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告白

読みにくかったり、表現が分かりにくいところがあったりすると思いますが、最後まで読んでいただけると幸いです。



 成人式の会場から少し離れた、住宅街にポツンとある小さな公園。

 遊具は小さな滑り台と鉄棒、砂場と幼稚園生くらいの子供が二、三人でぎりぎり遊べるようなな小ささ。


 俺は一つしかないベンチに腰掛けていた。

 成人式の会場近くなのに、周囲は驚くほど静かで、時折通り過ぎる車の音が遠くに響く。


「お姉ちゃん、ちょっと遅れるみたい」


 少し離れたところで咲がスマホを耳に当てながら話していた。

 電話を終えると、彼女は小さく息を吐き、振袖の裾を整えながら俺の隣に腰を下ろす。

 ベンチの幅は思ったより狭く、肩が少しかすめた。

 柔らかい香りがふっと漂い、心臓がわずかに跳ねる。


「それにしても、今日は楽しかったね。みんなと久しぶりに話せたよ」

「だな。みんなかなり変わってたりしてたな」

「そうそう。美波ちゃん!めっちゃ可愛くなってたよね!?」

「ああ、海野さんか」


 海野美波(うみの みなみ)

 小中と同じクラスで、俺たちの代では『いちばん可愛い』とよく言われていた。

 中学のころは、先輩や後輩から告白されたって話を、女子たちがよくしていたのを覚えている。

 そういう話題の中心にいつもいた人だ。


「見てなかったの?」

「あんまり顔、覚えてない」

「え!?あんな可愛い子を覚えてないの!?」

「じゃ、写真見せたげる」


 咲は小さな巾着からスマホを取り出して、俺の方へ身体を少し傾けた。

 袖口からのぞく白い手が、ほんの少しだけ俺の腕に触れる。

 その瞬間、心臓の鼓動がひとつ跳ねた。


「この真ん中の子!かわいいでしょ?」


 画面には、振袖姿の女子五人が並んだ集合写真。

 真ん中に海野さんが立ち、その右隣に咲がいる。

 確かに海野さんは綺麗になっていた。

 それこそ、テレビで見る芸能人やアイドルみたいだ。

 けれど、俺の視線は右隣から動かない。


「……確かに」

「でしょ!」


 満足したように、携帯を巾着にしまう。

 そして、思い出したように続けた。


「そうそう!隼太(はやた)くん!中学の時から顔はイケメンだったのに、身長も伸びてさらに良くなってたね」

「確かに。中学ん時は背の順で一番前だったのに、今じゃ百八十はあったな」


 本田隼太(ほんだ はやた)

 中学のバスケ部で一緒だった奴だ。

 当時から顔立ちは整っていて、女子の中では『惜しい』と言われていた。

 「顔は良いんだけど身長が」とか、「せめて平均あればね」とか。

 そんな声を何度か耳にした覚えがある。


 けど、中学を卒業してからぐんと伸びたらしく、今では見上げるほどの高身長になっていた。

 俺が百七十五センチで、隣に並んだ時に頭一つ分違ったから、おそらく百八十はあるだろう。

 正直、あの頃の『惜しい』って言葉を、今の隼太に投げられる女子はいないと思う。


「女子の間で噂になってたし、けっこーアタックしてる女子いたよね!」

「あー、確かに。隼太はすげー変わったよな」

「あ、でもでも、拓也くんと和斗くんはあんまり変わってなかったね」

「だな。あいつらはずっと変わんねーな」


 咲がくすっと笑う。

 その横顔が懐かしくて、俺もつられて笑ってしまう。


「フフッ、確かに。でも、悠馬もあんまり変わってないと思うけどね」

「そりゃ、高校まで一緒だったし、卒業してからも二年しか経ってないしな」

「あ、ホントだ」

「忘れてたのかよ」


 咲は「えへへ」と笑いながら頬をかいた。

 なんてことのない、いつもの仕草。

 だけど、なんだか――その笑顔を見ていたら、言葉が勝手にこぼれそうになった。

 けど、今言葉を飲み込んだら、このまま黙っていたら、きっとまた後悔する。


「なあ、咲」

「ん?」


 視線がぶつかる。

 目の奥に映る、あの頃のままの優しさ。


「好きだ」


 その一言が、静かな空気を震わせた。

 咲の瞳がわずかに揺れる。


「え――」


 その瞬間、時間が止まったように感じた。


「急にごめん。でも、言う」


 心臓の鼓動が、人生で一番と言っていい程、早くなっている。

 怖いのに、もう止まらなかった。


「ずっと、中学、高校と好きだった。咲と一緒にいると、話すと楽しくて……だから、この二年ずっと辛かった」

「あの時、高校最後の帰り道、告白していればって、何度も後悔した」

「でも今日、咲と会える機会はもうほとんどない。今日が終われば、明日辺りに咲は東京に帰るだろ?」


 一呼吸置いて、息を吸う。

 もう、迷わない。


「だから今日が、今しかない思った」


 言葉が震える。

 けれど、それでも真っ直ぐに。


「咲、好きです。遠距離になってしまうけど、俺と付き合ってください」


 声が空気を震わせた。

 俺たち以外誰もいない公園。

 二人しかいない空間、その響きだけが確かに残った。


「……」


 咲は俯いたまま、微動だにしなかった。

 沈黙が、空気が冷たい。


「……」

「……」


 心臓の鼓動だけが、やけに大きく聞こえる。

 咲の肩が、わずかに揺れた気がした。


「……」

「……咲?」


 自分でも驚くほど、声が小さかった。


「……え、あ」

「ごめん」

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

コメント・誤字脱字報告・改善点の指摘など、頂けると励みになります。

続きのお話はできるだけ、一週間以内に上げたいと思います。


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