ボウリング
読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。
ボウリング。
十本のピンを専用のボールを使って倒す。
一回で全部を倒せばストライク、二回目で残りを全部倒せばスペアとなる。
倒したピンの数に応じて得点が入り、ストライクやスペアを続ければさらにボーナスが加わる。
より多くの得点を積み重ね、最終的な合計点を競い合う。
インドアのスポーツの中でもかなり面白い競技だ。
なんで、ボウリングの説明かって?
なぜなら、それは――
「見ててよ!一発でストライク出すから!」
レーンの前に立った咲は、ボールを構えてからこちらを振り返る。
「お、言ったな。じゃあ期待してる」
この前交わした咲と遊ぶ約束。
それが今日、ついに実現した。
お互いに「何がしたいか」を話し合った結果、ボウリングもカラオケも楽しめるこの施設にやって来た、というわけだ。
「そりゃ!」
勢いよく投げられたボールは、ピンに倒すことなく、あっさり横の溝のガーターレーンに吸い込まれていった。
「あああーー!ちょっと!絶対手が滑ったんだって!」
両手をバタバタさせる咲に、思わず吹き出してしまう。
「いやいや、今のは見事なガーターだったぞ」
「笑わない!次は絶対いける!スペアいける!」
むきになって二投目を投げるも、またしてもガーター。
咲は頭を抱え込み、床にしゃがみ込んでしまった。
「もうやだぁ!これ絶対ボールが悪い!」
「はいはい、ボールのせいね」
そう言いつつ俺の番。
ピンの頂点の前に立ち、そのまま真っ直ぐ転がすようにして投げると、ピンが一気に倒れ、ストライク。
「うそでしょ!?なんでそんな簡単に……絶対こっそり練習してたでしょ!」
「いやしてないって。ただ才能があっただけ」
「ムカつくー!」
悔しそうに唇を尖らせる咲。
でも次の瞬間には笑顔になって、手を差し出してきた。
「……ストライクおめでとう。はい、タッチ!」
「おう」
パンッと音を立てて手を合わせる。
それだけなのに、なぜか胸が少し熱くなった。
「すごいね悠馬。またストライク!」
「……ああ、サンキュー」
「なあ、咲」
「ん?」
「勝負にしようぜ」
そう言うと、咲がむっとした顔で眉を寄せる。
「ズルくない?こんなに実力差あるのに」
「だって何か張り合いがなくてさ。大丈夫、ちゃんとハンデはつけるから」
「……ハンデって?」
「一回でもストライクを取れば咲の勝ち。あと、俺が一回でもストライクかスペアを逃せば咲の勝ちでいいよ」
「なるほど……。でも、足りないなぁ」
「足りないって?」
「私が勝ったら罰ゲームありね!」
「罰ゲーム?」
「そう。たとえば――ドリンク奢りとか」
「オッケー!」
にやりと笑ってボールを構える咲。
その姿はさっきまでガーターを連発してた人間とは思えないほど、やる気に満ちていた。
「よーし、見てなよ!」
投げられたボールはレーンの真ん中をまっすぐ進み、ピンを七本倒す。
思わず俺も「おおっ」と声を上げてしまった。
「どう?成長してるでしょ!」
「いや、マジで上手くなってきてんじゃん」
「へへーん、このまま逆転しちゃうから!」
咲は嬉しそうにガッツポーズを決める。
その姿に、俺も負けてられないと熱が入った。
フレームを重ねるごとに、咲の投球は少しずつ安定してきた。
最初はガーターばかりだったのに、今ではピンを半分以上倒せるようになっている。
その成長が見えるたびに、隣で見ている俺の方まで楽しくなってきた。
気付けば俺も本気になっていた。
ストライク、スペア、またストライク――。
一投ごとにピンが派手な音を立てて倒れていく。
集中すればするほど身体が勝手に動き、気づけば一度も外さずに九フレームを終えていた。
「すご……全部ストライクかスペアだよ……」
隣で咲がぽかんと口を開ける。
俺はにやりと笑い、少し意地悪く言った。
「俺はもう全部取ったからな。つまり――」
「……私が最後にストライクを出さないと負け、ってこと?」
俺はストライクかスペアを逃さなかった。
そして、咲は今まで一度もストライクを取ったことない。
つまり、咲の唯一の勝ち筋は、ストライクを出すことだ。
「そいうこと」
わざと煽るように肩をすくめると、咲はむっと唇を結んだ。
「ムカつくなぁ……その余裕ぶった顔」
「へへーん」
「ふん、いいよ。絶対見返してやるんだから!」
咲は深呼吸を一つして、ボールを構えた。
その背中はさっきまでのドタバタした彼女とは違って、妙に真剣で、凛々しくさえ見える。
転がされたボールは、レーンの真ん中を一直線に走っていく。
俺は思わず息を呑んだ。
――ドォンッ!
ピンが一気に倒れ、ストライク。
派手な音が響き渡り、電子掲示板に「STRIKE」の文字が光った。
「やったーーっ!」
咲が両手を高く突き上げる。
「マジかよ……最後の最後で決めやがった」
思わず頭を抱える俺に、咲は勝ち誇ったようにウインクしてみせた。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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