様子に、俺は思わず手を叩いていた。
「……すげぇ、見惚れた」
「え、ほんとに?」
驚いたように目を丸くし、けれどすぐに照れくさそうな笑みを浮かべる咲。
「ああ。やっぱうめぇな」
高校のときも同じように歌って踊っていたはずなのに、今はそれ以上に魅力的に見える。
久しぶりに見たからか。
それとも――咲自身が昔よりずっと輝いているからか。
「ほら、次は悠馬の番!」
タブレットを渡され、俺も曲を探す。
高い声の曲は歌えないから、履歴から知っている歌を選んだ。
「えーっと……じゃあ、これで」
画面に懐かしい歌手の曲名が映ると、咲が小さく拍手した。
「あ、これ懐かしいね!中学生頃に流行ったっけ?」
曲が始まり、俺はマイクを口に近づける。
が、出だしから音程が外れていた。
「あれ……?」
自分でも苦笑しながら続けるが、どうにも外れっぱなし。
「ぷっ……!」
咲がこらえきれず吹き出す。
「やばい、音程ぐちゃぐちゃだよ!」
「分かってる!」
必死に声を張っても結果は同じ。
咲はお腹を抱えて笑いながら、それでも手拍子をしてくれる。
「がんばれー! ラスサビ!」
どうにか最後まで歌い終えると、咲は涙が出るほど笑っていた。
「ふふっ……最高、面白すぎ」
「いや、俺は真剣なんだけど」
むくれて言うと、咲は目尻を拭いながらにこりと笑う。
「やっぱり音痴なのは変わってないね」
からかわれているはずなのに、胸の奥がじんわりと温かい。
どうしてなんだろう――答えを探しているうちに、咲が入れたらしい曲の前奏が流れ始めた。
「ねえ、これ一緒に歌お? ほら、デュエット曲」
そう言って、楽しそうにマイクを差し出してくる咲。
「……マジで? 俺、この曲サビしか知らねぇぞ」
「知ってんじゃん! なら、いけるね!」
無茶ぶりにもほどがある。
けど、その無邪気な笑顔を前にすると、断れない。
咲は楽しそうに歌い出し、俺も慌てて声を重ねるが――当然のように合わない。
声の高さもリズムもバラバラで、サビになってもずれっぱなし。
「ちょ、悠馬、ずれてるって!」
「いや、これむずいって!」
どうにか歌い切ると、画面に点数が表示された。
『47点』
「……え」
「ははっ、ひどっ!」
咲がマイクを抱えてテーブルに突っ伏す。
俺も思わず吹き出した。
これまでで一番ひどい点数。
なのに、二人して涙が出るほど笑い合った。
笑いすぎて息ができなくなるくらい、ただただ楽しかった。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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