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嘘と約束

一週間以内に上げると申しておりましたが、過ぎてしまい申し訳ございません。

見苦しいかもしれませんが言い訳をさせてください。

先週末に好きなアーティストのライブがありまして、そのライブに行っていました。

凄まじいパフォーマンスに演出で、あまりにも凄すぎて、私がステージに立ったわけでもないのに燃え尽き症候群みたく、しばらくやる気が起きませんでした。

ですが、少しは回復したのでまずはこのお話を終わらせるまでは頑張りたいと思います。

あと、もう少しだけお付き合いください。

よろしくお願いいたします。


 会場の出口は、式を終えた同級生たちでごった返していた。

 あちこちに輪ができ、笑い声が渦のように広がっている。


 その中でもひときわ大きな輪があった。

 十人以上の群れ——その中心に、咲がいた。

 昔から友達が多かったせいもあるだろうが、以前よりさらに綺麗になっていて、人が次々と寄っていく。

 特に男子がほとんどだ。


「咲ちゃん、東京行ったんだって?」

「マジ!?俺、埼玉住みなんだ。ついでだしインスタ交換しよーよ!」

「え、俺も神奈川住んでる!てか、大学どこ行ってるの?」


 口々に寄せられる声に、咲はにこやかに応じている。

 冗談めかした調子だが、声や視線には確かな本気が混ざっていた。

 獲物に群がるかのような熱気――その光景を、俺は嫌な気持ちで見ていた。


 それでも、どこかいつもと違う笑顔だと気づく。

 普段なら相手の目を見て話す咲が、時々ふっと空を見上げたり下を見たりして、視線が定まらない。

 

 困っている?

 助けるべきだろうか——でも、もし俺の勘違いなら、俺の行いは咲にとって邪魔なもので、もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。


 だが、それでも嫌だった。

 好きな子が他の男に囲まれているのを見るのは耐えられない。

 ここで動かなければ、またあの日と同じになってしまう。


 気付けば足が勝手に動き、群れの肩をすり抜けて前へ出ていた。

 咲が小さく目を丸くする。


「よ、咲」


 いつもの調子で呼びかける。

 友達や家族に話しかけるときと同じ、無害な声とテンションで。


「ちょっと来てくれる? 話したいやつが呼んでるからさ」


 一瞬、きょとんとした顔をしたが、次の瞬間にはふっと表情が和らいだ。


「……うん」


 背後で「マジかよ」「じゃ、またあとで」と誰かが言っているが、咲は軽く手を振るだけで俺の横に歩み寄ってきた。

 いつもの笑顔に戻っている。

 安堵してくれたのだとを感じて、胸がじんわり熱くなる。

 並んで歩き出すと、背後のざわめきが遠ざかり、心臓の音だけがやけに大きく聞こえた。




「で、話したい人って誰?私の知ってる人?」


咲が首を傾げながら問いかけてくる。


「あー……それ、嘘」

「嘘?」

「咲、困ってるように見えたから」


 一瞬だけ、咲の歩みがゆるむ。


「……よく気づいたね」


 フッと笑顔を浮かべて、ポツリと呟く咲。

 短い沈黙が流れる。

 互いに視線を逸らしながら、並んで歩く足音だけが響いた。


「そういえば悠馬、夜の同窓会行くの?」


 何気ない口調に聞こえるけど、ちらりと横顔をうかがうと、ほんの少しだけ期待を込めたような目をしていた。


「咲はどうするんだ?」


 中学のグループチャットでお誘い来てた同窓会。

 当日参加可能だから行こうと思ったら行ける。

 拓也と和斗、中学の友達の半分くらいは来ないって言ってたから、ずっと決めかねていたんだよな。

 正直、行かない方に気持ちが傾いていたけど、咲が行くなら行こう。


「私は行くつもり。みんなでお酒飲むの、ちょっと楽しみだし」

「なら……俺も行く。咲がいるなら退屈しなさそうだ」

「ふふっ、やった。一緒に飲もーね」


 軽く笑って乾杯のジェスチャーをする咲に、思わず俺も口元がゆるむ。


「ああ」




 また、少し歩いたところで、咲がふと立ち止まった。

 気になって咲を見るも、さっきまでの笑顔は消え、表情は少し強張っている。


「……今日さ、一緒に帰らない?」

「え?」


 思わぬ提案に変な声が出た。

 そんな俺をからかうことなく、続けて言葉を紡ぐ。


「お姉ちゃんが車で迎えに来てくれるから。悠馬も乗ってく?」


 胸に軽く手を当て、小首をかしげて誘う咲。

 いつもは「一緒に帰ろうよ!」とか勢い任せなのに、今日に限っては控えめな誘い方が、逆に心を揺らした。


「……いいのか?」

「うん。今日あんまり話せてないし……帰り道くらいは、一緒に話したいから」

「じゃあ、お願い」


 「一緒に話したいから」この言葉を聞いた瞬間、考える間もなく口が勝手に動いていた。

 女の子に、好きな人に、ここまで言われたら断ることなんてできない。


「うん!三時半に来てくれるから、それまでいてね!!帰っちゃダメだよ!?」

「わかった」

「じゃ、約束だよ」


 子供が親に「テストで百点取ったらゲーム買ってね」みたいに、ご褒美を約束するような笑顔を浮かべる。


「ああ!」


 その純粋な笑顔に、思わず俺も笑顔で返事していた。

 


 ……今じゃないな。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

次回も読んでいただけると幸いです。

コメント・誤字脱字報告・改善点の指摘など、頂けると励みになります。

続きのお話はできるだけ、一週間以内に上げたいと思います。


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