吸血鬼の押し掛け販売
「は?」
思わず声が漏れた。
部屋に勝手に入っていた吸血鬼が自ら魔法に触れて、勝手に怪我を負って、聖女の魔法の対策を見せてくれた。そして、代金をよこせだと?!
許せん。コイツ、代金に私の、聖女の血も要求したのも許せん。
押し掛け販売じゃないか!いや、それより酷い。
「ふざけないで!私が血を払う通りはない!今回は見逃してあげる。それが代金。どう?」
吸血鬼の少年は首を竦める。
「おいおい、それは値切りすぎだと思うね。僕は聖女様が吸血鬼に寝首を掛かれないように教えたあげたじゃないか?それなのに見逃すが代金なんて酷いな」
いい度胸をしている。この吸血鬼ここが教会でそして目の前に居るのが聖女と忘れては居ないか?
相手が交渉できる立場では無い事を教えては成るまい。
「ゴホンッ!吸血鬼君?何か忘れてはないか?」
「ん?」
「ここは教会で私は聖女。」
「ん?」
反応が悪い。まさかこの吸血鬼アホなのか?いや、アホに決まっている。教会に来て聖女の前に現現れる吸血鬼なんて。
私は優しく教えた。
「ここは教会。つまりは聖騎士がいる。そして私は聖女だよ?ここまで言えば分かるだろ?」
「……あぁ!」
少年吸血鬼は理解したのか声を上げた。その後にくすくすと笑い始めた。
なんだ?気でも狂ったか?
「お、面白い事言うね!聖女様は。」
「ん?どこが?」
首を傾げて聞き返す。
「え?冗談だよね?わかってない?」
質問をしているのに少年吸血鬼はキョトンとした表情で私を見る。まるで冗談だろ?と、人を小馬鹿にする様な顔だ。
苛つく。アホな吸血鬼なクセに人を煽るとは、許せん。
「もう一度言ってあげる。ここは教会。私は聖女。教会には魔の者を狩るのが得意な専門家である聖騎士が居るの。そして、今あなたの目の前に居る私は聖女。魔の者に特攻を持つ魔力性質を持っている。此処まで言えばわかる?」
「うんうん。わかるよ?でもねそれがどうしたの?」
はぁ?!コイツマジでアホだ。
此処まで言ってこの吸血鬼は理解出来てないようだ。まぁ、いいか。これ以上は説明は無駄の様だし。
「なら、交渉は決裂ね。ここで死になさい!」
私は油断している吸血鬼へと手の平を向けて魔法を発動した。